1. きわめて稀な自然的原因

種子が無いまま果実が発達することを「単為結実」という。本来、種が無い果実は栄養を送る必要が無いと判断され育たないのだが、まれに果実が成長することがあるのだ。
温州みかんの場合
みかんは突然変異で自然発生した単為結実樹だ。実はみかんは、雄花の花粉数が異常に少なく、雌花の受粉能力も低いため種子が出来ない。しかし、甘くて大きな果実は育つ。発見された時からこの性質を持っており、種が無いので全て接ぎ木で増やされているのだ。
パイナップルの場合
植物が多様性獲得のため近親交配を嫌って、自分自身の花粉では受精しない「自家不和合性」という特徴を利用しているのがパイナップルだ。自分の花粉では受精しないため、株分けで増やしていく。
バナナの場合
みかん同様の突然変異種で、元々のバナナには立派な種がある。中心の黒い点々が種の名残だ。種無しバナナは脇芽の挿し木で増やしている。通常の生物は染色体が2本ずつセットの「2倍体」だが、種無しバナナは染色体が3本ある「3倍体」なのだ。後述するが、人工的に3倍体を作ることで種無しに成功した果物もある。
2. ほとんどが人工的に作られている

単為結実を人工的に作り出す方法は主に植物ホルモンの利用だ。代表的な果物でご紹介しよう。
種無しぶどう
開花期に2度にわたってひと房ずつ「ジベレリン」という植物ホルモンに浸して作られる。ジベレリンは日本人研究者が発見した植物ホルモンで、植物の茎や葉を伸ばしたり、受精無しでも果実を大きくする作用がある。
種無しスイカ
こちらは「コルヒチン」という植物ホルモンで処理されている。バナナと同じ染色体異常を人工的に起こして3倍体を作るのだ。まずは2倍体の正常株を4倍体にし、それに普通の2倍体株を掛け合わせて最終的に3倍体を作る。実に対する処理ではなく株本体への処理のため、種が出来ないその株は一代限りで終わりである。
3. 種無し果物のデメリット

消費者にとって種無し果物は食べやすくて大変ありがたいが、メリットだけではなくデメリットも存在する。
安全性はどうなのか?
植物ホルモンとは植物が元々持っているホルモンなので特に問題は無いと言われている。「植物成長調整剤」として日本では農薬の扱いだ。しかし、散布する物は天然ホルモンではなく合成ホルモンなので、中には気にする人も居るようだ。また、どうしても種無し果物は「美味しくない可能性」がある。実は種無し果物は種ありに比べて味が薄くある傾向にある。育てるべき種子が無い果実は本来生長する必要がないのだから、当然の結果かもしれない。
手間とコストが掛かる
ブドウは2回にわたりひと房ずつの処理が必要で、農家にかかる手間は大変なものである。また、人工的に染色体異常を起こした3倍体の種無し果物は育てても一代限りで終わってしまうため、再び苗から育てる必要がある。人工的な3倍体は個体の頑丈さが損なわれることがあり、手間とコストがかかるのがデメリットだ。
結論
代表的なブドウは種無しの品種が当たり前になっているが、実は自然発生した物ではない。機会があれば同じ品種で種無しと種ありを食べ比べてみるのも面白いだろう。みかんやバナナは突然変異種を挿し木で増やしているため、今の個体に対する特異的な病害が発生した場合、最悪全滅する危険もあるのだそうだ。種が無い果物を一体どうやって増やしているのか、子供と調べてみてはいかがだろうか。そして種無し果物を食べる時は、農家の方々の大変な手間に感謝して頂こう。