1. 牛脂の特徴

スーパーの精肉コーナーには、個包装された約3cm角の白い脂肪の塊が置いてある。これが牛脂であり、別名ヘットと呼ばれている。無料で配布されていることがほとんどで、スキヤキやビーフステーキなどを焼くときに使う。
■融点は高い
牛脂は、常温で固体の白または黄色の脂肪だ。牛脂が融ける温度は、和牛、輸入牛など品種によって異なり、平均的には40~50℃である。牛脂は、牛の脂肪を加熱処理し、そこから搾って製造される。店頭では無料で配布されているが、松阪牛などの高級肉の牛脂は、瓶詰めなどで売られている。フライパンや鍋に挽く油として使うほかに、固形のカレールウなどの加工品にも使われている。
■食用以外の用途
牛脂は食用としてだけでなく、せっけん、ろうそくなどの原料となっている。牛脂は融ける温度が高いため、牛脂100%のせっけんは少ない。そのため、牛脂よりも低温で融けるヤシ油などを混ぜて洗顔などに使いやすくしている。
2. 和牛の旨味は脂肪にある

一般的によく食べられている肉は、牛、豚、鶏だ。これらの赤身肉を加熱すると、共通した肉の香りがあるといわれている。
例えば、薄切りにした牛と豚の赤身肉は、目を閉じて食べると間違えることもあるのだ。その一方で脂肪は、動物の種類で区別しやすくなっている。
例えば、薄切りにした牛と豚の赤身肉は、目を閉じて食べると間違えることもあるのだ。その一方で脂肪は、動物の種類で区別しやすくなっている。
■和牛の脂肪の独特の香り
牛は品種やエサ、育つ環境などによって味わいが異なる。とくに和牛と外国産の牛では、味わいの違いが研究され、和牛の脂肪には独特の「和牛香(わぎゅうこう)」が確認されている。和牛香は、果物のモモやココナッツのような甘い香りだ。この香りは、肉を加熱することによって発生するラクトン類である。スキヤキでは、鍋に牛脂を引いて肉を焼くことで和牛香が発生し、甘味、旨味、コクのある味わいとなる。
■香りを最大限に楽しめる温度
和牛香のラクトン類の香りは、80℃の温度で最大限引き出される。スキヤキを作るときの温度も80℃前後が美味しく作れると言われており、スキヤキの旨味は牛脂の和牛香が関わっているといえる。和牛香を活かすために、スーパーなどの店頭に並んでいる無料の牛脂を取り忘れないようにしよう。無料の牛脂は和牛が多いが、万が一外国産の牛脂だと和牛香を活かしたスキヤキに仕上がらないため、確認するのがおすすめだ。
3. 牛脂で牛肉料理の仕上がりアップ

スキヤキは、2通りの作り方がある。肉を焼いてから調味料を分けて加える方法と、ダシや醤油などを混ぜた割り下を作って加える方法だ。どちらの作り方も、すき焼き鍋に牛脂を引いて牛肉を焼いてから調味料や割り下を加える。
■赤身肉も香りと旨味がよくなる
スキヤキ肉には、霜降りの入った牛肉が好まれる傾向がある。和牛の風味は、和牛香の要素も大きいことから、脂肪分の多い霜降りは香りもコクも良い。霜降りの脂肪の多さが苦手な人は、赤身肉を使うこともあるだろう。赤身肉は、肉質がしっかりとしていて食べごたえのある食感が特色だ。しかし、和牛香をあまり感じられないため、和牛の牛脂を引いて赤身肉を焼くと甘味やコクがアップする。
■牛肉料理には牛脂がおすすめ
牛脂とともに肉を加熱することで起こる和牛香は、スキヤキ以外にも牛丼、牛肉チャーハン、ステーキなどにもおすすめだ。肉を炒めるときに使うと風味がアップする。一方で、使いすぎると油っぽさなどを感じるため適度に使おう。
結論
スキヤキを作るときは、牛脂を忘れずに用意したい。そのときは、和牛の牛脂かを確認しよう。脂肪の少ない赤身肉も、果物のような香りがする和牛香が加わり、味わい深くなる。そのほかの牛肉料理も牛脂を活用することで、旨味やコクがアップするのでおすすめだ。