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【発酵食品】ってどんな食品?おすすめの摂り方を専門家に聞いてみた

【発酵食品】ってどんな食品?おすすめの摂り方を専門家に聞いてみた

投稿者:オリーブオイルをひとまわし編集部

監修者:東京農業大学 醸造科学科 教授 前橋健二(まえはしけんじ)

鉛筆アイコン 2021年9月 1日

さまざまな健康効果からたびたび脚光を浴びる発酵食品。日々の食生活に取り入れているものの、何がいいのか、どのように摂ればいいのか、知らない人も多いのではないだろうか。今回は東京農業大学醸造科学科の教授、前橋健二先生に発酵食品との付き合い方について、詳しくお話をお伺いした。

  

1. 「発酵」と「腐敗」って何が違うの?


ー「発酵」と呼ばれる現象と、「腐敗」と呼ばれる現象は何が違うのでしょう?メカニズムは同じように思えるのですが

発酵というのは、食品に微生物が繁殖した現象をいいますが、これはまた腐敗とも同じ現象といえます。
同じ現象でも、良い香りがしたり味や栄養が高まっているときに発酵と呼び、そうでなければ腐敗となります。ですので、発酵するとおいしくなる、とか体によくなる、というより、おいしいくて体によいから発酵と呼ばれるわけです。

「発酵」と「腐敗」の違いは人による?

おいしさというのはあくまでも人を中心とした価値観であるので、実は発酵と腐敗の区別を明確にすることはできません。毒性がでているものはだめですが、そうでなければおいしいか、おいしくないかは人それぞれなので、ある人にとっては腐敗のように思えても、好きな人にとっては発酵である、ということが多々あります。
その代表的な例が納豆。煮大豆があんなにねばねばして独特の臭気を発しても、納豆にはすばらしい健康効果あり、あの匂いも、好きな人にはたまりません。
ほかには大島のくさやや滋賀のなれずしも、慣れていないと匂いは厳しいものです。海外モノでは、ウォッシュチーズやシュールストレミングの匂いは強烈です。

発酵食品の誕生と歴史

日本には発酵食品が多くあるといわれることがありますが、発酵食品があるのは日本だけではありません。世界中、どの地域にも多様な発酵食品があります。人類の文明とともに発酵食品は発達してきました。
発酵食品は、食糧を保存していたときに偶然発見される等、食糧の保存技術の中から経験的に生まれたものが多くあります。

お酒や酢も発酵食品!?

酒や酢は、樹液や蜜がたまったところで酵母が発酵してエタノールができ、あるいはさらに酢酸菌が酸にかえたものを人類が偶然口にして発見したのでしょう。酒や酢は人類史で最も古い発酵食品といわれます。また、食糧を保存のために塩漬けにして長期間おいているうちに、うま味がでて、魚醤油や味噌醤油のようなものが生まれました。

ーお酒や酢も発酵食品なのですね、普段の生活ではあまり意識していませんでした。ほかに発酵食品はどのようなものが挙げられますか?

発酵食品は、製造に微生物が関わっている食品をいいます。日本の発酵食品のほとんどは麹菌というカビの一種が使われています。例えば、酒、焼酎、米酢、みりん、塩麹、甘酒、酒粕、味噌、醤油はいずれも麹菌はなくてはならない微生物です。日本の発酵食品では他に糸引き納豆、寺納豆、漬物、鰹節本枯れ節などがあります。海外ではヨーグルト、チーズ、ワイン、ビール、ウイスキー、スピリッツ、フィッシュソース(魚醤油)などが代表的です。世界中のマイナーな発酵食品も挙げればきりがありません。

2. 「発酵食品」の効果とは?


ーなぜ、発酵すると味が変わるのでしょうか?元の素材とは全く違う味になりますよね?

発酵という現象は食品で微生物が活動することを指しますが、微生物が増殖するときには代謝物をつくります。
  • 糖分を含む食品が発酵すると酸が作られます。酸ができるので酸っぱくなります。
  • デンプン食品で麹カビが増殖すると、麹カビはデンプンを分解する酵素をつくるので、糖ができて甘味が増します。
  • タンパク質食品で麹カビが増えると、タンパク質を分解する酵素がつくられるのでうま味を持つアミノ酸やペプチドが増えてうま味やコクが増します。また、タンパク質が分解すると苦い味を持つペプチドができることもあります。
このように、発酵、つまり食品で微生物が活動すると、微生物の代謝産物や酵素のために甘味、うま味、酸味、苦味といった豊かな味が作られます。もともとの食材が味に乏しくても、発酵させることで味を豊にすることができるのです。

ー同じ発酵でも、元の食材によって味わいが大きく変わるのですね。ほかに発酵が及ぼす効果はありますか?

