1. 醤油の種類
まず基本的なこととして、醤油には大きく次の5つの種類に分けられる。いずれも原料は「大豆」「小麦」「麹」「塩」「水」だが、それぞれの割合や熟成期間などによって味や香りに違いを出す。
- 濃口醤油...最も一般的な醤油で、国内の生産量の約8割を占める。東日本でよく使われている。蒸した大豆に同量の小麦を加えて「麹」を作り、そこに食塩水を加えて熟成させることで「もろみ」にする。よく撹拌させながら熟成させる。
- 淡口醤油...関西が発祥と言われ、西日本でよく使われている。「うすくち」という呼び方から、塩分が低いと思われがちだが、実際の塩分濃度は濃口よりも高めである。色が薄いことからこう呼ばれている。食材の味を引き立てたい時などによく使われる。
- たまり醤油...主に中部地方で作られている醤油である。濃口や淡口に比べて、とろみがあるのが特徴である。一般的な醤油が小麦と大豆を同量程度使うのに対して、たまり醤油は大豆を主に少量の小麦を使って作られる。これにより、大豆独特の旨味や香りが引き出される。
- 再仕込み醤油...かつては山陰地方や九州などで主に作られていたが、現在は全国的に生産されている。通常の醤油が大豆と小麦と麹を発酵させたしょうゆ麹に「食塩水」を加えるのに対して、再仕込み醤油は「醤油」を加えて熟成させる。そのため、濃厚な味わいを楽しむことができる。
- 白醤油...主に愛知県三河地域で生産されており、淡口醤油よりもさらに薄い色味をしている。江戸時代末期から作られるようになった、他の醤油と比べて歴史が浅い醤油だ。原料は主に小麦である。色が薄くなるように、熟成期間を短くしたり、皮を取り除いた小麦を利用したりするなどの工夫がされている。ちなみに、白醤油に出汁を加えたものが「白だし」である。
2. よく使う醤油は地域によって違う
旅行や出張の際に食事をしている時、ふと卓上に置いてある醤油の種類が違うことに驚いた経験はないだろうか。これは、地域によって親しまれている醤油が異なるためだ。現代とは違って輸送手段が発達していなかった時代には、地方ごとに特徴のある醤油を製造し、それを使った郷土料理が根付いていた。地域ごとによく使う醤油が異なるのは、その名残とも言える。
醤油を製造するメーカーは、最盛期には全国に1万社以上あったと言われている。現在は1,500社程度に減ってきている。
醤油を製造するメーカーは、最盛期には全国に1万社以上あったと言われている。現在は1,500社程度に減ってきている。
- 東日本は濃口醤油...関東甲信越地方から東側の地域では、濃口醤油を使う割合が約9割程度と言われている。料理の種類によって使う醤油をかえるという習慣はなく、濃口醤油を1本常備して使っている家庭が多い。
- 西日本は淡口醤油、または使い分け...西日本では淡口醤油も好まれている。また、料理の種類に応じて淡口醤油や濃口醤油、その他の醤油と使い分けしている家庭も多い。
- 九州・山陰・四国では甘い醤油...宮崎県や鹿児島県などの南九州では全国でもトップレベルに甘い醤油が使われている。その他、山口県・鳥取県・岡山県などでも甘い醤油が使われている。厳密に言えば、四国では大阪の影響を受けている東側は淡口醤油、九州の影響を受けている西側は甘口醤油が主流である。
3. 種類別に見る、醤油の使い方
- 濃口醤油...しっかりした味付けをしたい時に向いている。煮込み料理や炒め物、食材にそのままかけるなど、幅広い調理法で楽しむことができる。
- 淡口醤油...食材に色が付きにくいため、上品な見た目に仕上がる。野菜の煮物や炊き込みごはんなどにぴったりだ。
- たまり醤油...コクやテリが付きやすい。伊勢神宮などで有名な伊勢の郷土料理である伊勢うどんや、お刺身や寿司のつけ醤油として使うのにぴったりだ。また、うなぎや焼き鳥のタレなどに使用することも多い。
- 再仕込み醤油...濃厚な味わいがあり、加熱せずにそのまま使うのに向いている。刺身や寿司などに合わせるとぴったりだ。
- 白醤油...淡口醤油と同様に、素材の色を引き立てたい時によく使われる。野菜や炊き込みごはんなどにもよく使われる。
結論
地域によって、よく使う醤油は大きく異なることが分かった。醤油の食べ比べや、醤油の特徴を活かした料理を作ってみるのも面白いかもしれない。