1. そもそも高野豆腐とは
茶色くてカチカチ、水で戻すとスポンジのように膨らむ不思議な高野豆腐。原料はもちろん豆腐なのだが、誕生するまでなかなか複雑な歴史をもっている。
発祥はふたとおり
「高野豆腐」という字のとおり、高野山の僧侶たちが作っていた「凍り豆腐」が由来との説が濃厚だ。800年も昔の鎌倉時代には作られており、精進料理の豆腐が凍ってしまってそれを溶かして食べたのが始まりだという。東北や長野でも鎌倉時代から冬場の食材として作られており、こちらは吊るしておくうちに自然乾燥される。名称は「凍(し)み豆腐」だった。
各地で違う呼び名
高野山の凍り豆腐は一度凍らせた豆腐にお湯をかけ、水を絞って乾燥させる製法になった。名称も高野豆腐となり、貴重なたんぱく源として全国へ広がっていく。東北では自然凍結と自然解凍によって作られており、各地で「一夜凍り」「凍(し)み豆腐」「連豆腐」「ちはや豆腐」とさまざまな呼び名で愛された。人工冷凍法も確立し、肉食できない人たちには良質なたんぱく質として重宝されてきたのだ。
2. 豊富な栄養
もともと「畑の肉」とよばれる大豆製品の豆腐であるため、素晴らしい栄養価を誇る。普通の豆腐より保存性も高いため、食事に気軽にたんぱく質を加えることができる。
アミノ酸の宝庫
栄養素の半分が良質な植物性たんぱく質だ。カルシウムや鉄分も含まれているので、「体をつくる働き」が強く、子供にはぜひ食べさせたい。
レジスタントたんぱくの秘密
実は、高野豆腐のたんぱく質は約3割が「レジスタントたんぱく」だ。これはたんぱく質の中でも消化されにくい性質の、まるで食物繊維のような働きをするたんぱく質である。お腹の調子を整えるために役立つといわれている。
3. 煮物だけじゃない?上手な戻し方
上手に戻した高野豆腐は芯までフワッとしているし、出汁がしみて美味しい。さらに煮物以外にも利用できる。さまざまなレシピで使ってみよう。
基本の戻し方
高野豆腐は、50度くらいのお湯で戻すのがベスト。10分ほど浸してよく水気を絞って使おう。落とし蓋をしたり、上下をひっくり返すとむらなく戻すことができる。もし時間がないようなら熱湯5分でも可能だが、水気を絞る時はやけどに注意すること。また、高野豆腐独特の乾物臭は、絞った水が透明になるまで3~4回繰り返し絞ることで、臭いがかなり抜けて味しみもよくなる。
炒める、揚げる、焼くのもおすすめ
しっかり水気を絞った高野豆腐は、ほかの具と炒めると美味しい。周囲のタレや味付けを吸い込むので美味しさ倍増だ。ひとくち大にカットして粉類をまぶせば揚げて楽しむことができる。チーズや調味料をかけて焼けば、グラタンの具としても絶品だ。
すりおろして使う
水で戻す前の硬い状態のままおろし金ですりおろしてみよう。フワフワした粉状の高野豆腐が出来上がりだ。手軽にたんぱく質を補給できるし、小麦粉と混ぜれば炭水化物のカットにもなる。ハンバーグやつみれの、つなぎとして使うことが可能だ。
結論
高野豆腐独特の乾物臭が苦手な人も多いが、どうやら戻し方に原因があるようだ。絞り汁が透明になるまでくりかえし絞ってみよう。臭いがしっかり処理できれば煮物だけでなく洋食や中華にも使える。ぜひ、いつもと違う食べ方に挑戦してほしい。