1. にんにくのルーツと栽培方法
古代エジプトでも栽培され、日本では「本草和名」(918年)の記載が初とされるが、少なくとも1000年前には薬用として栽培されていたと見られる。栄養価の高いにんにくは強壮剤、強精薬として扱われて来たのだ。
実は品種改良が難しい
古い歴史と人気を誇る野菜のわりに、にんにくは品種改良が盛んではない。理由はその栽培方法にある。にんにくは花があまり咲かず、ごく稀に咲いたとしても受粉して種を作ることはほとんど無い。種ではなく地下の球を株分けして増やしていくので、性質の違う株同士を「掛け合わせる」ことが困難なのだ。
それでも地方栽培がされてきた
数が少ないながら、各地方の土着種は存在する。各地方の気候に対応したたくましい品種は、改良が難しいことも相まって大切に栽培されてきたようだ。
2. にんにくの品種は3大タイプ
主に栽培する土地の気候と位置で「寒地型」「暖地型」「低緯度型」の3つに分けられる。
日本を代表する「寒地型」
スーパーで見掛ける国産にんにくは、8割が青森産の「福地ホワイト6片」である。中も外も雪のように白く、辛みと甘味のバランスがいいため、流通度も相まって間違いなくにんにくの代表品種と言えるだろう。同じ寒地型の「富良野」は、外見はホワイト6片に似ているが、外皮を剥くと中の薄皮が赤紫色をしている。薄皮を剥いてしまえば中は白い。ホワイト6片より小ぶりだが、味は濃厚で甘い。「富良野」は名前の通り北海道産で、北海道には薄皮がピンク色の「北海道在来種」もある。いずれも厳しい寒さに耐えられるように栄養価が高いのが特徴だ。
個性の強い「暖地型」
全国的に出回らない、珍しい品種が多いのがこの暖地型品種だ。生育が旺盛で丈が1mにもなる「平戸にんにく」は香りや味が柔らかいため苦手な人にもおすすめできる。主に九州や四国で栽培されている「上海早生」は、暖地の利点で熟期が早く収穫まで短期間なのが特徴だ。暖地型には他に「佐賀在来」「高知在来」などがある。
冬でも成長する「低緯度型」
沖縄で古くから栽培されてきたうっすら赤紫の「島にんにく」は、小ささから想像もつかないほど強い香りと辛みを持っている。休眠期間がないため収穫までが早い。静岡で栽培されている「遠州極早生」や、「鹿児島在来」「与論島在来」「大島在来」もここに分類される。
3. 同じにんにくでも違う味わい
普段目にするにんにくは保存が利くよう乾燥されているが、6月から初夏にかけて出回る旬の「新にんにく」は、極論生で味噌をつけてかじれるほどジューシーで、味もフレッシュだ。香りは鮮烈なのでご注意を。
食べる場所によって呼び名が違う
にんにく本体ではなく、とう立ちしたにんにくの花茎は「にんにくの芽」とか「茎にんにく」と言われ、香りはマイルドでシャキシャキした歯ざわりだ。中華料理の炒め物によく使われている。また、中国からの輸入が中心だが「葉にんにく」もある。ネギやニラより柔らかく、食感が優しい。香りもマイルドで、産地なら旬の国産葉にんにくが出回っている。
結論
にんにくの薬効の正体は、あの強烈なにおいの元である「アリシン」である。ビタミンB1の吸収率を上げてエネルギー効率をよくするため、極めて強力なスタミナ源となる。ただし、食べ過ぎは胃腸の粘膜を傷害して胃もたれを招くため、程々にしよう。ちなみに社会人の強い味方である「無臭にんにく」はにおいが約14分の1程度なのに、一般種とアリシンの含有量は変わらない。翌日のにおいが気になる時は強い味方だ。