発酵が保存性に及ぼす効果

微生物は、おかれた環境で自分がより優位になるために、他の菌を殺す物質をつくります。これがいわゆる抗生物質です。食品である微生物が優勢になると、ほかの菌は増殖することができなくなります。そういう理由で、微生物が増殖した食品である発酵食品は、それ以上他の菌が増える余地がないので腐敗しにくいといえます。
また、味噌や醤油には高濃度塩分が含まれ、酒には高濃度アルコールが含まれます。これらの発酵食品は、塩分やアルコールに耐える特殊な菌のおかげで発酵できていますが、塩分やアルコール分は腐敗菌の増殖を防いでくれるので、保存性がいいと言えます。

発酵が栄養に及ぼす効果

発酵することで必ずしも栄養成分が増えるわけではありませんが、麹カビがビタミンBをつくったりする例はあります。一般的には、発酵の効果は、栄養というより機能性成分が増えることにあります。麹カビの酵素によって原料成分が分解されると、抗酸化性物質が増えたり、血圧低下ペプチドなどの機能性ペプチドが増えることがわかっています。また、酢酸発酵などでつくられる酢酸は、血圧低下や内臓脂肪減少効果など多彩な機能性を持つことがわかっています。

3. 「発酵食品」との上手な付き合い方


ー発酵食品を、日々の食生活に効果的に取り入れるポイントはありますか?

発酵食品には、様々な健康効果を持つ成分が含まれています。発酵食品の原料や関わる微生物の種類によって健康効果は多少独特なものもありますが、多くは共通するものです。抗酸化性物質とか食物繊維・オリゴ糖とか血圧低下ペプチドとか、免疫賦活物質とかです

「たくさん食べればいい」わけではない

種類が豊富であって、含まれている量が多いわけではありません。だからといってたくさん食べたら効果が上がるかというと、そういうわけでもありません。発酵食品に含まれる健康成分はひとつひとつの物質は少なくても類似の効果を持つ様々な物質が含まれているので、通常の量食べれば十分です。

ー多く取り入れればいいというわけではないんですね。毎日発酵食品を食べるとなると、飽きそうなものですが、おすすめの食べ方はありますか?

おすすめは発酵食品を調味料として利用することです。発酵によって、素材からくる自然な味わいが高まっているのが発酵食品の特徴なので、発酵食品を使って食材の味付けをしたり、トッピングしたりすると、一般の食品ばかりのメニューであってもすべてが発酵食品に変わります。

和食は発酵食品の宝庫

日本には醤油、味噌、みりん、酢など、伝統的に発酵調味料がよく発達しています。だから日本の食事はおいしくて健康的と世界から注目されています。でも海外でもチーズ、ヨーグルト、ビネガーなど発酵食品を調味料に使っている例はあるので、実際には、和風洋風問わず、発酵食品を毎日楽しむことができますね。

ーなるほど。少量ずつ、日常的に発酵食品を取り入れることが、健康効果を高める秘訣なんですね。

発酵食品それぞれに含まれる健康成分は、極端に多いことはありません。そのかわり、様々な種類の発酵食品を組み合わせることで、飽きることなくそれぞれに含まれている同じ効果を持つ物質を取り入れることができます。
また、食べ置きすることはできないので、日々継続的に摂取することも大切です。発酵食品は薬ではなく、あくまでも食品であることを忘れず、おいしく楽しく食べることを心がけましょう。

結論

納豆や豆腐に気が向きがちだが、食生活を支える調味料にも発酵食品が多く存在することが分かった。健康効果があると聞くと、ついたくさん食べようとしてしまいがちだが、日常にいかに発酵食品を取り入れるかがポイントだという。日々の料理に積極的に調味料を取り入れ、無理なく発酵食品を頂くことが、ベストな「発酵食品との付き合い方」なのかもしれない。
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  • 公開日:

    2021年6月26日

  • 更新日:

    2021年9月 1日

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