1. クッキーとビスケットの違いは何?
そもそも、クッキーとビスケットにはどのような違いがあるのだろうか。改めて考えてみると、うまく説明できないという人がほとんどではないだろうか。
クッキーとビスケットは実は同じもの!
クッキーとビスケットは、安価・高価などのイメージの違いはあるものの、基本的には同じものを指す。しかし、同じものであることを知っている人は少なくないだろう。たとえばNHKのテレビ番組「チコちゃんに叱られる」でも「チコちゃん、ビスケットとクッキーの違いを教えて!」というテーマが取り扱われたことがある。多くの人にとって、ビスケットとクッキーはなんとなく別物というイメージで留まっているのだ。
クッキーとビスケットの2つの呼び名が使われる理由
それではなぜ、日本ではクッキーとビスケットをなんとなく使い分けているのだろうか。その理由は伝わってきたタイミングにある。
もともと西洋文化が入ってきた幕末頃から携帯食として広まったのがビスケット。クッキーという言葉が使われるようになったのは、アメリカ文化が入ってきた戦後のことである。当時クッキーは、ビスケットに比べて高級品というイメージだった。
もともと西洋文化が入ってきた幕末頃から携帯食として広まったのがビスケット。クッキーという言葉が使われるようになったのは、アメリカ文化が入ってきた戦後のことである。当時クッキーは、ビスケットに比べて高級品というイメージだった。
クッキーと呼ぶには決まりがある
しかし、糖分と脂肪分の合計が40%以上含まれていて手作り感のある外観をもつものをクッキーと呼ぶという定義も存在する。1971年、全国ビスケット協会により「ビスケット類の表示に関する公正競争規約及び同施行規則」(※)が作られたのだ。スーパーなどで売られている大手メーカーの商品はこの決まりに従って区別している傾向にある。規約ができた当時はクッキーに高級品というイメージがあったため、安物のビスケットにクッキーという名称を使用すると、消費者に誤認させてしまうおそれがあった。それを避けるために規約を作ったのだ。ただし、国が定めた決まりではないため、小さな洋菓子店などでは、区別せず使っていても問題はない。
クッキーとビスケットの見た目の違い
全国ビスケット協会の規約によると、ビスケットのなかでもクッキーに関しては「手づくり風の外観(※)」をもつことが求められている。ただし、成型の仕方など製法に細かい決まりはない。そのため、見た目が手作り風であればクッキー、機械で大量生産されたような形状であればビスケットというように判断すればよいだろう。
2. クッキーやビスケットとクラッカーやサブレの違いは?
クッキーはビスケットの一種であることがわかったが、日本で食べられている焼き菓子としては、ほかにもクラッカー、サブレなどさまざまな名称のものがある。ビスケットやクッキーの仲間なのか、それとも別物なのか、それぞれの特徴を踏まえながら見ていこう。
クラッカーとの違い
軽い口あたりで、塩味やチーズ味、ゴマ、スパイスなど、甘くない味のものが多い。通常、イーストで発酵させた生地を短時間で焼き上げて作られる。一方、ビスケットやクッキーにはイーストや酵素が使用されないのが一般的だ。規約(※)ではビスケット類に含まれるが、ビスケットやクッキーとは別の種類の食品である。
サブレとの違い
バターたっぷりでサクッとした軽さが特徴の、フランス発祥の焼き菓子である。ホロホロと溶けるような食感から、フランス語で「砂」という意味をもつ。ベーキングパウダーを使わずに作られる。バターが多く含まれるだけでなく、一般的にビスケットやクッキーよりも小麦粉の量が少ない。
スコーンとの違い
日本のビスケットやクッキーとは異なり、パンの一種である。スコットランド発祥で、イギリスのアフタヌーンティーでは欠かせない。外側はザクッとした食感で、なかはしっとりとしている。日本のビスケットとはまったく異なる食べ物だが、後述するアメリカのビスケットとはよく似た特徴をもつ。
ショートブレッドとの違い
