目次
1. 落し蓋とは?意味や料理への効果

落し蓋を使う調理法は昔から引き継がれてきたが、そもそも落し蓋にはどのような意味があるのだろうか。また、落し蓋には食材に味をしみ込ませる効果だけでなく、さまざまなメリットがある。落し蓋とはどのようなものなのか、その意味や効果についてまずはおさえておこう。
落し蓋の意味
落し蓋とは、「鍋のサイズよりも一回り小さい蓋を食材に落とすように乗せること」を意味する。煮物などのレシピなどを見ると「落し蓋を使って、加熱する」と書かれていることが多い。これは、以下のような落し蓋の特徴を利用したものだ。
落し蓋の料理への効果
- 落し蓋をすることで煮汁が対流しやすくなる。その結果、少ない煮汁で食材に効率よく味をしみ込ませることができる。
- 材料が鍋の中で移動しにくくなるため、煮崩れを防ぐことができる。
- 蓋を全開にして煮るのに比べて、落し蓋をすることにより煮汁の蒸発を抑えることができる。
ちなみに、落し蓋をしたうえで、普通の蓋をして煮込むことを「きせ蓋」と呼ぶ。こうすることで、煮汁の蒸発を最小限にすることができる。煮魚などできせ蓋をする場合には、蓋は少しだけずらした状態で乗せるようにしよう。これにより、魚の生臭さを外に逃がすことができる。
2. 落し蓋の種類はいろいろ!代表的なのは3つ

落し蓋には、材質の違いにより大きく3種類がある。木製、金属製、そしてシリコン製だ。一般的にはこの3種類が使われているが、セラミック製のものや、不織布で作られた使い捨てタイプの落し蓋も販売されている。落し蓋として作られた専用のものは、いずれも料理への効果が高いだけでなく、出し入れがしやすいよう工夫されているなど、利便性にも優れている。ほかのものでも代用できるが、専用の落し蓋はより使いやすい。
木製の落し蓋
昔から使われている、最も一般的なタイプ。手ごろな価格で手に入るが、木製なので具材のにおいや味が落し蓋にしみ込みやすいのが欠点だ。とくに乾いた状態で使うと、煮汁が落し蓋にしみ込んでにおいが取れにくくなってしまう。そのため、木製の落し蓋は必ず水で濡らしてから使おう。料理などで使ったあとは、スポンジなどでしっかりと洗うようにしたい。また、水分が残っているとカビが生えやすいので、しっかり水気を取り、よく乾燥させてから保管するようにしよう。
金属製の落し蓋
ステンレス製のものが多く、においが移ったりカビが生えたりという心配がなく、使いやすい。鍋の大きさに合わせてサイズが調整できるタイプも多く、ひとつ持っていると小鍋にも大鍋にも使えて重宝する。
シリコン製の落し蓋
軽くて柔らかい素材なので、具材の形を潰さずに使うことができる。色や形などのバリエーションも多い。アク取りの機能を兼ね備えたものも多い。
3. 落し蓋の代わりになるのは?代用品と作り方

