1. 鯛はなぜお祝いに使われる?

一般的に鯛と呼ばれるのは、タイ科の真鯛である。一方で、日本近海で捕れるタイ科に属する魚を鯛と呼ぶこともある。名前にタイと付く魚は200種類以上あるが、姿が真鯛に似ていることから名付けられた魚もあり、生物学上で真鯛とは程遠い種類もいる。
■鯛の縁起が良いとされる理由
お祝いで使われる鯛は主に真鯛であり、紅白の体の色は縁起が良いとされる。頭から尾まで丸ごと1匹を姿焼きや煮付けにすると、色合いが鮮やかで豪華なため食卓が華やぐ。見た目が華やかなほかに、語呂が「めでたい」と連想できることからも縁起が良いとされている。
■鯛の体が赤くなる理由
鯛の体の色が赤くなるのは、エビやカニをエサにしているからだ。エビやカニの殻にはアスタキサンチンという赤い色素が含まれ、たくさん食べることで鯛の体の色にも影響するといわれている。真鯛はいつも体が赤いわけではなく、産卵期など時期によって色が変化する。また、ことわざの「エビで鯛を釣る」は、わずかなお金や労力で大きな利益を得るたとえで、高級魚の鯛が安価なエビで釣れることが由来である。ことわざになるほど、鯛はエビが好きなのだ。
2. 子どもの成長を願った献立にも欠かせない

子どもが生まれて100日目に行なう「お食い初め」は、祝い膳を用意して箸で食べさせるマネをする。この儀式は、生まれた子が一生食べ物に困らないようにとの願いを込めて行なわれるのだ。地域によっては100日目ではなく、110日目、120日目に行なうこともある。
■お食い初めの献立
お食い初めの祝い膳は、一汁三菜を基本とする。祝い鯛、赤飯、すまし汁、煮物、香の物を用意し、歯固めの小石を添える。
- 鯛
縁起物。尾頭付きを用意し焼き魚にすることが多い。 - 赤飯
お祝いの席でよく使われる。赤い色が厄払いの力があると言われている。 - すまし汁
具は貝が使われ、とくにハマグリを使う。ハマグリは、貝合わせの遊びに使うように、同じ貝でないとピッタリと合わない。そのため、将来ピッタリと合う伴侶に出会えるようにとの願いが込められている。 - 煮物
昆布や六方剥きにした里芋など、お節料理などにも使われる縁起の良い食材が使われる。 - 香の物
さまざまな種類の漬物を使うが、シワができるまで長生きできるようにと、梅干しを使う場合もある。 - 歯固めの石
しっかりとした歯で食べ物を噛み、体が丈夫に育って欲しいとの願いが込められる。これはお食い初めのときに、子どもの歯が生え始めることが由来だといわれている。使い方は、子どもの口に歯固めの石を触れさせる。
3. 鯛の中には鯛がある!?

縁起の良い鯛を食べたら、「鯛の鯛(たいのたい)」を探してみてほしい。鯛の鯛と呼ばれるのは、骨の形が鯛に似ていることからきている。鯛の鯛は「鯛中鯛」とも書き、胸ビレの付け根にある骨のことだ。この骨は、ほかの魚にもあるが、胸ビレの発達の違いで、大きさや形が異なる。真鯛の骨は、とくに美しい形をしているため、珍重されているのだ。
■幸運のお守り
鯛の鯛は、江戸時代に縁起物として扱われてきた。身に着けると幸運がおとずれたり、金運をもたらしたりするとされる。金運を上げるために、骨をきれいに洗って財布の中へ入れることも少なくない。鯛の鯛は白く美しいが、時間が経つと変色してしまうことから、透明のマニキュアなどを塗ってコーティングする人もいるようだ。
■取り出し方
鯛を食べたら、必ず美しいままの鯛の鯛を取り出せるわけではなく、調理過程で折れてしまうこともある。また、焼き魚にすると骨と身が付いて離れないこともある。鯛の鯛を美しいまま取り出すには、煮付けがおすすめだ。胸ビレの付け根部分の身を、丁寧にほぐしていこう。細い部分もあるため、折れないように注意する。取り出した鯛の鯛は、汚れを水で洗い流して、水分を拭き取ろう。
結論
お祝いに使われる鯛は、真鯛がほとんどだ。真鯛の立派な姿形、紅白の色、めでたいの語呂から、昔から縁起が良い魚だといわれてきた。子どもが一生食べるものに困らないように願う、お食い初めにも欠かせない。また、煮付けにした場合は、ぜひ鯛の鯛を探してみてほしい。