1. 味覚は基本4種+1

人が食事をする時は、嗅覚・視覚・触覚・聴覚をフル稼働させている。その中で最も重要なのが味覚である。基本の4つと、日本人なら身近な「旨味」の5種で構成されている。
基本の4つ
塩味、甘味、酸味、苦味が基本の4つとなる。味見の最中は熱々を食べるので、後で冷めてから味わいが変わったりしょっぱくなることもある。味ごとに温度による感じ方が違うので、提供する時の温度で考える必要があるのだ。
残るは旨味
4つに比べて最後に発見された味覚成分である。甘味と似ているが違うもので、グルタミン酸ナトリウムやイノシン酸ナトリウム等の旨味成分がその正体だ。日本人は昆布出汁の文化があるため理解しやすいかもしれないが、世界的に見ると旨味は不思議な味覚として位置づけられているらしい。他の4味に比べて明確な分かりやすさが無いからだろう。
2. それぞれの最適温度

食品には温かいと美味しいもの、冷たいと美味しいものがあるが、これは味覚の特性を知っていれば科学的に説明できる。
塩味
おかずとして一番よく口にする味だ。塩気の持続時間は短いため、しょっぱさを感じるのはほんの一瞬である。温度が高いとまろやかに感じ、低いときつく感じる特徴がある。
甘味
塩味に比べて口の中で長続きする。甘党が幸福感に浸れるのは、この持続性のせいかもしれない。体温に近い温度で最も強く感じるため、冷たいと感じにくい。
酸味
他の味と比べて温度変化を受けにくい。他の味が変化した際に強く感じることがあるので、味付けに注意したい味だ。塩味同様すぐに消える味覚である。
苦味
温度が高いとマイルドに、低いと苦みが強くなる。塩味と同様の法則である。コーヒーやピーマンの味は温度で変化するのだ。
旨味
甘味と混同する人も多いが、全く別物だ。ただし、旨味も甘味同様極端に熱かったり冷たかったりすると感じにくいため、人肌程度が一番美味しく感じるようである。
3. 具体例と注意点

それでは、実際に味覚と温度が深く関係するメニューを確認してみよう。提供温度が大幅にずれると味が変わるため要注意だ。
元々冷たい食べ物
冷たい食べ物で感じにくくなるのは「甘味」である。アイスクリーム、ジュース、アイスコーヒーがいい例だ。アイスクリームは冷たいという刺激が先に伝わり、舌で溶けると体温に近づいて甘みが増すというのが美味しさのメカニズムになっている。冷たい状態でも甘く感じるということは、相当の砂糖が入っている。常温のジュースや缶コーヒーが甘ったるく感じるのはこのためだ。摂取し過ぎには注意しよう。
元々熱い食べ物
熱々で食べると塩気が薄く感じ、つい塩を足しがちになる。味噌汁はなるべく熱々の状態で提供したい。弁当用のおかずは冷めるとしょっぱくなるため注意が必要だが、弁当は傷みにくく白飯を勧めるためやや甘じょっぱい味付けの方が理に適っているだろう。
結論
味覚と温度の関係を覚えれば、健康のこと、提供される温度のことを頭に入れて、味付けを調節することが出来るようになる。甘味でおすすめなのは果物だ。果物の甘みは砂糖と違い、「果糖」が多いため冷やした方が甘く感じる。特に果糖が多い梨、ぶどう、りんご、スイカ等は良く冷やして食べよう。何事も食べ過ぎは厳禁だが、一番美味しく感じる温度を味方につけて、適量で満足できる食べ方にしていきたいものだ。