1. くるみってどんな食品?
くるみとはクルミ科クルミ属の植物の総称であり、その種はナッツとして食べられている。クルミには複数の品種があるが、日本で主に食用とされているのは「シナノグルミ」と呼ばれるもの。日本に古くから自生しているオニグルミやヒメグルミなどに比べると、大粒で種を取り出しやすいといわれている。また「シナノグルミ」という名前からも分かる通り、主に長野県で栽培されている。
2. くるみの基本的な栄養価
「日本食品標準成分表」には、くるみ(いり)の栄養価が収録されている。これによれば100gあたりの基本的な栄養価は以下のようになっている。
くるみ(いり)100gあたりの栄養価
- エネルギー:713kcal
- たんぱく質:14.6g
- 脂質:68.8g
- 炭水化物:11.7g
- 脂肪酸
・飽和脂肪酸:6.87g
・一価不飽和脂肪酸:10.26g
・多価不飽和脂肪酸:50.28g - ビタミン
・ビタミンA:0μg
・ビタミンD:0μg
・ビタミンE:1.2mg
・ビタミンK:7μg
・ビタミンB1:0.26mg
・ビタミンB2:0.15mg
・ナイアシン:1.0mg
・ビタミンB6:0.49mg
・ビタミンB12:0μg
・葉酸:91μg
・パントテン酸:0.67mg
・ビタミンC:0mg - ミネラル
・ナトリウム:4mg
・カリウム:540mg
・カルシウム:85mg
・マグネシウム:150mg
・リン:280mg
・鉄:2.6mg
・亜鉛:2.6mg
・銅:1.21mg
・マンガン:3.44mg - 食物繊維:7.5g
(・水溶性食物繊維:0.6g)
(・不溶性食物繊維:6.9g)
3. くるみに含まれる特徴的な栄養素
前述の一覧のとおり、くるみは三大栄養素、ビタミン類(ビタミンEとビタミンB群)、ミネラル類、食物繊維をバランスよく含んでいる。また、一覧にはないがポリフェノール量も多いという(※3)。ここでは、くるみの特に注目すべき栄養素をピックアップして紹介する。
その1.ビタミン類
くるみはビタミンEとビタミンB群を豊富に含んでいる。ビタミン類の働きはそれぞれ異なり、例えば、ビタミンEのであれば生体膜を構成する不飽和脂肪酸などを酸化障害から守る、ビタミンB群の一種であるビタミンB1であればエネルギーの産生をサポートするなどの働きがある(※4)。なお、ビタミンA・C ・Dの含有量は少ないため、野菜類・果物類・キノコ類などを合わせるとよい。
その2.ミネラル類
くるみは、カリウム・マグネシウム・リン・鉄・亜鉛・銅などのミネラル類をバランスよく含んでいる。ミネラル類の働きもそれぞれ異なるが、いずれも身体の機能を正常に保つために欠かすことができない栄養素である(※4)。くるみではそんな重要なミネラル類を補うことが可能だ。なお、煎っただけのくるみは「ナトリウム」の含有量が少ないが、味付けされているものは注意が必要だ。
その3.たんぱく質
くるみは、意外にもたんぱく質を多く含んでいる。たんぱく質は筋肉や内臓の材料になるほか、酵素やホルモンとして体内の代謝を調節する働きなども担っている(※4)。また、たんぱく質を構成しているアミノ酸を見ると、イソロイシンやセロトニンなどが多い。しかし、必須アミノ酸であるリシン(リジン)が不足しているため、リジンが多い動物性食品や大豆製品などを食べるようにしよう。
その4.食物繊維
食物繊維には「水溶性(水に溶けるもの)」と「不溶性(水に溶けないもの)」があり、くるみは水に溶けない「不溶性食物繊維」を多く含んでいる。不溶性食物繊維の特徴は、胃や腸で水分を吸収することで膨張するというもの。それにより腸の蠕動運動(ぜんどううんどう)を促すということがある(※5)。このような働きがあるため、食物繊維は「第6の栄養素」といわれることもある。
その5.ポリフェノール
カリフォルニア州のくるみ生産者を代表する機関である「カリフォルニア くるみ協会」によれば、くるみは抗酸化作用を持つ「ポリフェノール」を多く含んでいるそうだ。その含有量はくるみひとつかみで、リンゴジュース1杯分、赤ワイン1杯分を上回るという。
4. くるみに含まれる栄養成分「不飽和脂肪酸」
くるみは脂質を多く含むが、その多くは不飽和脂肪酸と呼ばれるものである。また、不飽和脂肪酸には「一価不飽和脂肪酸」と「多価不飽和脂肪酸」があるが、このうちくるみはα−リノレン酸やリノール酸といった多価不飽和脂肪酸を含んでいる。ここではそんな不飽和脂肪酸について確認しよう。
α−リノレン酸(オメガ3脂肪酸)
くるみは、オメガ3脂肪酸の一種であり、体内で合成することができない必須脂肪酸の「α−リノレン酸」を多く含んでいる。その含有量は100gあたり9000mgとなっている(※2)。α−リノレン酸の役割には、体内で代謝されてEPAやDHAに変化するというものがある(※6)。また、EPAやDHAなどは体内の機能を正常に保ったり、健康状態を守ったりするのに役立つ。
リノール酸(オメガ6脂肪酸)
くるみは、オメガ6脂肪酸の一種であり、同じく必須脂肪酸である「リノール酸」も含んでいる。その含有量は100gあたり41000mgであり、くるみの脂肪酸では最も高い数値となっている(※2)。リノール酸は「血中のコレステロール値を上げにくくする働きがある」といわれており、注目を集めている栄養素である(※6)。
5. くるみの1日の目安量はどれくらい?