専用の落し蓋がないときでも、キッチンにあるアイテムを使って簡単に落し蓋の代わりにすることができる。覚えておくといざというときに役立つだろう。
落し蓋の代用1:アルミホイル
- アルミホイルを鍋の大きさにカットする
- 手で軽くクシャクシャにする
- 外周になる部分は折るなどして鍋に合うように丸くする
- 菜箸で中心に穴をあける
- 食材の上から被せる
以上が、落し蓋の代用にアルミホイルを使う方法だ。クシャクシャにすることでアクが取れやすくなる。アルミホイルは熱伝導率が高いため、味が効率よくしみ込みやすいのも特徴だろう。
落し蓋の代用2:キッチンペーパー
- ペーパーを切る
- 角を折りたたむようにして鍋にセットする
- ペーパーがずれるのを防止するため中心に穴をあける
煮魚や角煮などの場合には、キッチンペーパーが余分な脂を吸い取る働きも兼ねてくれる。キッチンペーパーには、薄いタイプと厚いタイプの2種類がある。薄いタイプは、煮込んでいる間に破けてしまうこともあるので、2枚重ねにして使うのがおすすめだ。
落し蓋の代用3:クッキングシート
- クッキングシートを4つ折りにする
- クッキングシートの角のいずれかが鍋の中心にくるように当てる
- 鍋の半径の長さに合わせて端(鍋の外側にくるほう)を丸くカットする
- 尖っている部分(鍋の中心にくるほう)を少しカットする(これが空気穴になる)
- 「3」で丸くカットした側に5ヶ所くらい切り込みを入れる
あとは広げて食材の上から被せればOKだ。クッキングシートを落し蓋の代用にする方法はごく一般的なので、動画サイトなどでもいろいろな作り方が見られる。興味があればぜひチェックしてみよう。
落し蓋の代用4:皿
鍋よりも一回り小さいサイズの平皿を使うこともできる。上記の3つの代用方法に比べて、重さもあるので固定しやすいのがメリット。ただし、重すぎると食材の形が崩れてしまうこともある。また、落し蓋に使ったあとは皿が大変熱くなっているので、気を付けて取り出すようにしよう。
アルミホイルの落し蓋は人体に悪い?
ところでアルミニウムで作った落し蓋は、長時間使用することでアルミが溶け出すことがある。人体への害など心配になる場合もあるだろう。一般的には、落し蓋などで加熱した程度では健康に害を及ぼすことはないと考えられている。そもそもアルミニウムは飲料水や食品などにも含まれている物質だ。そこから考えると過度に不安視する必要はないかもしれない。ただし、酢など酸性の調味料を使った料理の場合、酸と反応してアルミがさらに溶け出しやすくなるため注意が必要である。
なお、内閣府の食品安全委員会(※)によれば、FAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)で暫定的に定めているアルミニウムの「耐容週間摂取量(一生涯摂取し続けても健康への悪影響がないと推定される、1週間あたりの摂取量)」は、体重1kgあたり2mgとのことだ。これを超えてもただちに健康への悪影響があるわけではないとしているが、心配な場合はアルミホイルではなく、専用の落し蓋を使うことをおすすめする。
4. 落し蓋の代用になるものがないときの調理のコツ

煮魚や野菜の煮付けなど、落し蓋を使ったほうがよい料理を作るときに、代用品すらなかったらどうすればよいのだろうか。落し蓋を使うと、主に「味がしみ込みやすい」「煮崩れしにくい」「煮汁が蒸発しにくい」という3つの効果が得られるが、ない場合は次のような工夫でカバーすることができる。
味をしみ込ませるコツ
とくに硬い野菜などを煮る場合は、隠し包丁を入れることで味がしみ込みやすくなる。また、魚の煮付けなど少量の煮汁で調理する場合は、食材の浸っていない部分にスプーンなどで煮汁をかけながら煮詰めるとよい。
煮崩れを防ぐコツ
野菜は厚めに皮をむく、面取りをするなどの下ごしらえを行う。また、食材が重ならないように並べる、煮込んでいる間はあまり触らないなどの工夫も大切だ。また、煮汁が多いと煮崩れしやすくなるため、蒸発しないよう気を付けながら少ない煮汁で調理する。
煮汁の蒸発を防ぐコツ
煮崩れを防ぐためには煮汁を少なめにするとよいが、落し蓋がないと煮汁が蒸発しやすいため焦げ付きに注意が必要だ。そのため、調理中は目を離さないほうがよいだろう。また、煮汁がかなり減ってしまった場合は、途中で水を足して調整しよう。
いずれの場合も、やや手間がかかるというデメリットがある。また、落し蓋を使用するのに比べて調理時間も長くなってしまう。落し蓋なしでも調理は可能だが、やはり落し蓋を活用したほうがよさそうだ。
5. おすすめの落し蓋3選

最後に、おすすめの落し蓋を3商品紹介しよう。
パール金属「ステンレス製 フリーサイズ 落とし蓋」
さまざまなサイズに変えられる、ステンレス製の落し蓋だ。16〜24cmまでの鍋に使用でき、底に敷けば蒸し目皿としても活用できる。鍋の中で熱くなった落し蓋は、リングに菜箸などを引っ掛けて取り出せる。
貝印「セラミック 蒸し器&落し蓋」
においや汚れなどが付きにくい、セラミック(磁器)製の落し蓋だ。16cmと小さめの鍋に適している。落し蓋のほか蒸し器としても活用できるなど、1つ持っておいて損はないアイテムだ。
市原木工所「樹婦人」
木製の本格的な落し蓋がこちら。15~24cmまで各サイズが揃っている。持ち手と蓋は、接着剤やクギなどを使わない「あり溝加工」で取り付けられている。食品に使うものなので心配りがうれしい。
結論
煮魚や煮物を作るときによく使われる落し蓋。少ない煮汁や少ない時間でも、素材に味をしっかりとしみ込ませるための必需品であることが分かった。自宅に落し蓋がない場合でも、身近な材料で代用することもできるため、ぜひ試してみよう。