スコットランド発祥の焼き菓子で、原材料が小麦粉、砂糖、バター、塩のみとシンプルなのが特徴である。一般的にビスケットやクッキーには卵が使用されるが、ショートブレッドは卵不使用という点が大きな違いだ。
3. 外国のクッキーとビスケットの違い
ビスケット(biscuit)もクッキー(cookie)も英語である。では、英語圏のイギリス、アメリカではどのように区別されているのだろうか。
イギリスのクッキーとビスケットの違い
「ビスケット」はイギリスでの呼び方で、小麦粉で作られたお菓子の総称となっている。ラテン語で「2度焼かれたもの」という意味のbis coctusが語源だ。航海や遠征用の保存食として2度焼かれたパンを用意したことが由来である。また、イギリスにはクッキーという言葉自体が存在しないため、クッキーもビスケットと呼ばれる。ちなみにイギリスでよく食べられているスコーン(scone)は、現地や発祥地であるスコットランドでは「スコン」という発音が一般的だ。
アメリカのクッキーとビスケットの違い
「クッキー」はアメリカでの呼び方で、小麦粉を使用したサクッとした焼き菓子の総称として用いられている。オランダ語で「小さな焼き菓子」という意味のkoekjeが語源だ。渡米したオランダ人がkoekjeを作り販売したところ、アメリカ全土に広まったことがクッキー誕生の由来である。ちなみにビスケットは、アメリカでは柔らかいパンのことを指す。そのため、イギリスで食べられているスコーンも、アメリカではビスケットと呼ばれる。
4. ほかにもいろいろ!クッキーとビスケットの種類や違い
日本で販売されているクッキーやビスケットは、もっと細かく見ていくとさまざまな種類があることがわかる。そこで、クッキーに含まれるもの、クッキーを除いたビスケットに含まれるものに分けて、代表的な種類を見ていこう。
クッキーの種類と違い
まずはクッキーの代表的な種類を紹介しよう。
- ラングドシャ
フランス語で「猫の舌」の意味。ホロホロとした食感が人気の焼き菓子だ。誕生当時は、アイスクリームの口休めとして食べられていたとか。 - シガレット
ラングドシャと同じ生地を筒状にしたもの。ラングドシャよりも薄いため、サクサクとしている。巻きタバコに似ていることから、名づけられた。 - アイスボックス
冷蔵庫で生地を寝かせる工程が入るものをこう呼ぶ。柔らかめの生地を冷蔵庫で寝かせることで固くし、焼く直前にカットして並べる。 - ドロップクッキー
生地をスプーンですくい、天板に落として焼くクッキーのこと。手軽に作ることができ、手作り感のある見た目に仕上がる。
ビスケットの種類と違い
次にビスケットの種類を見ていこう。
- ハードビスケット
パリッとした歯ごたえと、焼く際の火ぶくれを防ぐための針穴が特徴。グルテンの多い中力小麦粉が使われ、水分を多めにコシの強い生地で作られる。 - ソフトビスケット
柔らかくさっくりとした口あたりが特徴。グルテンの少ない薄力小麦粉が使われ、砂糖や脂肪分が多く水分少なめの生地で作られる。 - プレッツェル
スティック状に成型したものをアルカリ性の湯に通してから焼かれる。そうすることで、美味しそうな光沢と風味が生まれる。 - 乾パン
保存食としてもおなじみ。発酵した生地を高温高湿の環境で再発酵させて焼き上げる。
結論
なんとなくのイメージで区別していたクッキーとビスケットだが、その違いや種類を見てみると、そのイメージはあながち間違ってはいなかったことがわかる。スーパーへ行ったら、ちょっと注意してパッケージの名称を見てみよう。
(参考文献)
※出典:一般社団法人全国ビスケット協会「ビスケット類の表示に関する公正競争規約及び同施行規則」
https://www.biscuit.or.jp/summary/data/hyoji.pdf
※出典:一般社団法人全国ビスケット協会「ビスケット類の表示に関する公正競争規約及び同施行規則」
https://www.biscuit.or.jp/summary/data/hyoji.pdf