1. 菊酒を飲み、菊の着せ綿で願った不老長寿

秋となり、9月9日は重陽の節句を迎える。ひなまつりの「上巳の節句」、子供の日の「端午の節句」と違い、ややなじみがないかもしれないが、昔の中国でおめでたいとされた数「9」が重なる日。菊酒を酌み交わし祝ったという。日本でも平安時代から宮中儀礼となって、菊の花を浮かべた酒を飲み、菊に綿をかぶせ含んだ露で体を清め、若返りを願ったと聞く。菊の花を漬けた酒には不老長寿の伝説があり、菊花は生薬として人々を癒してきた。
2. 赤紫色の食用菊「延命楽」別名「もってのほか」

刺し身のつまに添えられる小菊のほかに、秋から出回るのが、花びら部分を食べる大輪の食用菊だ。よく見かける黄色い菊は「安房宮」。そして、赤紫色の「延命楽」という品種もあり、こちらが別名「もってのほか」。花びらがなんと筒状になっていて、茹でてもシャキッとした歯ごたえが残り、甘さとほろ苦さを併せ持つ東北産の高級品なのだ。どこぞの殿様が農家で菊浸しを食し「百姓にはもってのほか(もったいない)である」と言ったとか、「もってのほか(思っていたより)美味しい」と言ったとされるのが、ユニークな名の由来らしい。入手できたら酢を入れ茹でて、酢の物や和え物に。天麩羅などにもいいだろう。
結論
食用の花・エディブルフラワーとして、昔から菊は食されてきた。9月頃には早生が出荷されるが、秋が深まったころに最も美味とされる真打ち「本もって」が登場。一度ぜひ調理に挑戦して、香り豊かでほろ苦く甘い、秋の味覚を堪能してみてはいかがだろうか。