1. 米の歴史

どの年代もお米ファン
近年、食文化の欧米化が問題視されている。確かに、手軽にパンやパスタなどを食べることができるが、だからと言って日本人は米離れしているのだろうか?「米が好きか嫌いか」といったアンケート調査では、年齢層を問わず80~90%が「好き」と答え、「嫌い」や「好きではない」と答えた人はわずか2%であった。また、夕食に米を食べる頻度に関する調査では、75%がほぼ毎日と回答した。外食の多い若年層に米離れが進んでいるのかと思いきや、意外なことに30代の多くが1日に2食以上米を食べると答えている。今も昔も、若者にもお年寄りにも愛される米は、いつから食べられているのだろうか?
米の長い歴史
稲は、原産地である中国中南部から日本へ伝えられた。稲作は縄文時代中期に始まり、縄文時代終期から弥生時代には水稲栽培が始まったことが遺構から判明している。2000年以上もの間、日本人は稲を育て、そして米を食べているのである。米は単なる食材ではなかった。租税として取引されたり、貨幣が流通し始めてもなお米の価値との調和が計られるなど、政治や経済に深く関わっていた。このことからも、日本人にとって米がどれほど重要なのかをうかがい知ることができる。戦前においては、全ての日本人が米を口にできたわけではない。地域や階級によっては、芋や稗、麦などを主食としていた。太平洋戦争の頃から少しずつ米不足が加速し、これによって海外からの輸入が始まる。昭和40年頃になると米の生産が安定するが、今度は一転して米余り現象が起き、減反政策がとられるようになった。米の生産量のピークは昭和42年の1426万トン、平成27年は約800万トンとなっている。
2. 米(稲)の種類

ここからは、米の種類について解説する。日本語では、収穫前は「稲」、収穫後で調理する前は「米」、そして調理後は「ご飯」とそれぞれ異なる言葉を使うが、英語では総じて「rice(ライス)」である。こんなところにも、米に対する日本人の想いを感じることができる。
世界中で栽培されている稲は、アフリカイネとアジアイネの2種類である。
世界中で栽培されている稲は、アフリカイネとアジアイネの2種類である。
・アフリカイネ
主にアフリカ西部で栽培されている稲。降雨量が少なく乾燥しているため、多種の掛け合わせによって乾燥や病害虫に強く、面積当たりの収穫量の多い品種が栽培されている。
・アジアイネは"ジャポニカ種"と"インディカ種"の2種に大分される。
(ジャポニカ種)
日本で栽培されている稲のうちほとんどを占める。円粒、加熱時の粘弾性が大きい。
(インディカ種)
世界の様々な地域で栽培されており、ジャポニカ種よりも生産量が多い。記録的な冷夏により米不足となった平成5年に輸入され、「タイ米」と呼ばれたものがこの種類である。長粒、加熱時の粘弾性が小さい。
日本で栽培されている稲のうちほとんどを占める。円粒、加熱時の粘弾性が大きい。
(インディカ種)
世界の様々な地域で栽培されており、ジャポニカ種よりも生産量が多い。記録的な冷夏により米不足となった平成5年に輸入され、「タイ米」と呼ばれたものがこの種類である。長粒、加熱時の粘弾性が小さい。
日本で"米"と言えばジャポニカ種だが、ここから更に「コシヒカリ」などの品種に分類される。現在日本には500種以上の米が栽培されていると言われている。代表的な品種とその特徴について、以下の項目で詳しく解説する。
3. 米の品種と特徴

米の風味は、品種によって決まる。もちろん生産地や収穫時期なども重要だが、味に大きな影響はない。一定の品種の米を食べ続ければ、何年経っても、どこで生産されたものであっても、同じような味ということだ。ここからは、平成28年度の作付比率の高い品種から特徴を紹介する。
- コシヒカリ
作付比率36%、日本一有名な米。主な産地は新潟・茨城・栃木。味・香り・粘りのバランス抜群 - ひとめぼれ
コシヒカリを母体とする米。粒が大きめで淡泊な味わいが特徴 - ヒノヒカリ
西日本で支持されている品種。こちらも母体はコシヒカリ - あきたこまち
コシヒカリと奥羽29号を掛け合わせて作られた品種。もちもちした粘りが特徴 - ななつぼし
北海道産の品種。ほんのりと甘いあっさりした味わいとしっかりした粒が特徴 - はえぬき
山形県独特の気候で作られる品種。食味ランキングにおいて連年特Aを獲得している美味しい米 - キヌヒカリ
兵庫・滋賀・埼玉などで栽培される米。控えめな粘弾性とさっぱりした食感が特徴 - まっしぐら
青森県産の品種。硬めで粘りの弱い粒が特徴 - あさひの夢
幻の米「旭」を母体とする品種。粘りが少なく、あっさりしている - ゆめぴりか
柔らかい米を好む人におすすめ。食味ランキングで特Aを獲得した話題の品種
それぞれの米の特徴からもわかるように、品種を掛け合わせることによって新しい品種の米が作られている。バランスの良いコシヒカリは当然引っ張りだこで、「コシヒカリ×初星=ひとめぼれ」「コシヒカリ×黄金晴=ヒノヒカリ」「コシヒカリ×収921=コシホマレ」「コシヒカリ×奥羽292号=あきたこまち」と多くの品種の母体となっている。ひとめぼれやあきたこまちなどの人気の品種は、同じコシヒカリを親に持ついわば異母兄弟なのである。
結論
米の品種と特徴について解説した。日本では、美味しいお米を毎日食べることは特別なことではない。しかし、日本を離れてみるとわかること、それは日本のお米の美味しさである。お米自体も美味しいが、一緒に食べるものの味わいまでもがアップする。そして栄養価が高く、アレンジの幅も広い。世界中を探しても、米ほど優秀な食材はない。米こそが「日本人でよかった」と実感させる食材と言えるだろう。