くるみはさまざまな栄養素・成分を含んでおり日々の栄養バランスを整えるのに役立つが、その一方で高カロリー・高脂質なので食べ過ぎると肥満などに繋がる可能性もある。そこで1日に食べる量は「ひとつかみ(約30g)」までにしておこう。これは前述の「カリフォルニア くるみ協会」が推奨している量で(※7)、くるみひとつかみでも脂肪酸などの栄養素を補えるようになっている。
6. くるみの栄養面に関するよくある質問
ここまでくるみの栄養価・栄養素を説明してきた。しかし、まだくるみの栄養面で気になることもあるだろう。そこで最後に、くるみの栄養面に関するよくある質問・疑問に回答する。
Q1.くるみの糖質量はどれくらい?
くるみは脂質量が多く高カロリーではあるが、実は糖質量はかなり少ない。実際「日本食品標準成分表」を見ると(※2)、100gあたりの炭水化物量は11.7gで、食物繊維量は7.5gであることから、糖質量は4.2gであると分かる。前述しているとおり、食べ過ぎると肥満などに繋がる恐れがあるため注意が必要だが、糖質制限を行っている人でも食べやすい食品の一つといえる。
Q2.くるみはいつ頃食べればいい?
くるみは食物繊維を多く含むため、消化に時間がかかるといわれている。そのため、寝る前には避けたほうがいい。一方「消化に時間がかかる=腹持ちがいい」ということなので、小腹がすいたときにおやつとして食べるのがおすすめとされている。
Q3.くるみでアレルギーは起こる?
くるみは「特定原材料に準ずるもの」の一つであり(※8)、アレルギーを引き起こす可能性がある食品となっている。そのため、何かしらのアレルギーを持っている場合には、食べ始める前に必ず主治医やかかりつけ医などに相談しておこう。
結論
くるみは、三大栄養素・ビタミン類・ミネラル類・食物繊維などを多く含んでいるほか、不飽和脂肪酸・ポリフェノールも含んでおり栄養バランスが優れている。ただし、高カロリー・高脂質の食品であるため、食べ過ぎるとカロリーオーバーになり肥満などの原因になってしまう可能性もある。そのため1日に食べる量は「ひとつかみ(約30g)」までにしておこう。
【参考文献】
- ※1:日本スーパーフード協会「スーパーフード推奨品目」
https://www.superfoods.or.jp/foods/ - ※2:文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」
https://fooddb.mext.go.jp/ - ※3:カリフォルニア くるみ協会「くるみの抗酸化作用」
https://www.californiakurumi.jp/health/vitamin - ※4:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年)」
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf - ※5:長寿科学振興財団「食物繊維の働きと1日の摂取量」
https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/shokumotsu-seni.html - ※6:J-オイルミルズ「脂肪酸の種類について」
https://www.j-oil.com/oil/type/fa/ - ※7:カリフォルニア くるみ協会「くるみのカロリーと栄養成分」
https://www.californiakurumi.jp/health/component - ※8:消費者庁「食品表示基準Q&Aアレルゲン関係」
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/assets/food_labeling_cms101_210317_10.pdf
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