1. サイフォンコーヒーとは?

ポコポコと音を立てながらコーヒーを抽出するサイフォンは、優雅でどこかレトロ感が漂うオシャレなアイテムだ。この演出効果こそが、サイフォンコーヒーの最大の魅力といってもよいだろう。
そもそも「サイフォン」とは
諸説あるが、19世紀のヨーロッパで発明された方法といわれている。イギリス人が発明したバキューム方式の仕組みがフランスで改良され、現在のような形になったというのが通説だ。日本に伝わったのは大正時代で「コーヒーサイフォン」として広まり、その後「サイフォン」という省略形で呼ばれるようになった。今のような形式のペーパードリップが一般的になったのは1960年代といわれているが、布フィルターを使うサイフォンコーヒーはそれより前から親しまれてきた。
サイフォンの原理とは
淹れ方については後述するが、サイフォンコーヒーでは、フラスコ内の水を沸騰させる際に発生する気圧の変化を利用して、お湯を下から上へと移動させてコーヒーを抽出する。下とは「フラスコ」、上とは「ロート」と呼ばれる道具である。また水を沸騰させるにはアルコールランプなどのヒーターを使う。そしてフラスコとロートをつなぐのが、隙間のない管である。このような管を使い、液体をある所からそれよりも高いところへ移動させるメカニズムを「サイフォンの原理」という。
豆本来の風味を味わえる
サイフォンで淹れることでコーヒー豆が本来持つ風味が素直に引き出され、クリアな味わいを楽しむことができる。ロートの中で高温のお湯とコーヒー粉を一定時間浸すことにより、香り高きコーヒーが完成する。そのため、酸味や香りの高い豆を使うのがおすすめだ。
初心者でも味が安定しやすい
サイフォンコーヒーは、抽出時間をきちんと守れば味がブレにくいというのも大きな特徴である。ペーパードリップの場合などは淹れる人の技術によって味が左右されることがある。しかしサイフォンの場合は、いったん使い方を覚えてしまえば初心者の方でも安定した味が出せる。これも大きな魅力のひとつだろう。
欠点もあるが魅力や味わいが勝る
- 部品の数が多く一式揃えるのに費用がかかる
- 布フィルターの保管など扱い方がデリケートである
- 器具全体が熱くなるので注意が必要である
- 器具が大きいので広めの保管場所が必要である
サイフォンは見ているだけで科学の実験のように楽しく幻想的で、淹れたコーヒーの味も格別だ。非常に魅力あふれる抽出法ではあるが、こうした欠点もある。布フィルターはより美味しく抽出するために欠かせない道具だが、繰り返し使ううちに目が詰まったり汚れが落ちなくなったりするので交換が必要になる。とはいえこれも、美味しいサイフォンコーヒーを淹れるためには必要なことだ。むしろその魅力と比べれば欠点とはいえないだろう。
2. サイフォンコーヒーを淹れるのに必要な道具

魅力あふれるサイフォンコーヒーを、ぜひご家庭で楽しんでみてはいかがだろうか?必要な道具をまとめたので参考にしてほしい。
必要な道具
- サイフォン(ロート・フラスコ・スタンド・アルコールランプ)
- ろ過器
- 竹べら
- 布フィルター
- メジャースプーン
- キッチンタイマー
- ケトル
- コーヒー粉
サイフォンは一式セットで販売されていることがほとんどだ。アルコールランプ以外にハロゲン式、電気式、ガストーチといったヒーターもあるが、アルコールランプがもっともオシャレで、科学実験のような感じがワクワクする。ただし手軽さを重視したい方は電気式などがよいだろう。
ろ過器は布フィルターをセットして使う。また竹べらは、サイフォンコーヒーでもっとも重要といえる「撹拌(かくはん)」に、メジャースプーンはコーヒー粉を入れる際に使う。キッチンタイマーは1分が正確に計れるものを用意しよう。
ろ過器は布フィルターをセットして使う。また竹べらは、サイフォンコーヒーでもっとも重要といえる「撹拌(かくはん)」に、メジャースプーンはコーヒー粉を入れる際に使う。キッチンタイマーは1分が正確に計れるものを用意しよう。
コーヒー粉は何を選べばよい?
サイフォンで美味しいコーヒーを淹れるためには、豆の挽き方にもぜひこだわろう。ペーパードリップなどでは市販のグラニュー糖程度の「細中挽き」を使うことが多い。だがサイフォンコーヒーにおすすめなのは「中挽き」だ。グラニュー糖とザラメ糖の中間程度の粒の大きさなので覚えておこう。サイフォンのほか、布ドリップ(ネルドリップ)にも適している。
3. サイフォンコーヒーの淹れ方

