1. 酢の正体

大まかな種類
酢は、人間が加工して作った最古の調味料と言われている。始まりは、偶然の産物だった可能性が高い。収穫した果実などを蓄えておくうちに、フルーツの酵母と糖により、アルコール発酵し、酒が生まれた。さらにこの酒にさらに菌が繁殖し、お酢へと変化を遂げたのだ。こうして手に入れた酢を、人々は調味料としてだけでなく、飲料、薬など、幅広く活用してきた。紀元前5000年頃の古代バビロニアには、干しぶどうやナツメヤシを原料に酢を精製していた記録が残っている。
穀物酢
現在、日本で広く販売されている酢は、その原材料で2つの種類に分けることができる。そのひとつが穀物酢。その名の通り、穀物でできたお酢全般を指す。麦など穀物から作られる酢、米から作られる米酢、玄米から作られる黒酢などが、この種類に分類される。
果実酢
対してもう一つが、果実酢だ。こちらもその名の通り、果実からできる酢のこと。代表的なものは、リンゴ酢やワインビネガー、バルサミコ酢などである。洋モノの酢はこちらに分類される。日本では穀物酢の方がポピュラーではあるが、欧米諸国ではこの果実酢がポピュラーだ。
2. ワインビネガーの基礎知識

原料
その名の通り、ワインから作られるのがこのワインビネガーだ。ちなみに英語で酢を指すvinegarはフランス語のvinaigreが変化したものである。このvinaigreの語源と言われているのが、vin(ぶどう酒)とaigre(すっぱい)。ワインが酸っぱくなったものという意味の通り、原料のワインを酢酸発酵させたものがワインビネガーだ。酢酸菌と呼ばれる菌がアルコールを餌にして酢を生成する。酢の中でも酸度が高く、きりりとシャープな味わいが特徴だ。
種類
ワインに赤と白があるのと同じく、ワインビネガーにも白ワインビネガーと赤ワインビネガーが存在する。さらに、シャンパンビネガーなるものも。白ワインビネガーは白ワインの爽やかさが感じられ、赤ワインビネガーは赤ワインのこっくりとしたテイストが味わえる。シャンパンビネガーは、シャンパン同様、繊細な味わいだ。
使い方
オススメの使い道も白、赤、シャンパンで異なる。白ワインビネガーは爽やかな味わいが持ち味。断然、サラダやカルパッチョなど生食に向いている。対して赤ワインビネガーは、コクのある味わいが特徴。その味わいを生かすよう、肉料理のソースに使うのが正解である。少し煮詰めることで、よりコクが際立つ。シャンパンビネガーは、この中で最も繊細な味わい。酸っぱさも控えめで、料理が自ずと品良く仕上がるので、初心者にもオススメだ。
3. バルサミコ酢の基礎知識

原料
バルサミコ酢もワインビネガー同様、その原料はぶどう。しかし、その製法が大きく異なる。そもそもバルサミコ酢は、イタリア北部エミリアロマーニャ州のモデナとレッジョ・エミリアで独自に作られてきた酢のこと。その原産地と製法は法律で定められており、生産者協会による格付けが行われる。製法は、ぶどう果汁を煮詰めて発酵させ、栗や樫などの樽に入れ、熟成して作られる。
種類
バルサミコ酢は、熟成年数によってその味わいが大きく異なる。通常、熟成が進めば進むほど、濃厚でまろやかな味わい。ちなみに名前も12年以上の熟成でないと伝統的なバルサミコ酢を指す「アチェート・バルサミコ・トラディツィオナーレ」と名乗ることができない。さらに25年以上であれば、イタリア語でとても古いを意味する「ストラヴェッキオ」の称号が与えられる。
使い方
バルサミコ酢は、香りも良く、酢といえどまろやかでコク深い味わい。ドレッシングなどにももちろん美味しいが、オススメは火を通す料理。肉にバルサミコ酢で下味をつけて炒めたり、肉料理のソースにも向いている。こっくりとした甘みをより引き立てるように、蜂蜜や砂糖をほんの少し加えるのが美味しく食べるコツ。また、熟成の長いものであれば、アイスクリームなどに少しかけて食べても美味しい。
結論
洋モノの酢の基本を学んできた。酢というと酢の物やサラダを思い浮かべがちだが、火を通す料理にも向いている。炒め物などの場合は、具材に火が通ったら、最後に加えて手早く混ぜ合わせると、酢の風味が適度に残って美味しい。残っているワインビネガーやバルサミコ酢があれば、活用してみよう。