1. マグロは出世魚か否か。
出世魚といえば、地域によって多少の違いはあるものの、ワカシ→イナダ→ワラサやハマチというように名前を変えていくブリが有名だ。江戸時代の頃までの男子は、成人を迎えると、それまでの幼名ではなく元服名(実名)を名乗るのがしきたりであり、同じように成長にともなって名前を変えていく魚も、出世魚として縁起の良いものとされていた。ほかにもスズキやボラなども、出世魚として当時からよく好まれていた。
実は、マグロも同じように名前を変える。ではマグロは出世魚なのか?厳密にいえば、「NO」なのである。その理由として、かつてマグロは下魚だったことが挙げられる。赤身のマグロは腐敗がすすみやすく、現代のように調理法や冷蔵・冷凍技術が発達するまでは、あまり重宝されていなかった。今では高級食材のトロですら、脂ばかりでネコさえも食べない「ネコまたぎ」と呼ばれ、港に揚がるとすぐ捨てられていたという。さっと湯引きして醤油やみりんに漬け込む「ヅケ」が登場するまでは、畑の肥料にもされていたという話もあるほどだ。「シビ」という別名も「死日」を連想させることから、武士たちを中心に、縁起が悪いと避けられていたそうだ。このようにマグロは不人気だったため、ブリやスズキのように名前が変わるにも関わらず、出世魚として日の目を見ることができなかったのだろう。
実は、マグロも同じように名前を変える。ではマグロは出世魚なのか?厳密にいえば、「NO」なのである。その理由として、かつてマグロは下魚だったことが挙げられる。赤身のマグロは腐敗がすすみやすく、現代のように調理法や冷蔵・冷凍技術が発達するまでは、あまり重宝されていなかった。今では高級食材のトロですら、脂ばかりでネコさえも食べない「ネコまたぎ」と呼ばれ、港に揚がるとすぐ捨てられていたという。さっと湯引きして醤油やみりんに漬け込む「ヅケ」が登場するまでは、畑の肥料にもされていたという話もあるほどだ。「シビ」という別名も「死日」を連想させることから、武士たちを中心に、縁起が悪いと避けられていたそうだ。このようにマグロは不人気だったため、ブリやスズキのように名前が変わるにも関わらず、出世魚として日の目を見ることができなかったのだろう。
2. 名前はどのように変わっていく?
全てのマグロで名前が変わっていくわけではない。ここでは、特に代表的なものを紹介しよう。
クロマグロ
「本マグロ」や「黒いダイヤ」とも呼ばれ、高級食材として有名な大間マグロもこのクロマグロだ。ヨコ・ヨコワ・メジ(幼魚)→ヒッサゲ・大メジ・チュウボウマグロ(20kg前後~40kg前後のもの)→クロマグロ・クロシビ(大きな成魚)と名前を変えるほか、ヨコカワ・ウメゾメ・ゴンダ・トウツケ・ハツ・セナガ......など、記述しきれないほど、たくさんの幼名や地方名をもつ。
キハダマグロ
ヒレと頭から尾にかけてのラインが黄色になっているのが特徴だ。キメジ(20kgより小さいもの)→小キハダ(20kg~40kgのもの)→キハダマグロと名前を変えるが、5kg~25kgまでのものは小キワ(コキワ)、25kg~40kgのものはキハダ25(ニイゴウ)と呼ぶことも。クロマグロのようにたくさんの幼名や地方名をもち、ほかにはチャッパビンヨコ・ギンビレ・グズナガ・スビーガーシュビ・チンバニーなどと呼ばれる場合もある。
メバチマグロ
スーパーで刺身として売られているものの代表格で、目がとても大きい。ダルマ(15kg以下の幼魚)→小バチ(15kg~25kg)→中バチ(25kg~40kg)→大バチ・メバチマグロ(40kg以上)と、名前を変える。
クロマグロやキハダマグロほどではないが、他にもバチ・キツネ・メッパ・ヤハラ・トックリバツ・メブトなどの地方名がある。
クロマグロやキハダマグロほどではないが、他にもバチ・キツネ・メッパ・ヤハラ・トックリバツ・メブトなどの地方名がある。
3. ○○マグロはクロマグロ!
上に記述したクロマグロの箇所で、幼魚「メジ」の名前を見てお気づきの方もいるだろうか。そう、時折スーパーや寿司店で目にすることのある、「メジマグロ」と同じものなのだ(高知県や中国エリアでは「ヨコワ」と呼ばれる場合も有り)。脂ののりは親のクロマグロほどではないが、それでもメバチマグロの倍以上はのっていることが多く、全体的にキメの細かいサシが入っている。赤身というよりも濃いロゼワインような色あいをしていて、やわらかな肉質も人気の秘密だ。クロマグロでは気になりがちな酸味の程度も丁度よく、上品な甘みや申し分ない旨みと相まって、年配の方でも食べやすいといわれることも多い。
この「メジマグロ」だが、いっときはかなりの量が水揚げされていたため、クロマグロになれる個体がいなくなってしまうことが懸念されていた。それゆえに、ここ数年は世界的にも漁獲量が制限されており、以前よりは見かけにくくなっていることだろう。もしどこかの店で見かけることがあれば、貴重な命に感謝しながら、無駄なくおいしく食べていただきたい。船釣りや堤防釣りで揚がることもあるが、食べきれなさそうなときは、オイルで煮込む手作りツナが絶品なので試してみてほしい。
この「メジマグロ」だが、いっときはかなりの量が水揚げされていたため、クロマグロになれる個体がいなくなってしまうことが懸念されていた。それゆえに、ここ数年は世界的にも漁獲量が制限されており、以前よりは見かけにくくなっていることだろう。もしどこかの店で見かけることがあれば、貴重な命に感謝しながら、無駄なくおいしく食べていただきたい。船釣りや堤防釣りで揚がることもあるが、食べきれなさそうなときは、オイルで煮込む手作りツナが絶品なので試してみてほしい。
結論
スズキやブリのように成長の過程で呼び名が変わるマグロがいる、ということがおわかりいただけただろう。かといって出世魚とは言い切れないのが複雑ではあるが、なぜ出世魚ではないのかの蘊蓄も含めて知っておけば、どこかで話のタネになることがあるかもしれない。世間一般では認知度の低い情報だ、知っておいて損はない。