1. 山遊び(野遊び・野がけ)とは

山へ行き遊ぶという意味で、山遊びや野遊びという言葉を自然に使っている人も多いだろう。実は昔ながらのれっきとした行事を表す言葉で、春の季語にもなっている。
山遊びの日
旧暦の3月~4月にかけての一定の日に行われ、地域によってその日どりはさまざま。東北地方では4月17日、暖かい地方では3月3日、寒い地方では4月8日に行われることが多いという。この日は忙しい農耕を休み、みんなで山へ遊びに行く。
なぜ春に山へ行くのか
春は山の神様が里へ降りてきて田んぼの神様となり、農業がトラブルや災害にみまわれることなく行われることを見守ってくれる季節だと信じられていた。山遊びは、この神様を山へ迎えに行くという意味合いもあるとされている。
もうひとつの意味合いが、男女交際の場。男女が出会い、仲を深める機会ともなっていて、歌を詠み合って結婚の約束をすることもあったという。後ほど紹介する奈良時代に行われた「歌垣(うたがき)」の風習を受け継いだものともいわれている。
もうひとつの意味合いが、男女交際の場。男女が出会い、仲を深める機会ともなっていて、歌を詠み合って結婚の約束をすることもあったという。後ほど紹介する奈良時代に行われた「歌垣(うたがき)」の風習を受け継いだものともいわれている。
山遊びの過ごし方
山遊びでは、暖かくなってきた頃に春の野や山に出かけて食事を楽しむ。要は現代のピクニックのようなものだ。草花を摘んだり、
景色を楽しんだり、酒盛りをして踊ったりしながら、一日を過ごす。摘んだ花を持ち帰り、家に飾ったりもしていた。
景色を楽しんだり、酒盛りをして踊ったりしながら、一日を過ごす。摘んだ花を持ち帰り、家に飾ったりもしていた。
2. 山遊びの行事食

ピクニックにも合コンにも、美味しい食べ物と飲み物が欠かせないように、山遊びにも行事食がある。
お正月のおせちにも入っており、日本の伝統的家庭料理である煮しめや焼き魚などを重箱に詰めた豪華なお弁当を持参し、見晴らしのよい場所で広げ、参加者みんなでいただく。その際「作神さまにあげ申す」と唱えてお祝いしたそうだ。
お正月のおせちにも入っており、日本の伝統的家庭料理である煮しめや焼き魚などを重箱に詰めた豪華なお弁当を持参し、見晴らしのよい場所で広げ、参加者みんなでいただく。その際「作神さまにあげ申す」と唱えてお祝いしたそうだ。
煮しめを作ってみよう
春の山遊びの定番「煮しめ」は、野菜を出汁と調味料で炊き込んだ料理。味がしみ込んでいるため傷みにくく、現代のピクニックのお弁当にもぴったりだ。華やかでおしゃれなお弁当もよいが、たまにはちょっと渋めに美味しい煮しめを詰めて出かけてみよう。
煮しめのポイント1. 丁寧な下ごしらえ
野菜をそのまま煮るのと、しっかり下ごしらえした後煮るのとでは、仕上がりに歴然の差が出る。里芋やごぼう、れんこんは水にさらす、こんにゃくは下ゆでする他、にんじんは花形にするなど見た目にもこだわろう。
煮しめのポイント2. 煮る前にゆでる
野菜はそのまま煮るのではなく、まずは10分ほどゆでてから。
煮しめのポイント3. 煮過ぎない
あまり煮込みすぎると、形がくずれてぐずぐずの仕上がりになってしまう。まずは出汁で具材を10分ほど煮て、調味料を加えたら
15~20分ほどで火を止めよう。そのまま置くと味を含んで美味しくなる。
15~20分ほどで火を止めよう。そのまま置くと味を含んで美味しくなる。
3. 山遊びの元になった歌垣

山遊びの原型になったともいわれる「歌垣」とはどんなものだったのだろう。
歌垣は近くに住む男女が山や野に集まり、短歌を詠み合い求婚するというもの。古代日本のほか、中国の少数民族などの間でも似たような行事が行われていたという。男女が公に交際するということがあまりなかった時代、若い男性と女性が結ばれ結婚するために公にも認められた数少ない行事だったのだろう。
この時に詠まれた歌は数えきれないほどといわれ、中には人妻への恋をしていた男性が「これは山の神が禁止しない行事だ」といった内容を詠った歌もあるという。
歌垣は近くに住む男女が山や野に集まり、短歌を詠み合い求婚するというもの。古代日本のほか、中国の少数民族などの間でも似たような行事が行われていたという。男女が公に交際するということがあまりなかった時代、若い男性と女性が結ばれ結婚するために公にも認められた数少ない行事だったのだろう。
この時に詠まれた歌は数えきれないほどといわれ、中には人妻への恋をしていた男性が「これは山の神が禁止しない行事だ」といった内容を詠った歌もあるという。
結論
もうすぐ山遊びのシーズン到来。昔の風習に想いを馳せながら、近くの山へお弁当を持って出かけてみよう。前日に煮しめを作っておけば、当日は詰めるだけなので簡単だ。美しい景色の中でいただけば、何倍も美味しいはずだ。