1. 聞き手効果段階(0〜10ヶ月)

生まれて間もない新生児期は、お腹が空いたなどの生理的欲求を訴えるが、そこに「伝えよう」という意思ははっきりとしていない。しかし、新生児期からすでに周囲の音と人の発する声を聞き分けることができると言われている。生後2ヶ月ごろから周囲の人を見て笑顔を見せる、クーイングと呼ばれる喉を鳴らすような音を出すなど、社会的活動が見られ始める。その後生後4ヶ月ごろになると、より言葉に近い喃語が出現する。この時期にはまだ明らかな言葉は話せないが、まずは最低限の欲求を訴えることから始まり、だんだんと表情や音声を使って意図的なやりとりができるようになっていく。言葉を使ったコミュニケーションの基礎が、この時期に形成されると言えるだろう。
「聞き手効果段階」の終わる頃には大人の簡単な言葉が理解できたり、赤ちゃん自身も身振りなどを用いて簡単な伝達ができるようになる。
「聞き手効果段階」の終わる頃には大人の簡単な言葉が理解できたり、赤ちゃん自身も身振りなどを用いて簡単な伝達ができるようになる。
2. 意図的伝達段階(10〜12ヶ月)

この時期には「マンマ」「ブーブー」などの簡単な言葉が言えるようになることが多い。まだたどたどしく聞き取りにくい発音ではあるが、伝達手段としての言葉を獲得する時期だ。一方、言葉を必要としない指差しやアイコンタクトなどの使用も増え、それらを複合的に使うこともできるようになる。また自分と親とで何かの事象を共有するという、三項関係が確立される時期でもある。その結果、例えば自分の見つけたおもちゃを大人に指差して教える、絵を読んでもらって知っている言葉があると絵を指差す、「ちょうだい」と言われると物を差し出すなど、コミュニケーションの幅が広がっていく。
ただし、必ず12ヶ月頃までに初語があるということではなく、あくまでも目安なので1歳で言葉が出ていなくても心配をする必要はない。指差しや共感を大切にしよう。
ただし、必ず12ヶ月頃までに初語があるということではなく、あくまでも目安なので1歳で言葉が出ていなくても心配をする必要はない。指差しや共感を大切にしよう。
3. 命題的伝達段階(12〜16ヶ月)

命題的発達段階を迎えると、伝達手段として言葉を使うことができるようになる。例えば、おもちゃ箱を指差して「ブーブー」と言うことで、車のおもちゃがほしいという要求を伝えたりする。言葉としては一語文であるが、そこにしっかりと伝達手段としての要素が出現するのだ。ただし、言葉の正確さはまだ低く、身振りなどを組み合わせることで大人に意思を伝えるため、大人は言葉だけを鵜呑みにするのではなく子どもの姿から推測することが大切だ。
完全ではないとはいえ、単語レベルで欲求を伝えてくれるようになるので、親にとっては少しお世話がしやすくなる頃だろう。
完全ではないとはいえ、単語レベルで欲求を伝えてくれるようになるので、親にとっては少しお世話がしやすくなる頃だろう。
4. 1歳半〜幼児期の言語発達

1歳半から2歳後半頃までの時期、子どもの語彙数は爆発的に増加する。子どもは物の名前を中心に言葉を覚えていくので、周囲の大人に「これなに?」と名前を尋ねることを繰り返す。この時期には、何度も繰り返し物の名前を教えることになり大変と感じる方もいるだろう。しかし、子どもの言葉の発達をバックアップするための大切な時期なのでぜひ付き合ってあげよう。また、語彙の爆発的な増加を認めるこの時期は、二語文を獲得する時期でもある。つまり「パパ ブーブー」など、文章にして欲求を伝えることができるようになる。ただし、この例文からもわかるように、「パパ、車をとって」とも「パパ、車があるよ」とも解釈ができるなど、文章の意味はまだ一定しない。絵本やわらべうたなどは、この時期の言葉の発達を促すのに効果的なので活用しよう。
やがて3歳頃になると、仮定を含む複雑な文章を使うことができるようになる。その後も語彙の増加とともに、話し言葉としては日常的なやりとりを言葉でこなせるようになる
やがて3歳頃になると、仮定を含む複雑な文章を使うことができるようになる。その後も語彙の増加とともに、話し言葉としては日常的なやりとりを言葉でこなせるようになる
結論
赤ちゃんから幼児期にかけての、言葉の発達段階について紹介した。言葉の発達については、精神の発達やコミュニケーションの発達などさまざまな能力の発達が影響しており、必ずこの通りに成長するとは限らない。初語の早い子、いつまでも話さないが突然語彙が増える子など子どもによってさまざまだ。しかし今回紹介した各段階の様子は、それぞれの時期の言葉の発達における重要なポイントでもある。子どもの言葉の発達が次の段階へ進む時、周囲の大人とのコミュニケーションは非常に重要な役割を担っている。子どもの成長を楽しみながら、どんどん変貌していく乳幼児期の言葉を大切にして向き合っていこう。