1. 人に都合のいい野菜

今現在スーパーで目にする野菜はほぼ全て、F1種=ハイブリッド種の野菜だ。大きさが均等で、形も味も質も画一的に仕上がっている。
「固定種」が野菜本来の姿
今でも地元でしか採れない郷土野菜がある地域がある。それが「固定種」だ。代々その土地で栽培が繰り返され、その土地に合った質に進化した野菜で、農家が栽培と種の保存、種まきを繰り返している。京野菜などはそのいい例だろう。味が濃く美味しく、たくましく育つ。しかし、あくまで天然ものなので、年によって収穫量や味に差が出る。収穫時期がばらつき、大きさや形も当然不ぞろいになるのが特徴だ。
ハイブリッド種の登場
人の手が入ることで、人に都合のいい野菜を作る。これが「ハイブリッド種(F1種)」である。例えば美味しいが寒さに弱い品種と、味はいまひとつだけれど寒さに強い品種を掛け合わせて、優性遺伝で出てくる「美味しくて寒さに強い」という都合がいい特質の野菜を作るのだ。品質や大きさも想定内の画一的な野菜が収穫できる。
2. ハイブリッド種の何が問題なの?

都合がいい野菜は本当に便利だ。現にスーパーに並ぶほとんどの野菜がハイブリッド種になっている。しかし、ハイブリッド種にも問題点がある。
二代目以降にメリットがなくなる
ハイブリッド種はあくまで優性遺伝で都合のいい性質を利用しているため、二代目以降、種を収穫しても、その性質が受け継がれない。劣性遺伝が表に出て、人に都合がいい性質だけでなくさまざまな特性が表面化し、品質にばらつきが出てしまうのだ。また、天然の作物ではないので育成速度や丈夫な性質は期待できない。農家は種の収穫はせず、毎年種苗問屋からハイブリッド種の新たな種を化学肥料と農薬とセットで購入することになる。
本来なら絶滅する種ばかりが残っていく
ハイブリッド種は自然受粉できない。このため、かつては人の手で一つひとつの花から雄しべを除去し、大変な手間がかかっていた。しかし、雄しべに受粉能力がないハイブリッド種に人工授粉すると、次の代にも受粉能力のない個体が出来ることが発見された。このため、自然界に放置すれば絶滅するはずの種がハイブリッド種のために人工授粉で保存され、拡大していった。安定した遺伝子を持つ固定種は栽培も流通もされず消滅していく。この流れが自然の摂理から外れているため、問題視する声が上がっている。
3. 究極の「遺伝子組み換え野菜」とは

ハイブリッド種は自然界に存在する種同士の掛け合わせだが、さらにDNAを組み替えることで本来地球上に存在しない植物が誕生した。それが「遺伝子組み換え野菜」である。
大量生産が可能になる夢の野菜
主に大量生産が期待される大豆、とうもろこしに多い「遺伝子組み換え野菜」。除草剤に強力な耐性を持つ微生物の遺伝子を組み合わせ、除草剤を大量に使っても枯れない大豆を作ったり、病害虫の幼虫が食べると死んでしまう毒素を作り出すとうもろこしなどが作り出された。
問題点も多い
遺伝子組み換え野菜は人工的に作られているためすべて同じ遺伝子なので、適性のない病害虫にやられると絶滅する恐れがある。
大量生産に伴う農家への負担や、農薬と化学肥料の過剰投与による環境汚染も心配されている。本来あるはずのない遺伝子の食品を口にすることで、健康被害を心配する声もあるのだが、長期的な結果がまだ分からないため未知数と言えるだろう。
大量生産に伴う農家への負担や、農薬と化学肥料の過剰投与による環境汚染も心配されている。本来あるはずのない遺伝子の食品を口にすることで、健康被害を心配する声もあるのだが、長期的な結果がまだ分からないため未知数と言えるだろう。
結論
消費者も販売者も、同一価格がつけられる同じようなサイズと見た目の野菜に慣れているが、実はそれは野菜本来の姿ではない。
もし固定種を目にする機会があったらぜひ購入して食べてみよう。家庭菜園で実際に栽培して、不ぞろいになる様子を体感してみてもいいかもしれない。
もし固定種を目にする機会があったらぜひ購入して食べてみよう。家庭菜園で実際に栽培して、不ぞろいになる様子を体感してみてもいいかもしれない。