ネット上ではさまざまなサイフォンコーヒーの淹れ方が紹介されており、また使用する道具などによってもやや異なる。そのためここでは基本的な淹れ方を紹介する。
1.ろ過器に布フィルターをセットする
布フィルターは流水でよく洗ってから固く絞り、そのままろ過器にセットしよう。その際、毛が立っている面を手のひら側に向けるのがポイントだ。また布フィルターの糸を引いてろ過器に取り付けるのだが、ここではしっかり引っぱることが重要である。緩んでいると蒸気が抜けうまく淹れられないので、きちんと引っぱり蝶結びで固定しよう。結び目を布フィルターの内部に入れ込めば完了だ。
2.お湯を沸かす
続いてケトルでお湯を沸かすのだが、お湯は抽出量の2割増しなので間違えないように気をつけてほしい。たとえば1杯あたりのコーヒー粉量12g、抽出量120mlであれば144ml(2杯分なら288ml)用意する必要がある。これは、コーヒー粉が2割を吸収するためだ。お湯が沸いたらカップに注いでおこう。
3.ろ過器をセットする
ろ過器の先端(チェーン部分)を下にしてロートの中に入れる。ロートの先からろ過器のチェーンが出てくるので引っぱり、フックをロートの先に引っかければOKだ。ろ過器がロートの中心からずれている場合は、竹べらなどを使って調整しよう。
4.フラスコをアルコールランプにセットする
スタンド(管)にフラスコを取り付け、アルコールランプの上にくるようにセッティングしよう。なお、フラスコはあらかじめお湯を通して温めておくとよい。ただし水滴が付いていると、加熱の際に割れるおそれがある。必ず水滴を拭き取っておこう。またアルコールランプは火加減の調節が難しいため、フラスコにあてる前に火加減を確認しておこう。
5.沸騰が確認できたらコーヒー粉を入れる
フラスコ内のお湯が沸騰しているのを確認したら、ロートにコーヒー粉を入れ、フラスコにセットしよう。アルコールランプでフラスコを加熱することにより、フラスコ内の蒸気圧が上がる。大気圧(1気圧)を超えると、気圧が低い上方、つまりロートに向かってお湯が移動する。そして、お湯とコーヒー粉が混ざるというわけだ。
6.撹拌する
お湯がロートに上がってくると同時にコーヒー粉も上がる。竹べらを使ってコーヒー粉にお湯を染み込ませるように沈めていこう。ここで1分のタイマーをスタートさせ、そのあとすべてのコーヒー粉にお湯が染み込むように竹べらで手早く撹拌しよう。上から「泡」「粉」「液体」の3層ができあがればうまく撹拌できた証拠だ。
7.火を止めて再度撹拌する
1分経ったら火を止め、竹べらで再度撹拌する。フラスコに早く落とすため「渦」を起こすようにグルグルと竹べらを回すのがポイントだ。ロートのコーヒーがフラスコにすべて落ちると布フィルターに泡だけが残る。これが完了の合図だ。ちなみに、フラスコにコーヒーがすべて落ちるまでの時間は50秒以内が理想とされている。
8.カップに注いだらサイフォンコーヒーの完成
ロートのコーヒーがすべてフラスコに落ちたら、ロートを取り外してフラスコからカップに注げばサイフォンコーヒーの完成だ。もちろん、最初にカップに注いだお湯は捨ててからというのをお忘れなく。手順は多いがコツさえ掴めば難しくはないので、ぜひチャレンジしてみてほしい。
4. サイフォンの洗い方

次回も美味しいサイフォンコーヒーを淹れるためにはお手入れも重要だ。というわけで、次はサイフォンの洗い方を解説する。
サイフォンの洗い方
- スタンドを手で持ち、フラスコを流水で冷やす
- スタンドからフラスコを取り外して洗う
- コーヒー粉を捨て、ロートを洗う
- 布フィルターを取り、ろ過器とともに洗う
- それぞれよくすすぎ、布フィルター以外を風通しのよい場所で完全に乾かす
- 布フィルターは水に浸し、次回使用時まで冷蔵庫または冷暗所で保管する
布フィルター以外は、台所用中性洗剤で洗おう。また先端にスポンジが付いた専用アイテムが販売されている。フラスコを洗う際などに便利なので持っておくとよいだろう。ちなみに、フラスコ内には油分が付着している。これをしっかり取り除いておかないと味が移るので気をつけよう。また布フィルターは乾燥させるとコーヒー成分が酸化し、いやなにおいの元になる。洗ったあとは水に浸して保管するとともに、その水はできるだけ毎日交換するように心がけよう。
5. おすすめのサイフォン3選

サイフォンコーヒーの魅力や淹れ方、洗い方などを解説してきた。最後に、おすすめのサイフォンを紹介する。自前のサイフォンで淹れたコーヒーはきっと格別な味がするはずだ。
ハリオ「テクニカ 3人用」
シンプルで使い勝手のよい、スタンダードモデルだ。サイフォンコーヒーが初心者の方にもおすすめできる。ただしアルコールランプ用のアルコールは付属していないのでご注意を。
Yama Glass「卓上コーヒーサイフォン 5カップ」
全体的にスタイリッシュなうえ、スタンドの特徴的なデザインもオシャレなサイフォン。インテリアとしても十分活躍してくれるだろう。
Diguo「二代目ベルギーコーヒーメーカー 横式 ゴールド」
クラシカルな雰囲気が好きな方にはこちらをおすすめする。レトロ感たっぷりの天秤型という、渋い見た目が特徴のサイフォンだ。ゴールドは高級感もある。
結論
まるで科学の実験のようでもあり、眺めているだけで楽しくなるのがサイフォンコーヒーだ。その特徴や原理を知り、ますます興味を持ったという方もいるかもしれない。道具を揃える費用はかかるが、コーヒー好きの方であればぜひ一度は試してみたい抽出方法だろう。