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初物で寿命が伸びる?意味や初物七十五日の由来を紹介

初物で寿命が伸びる?意味や初物七十五日の由来を紹介

投稿者:オリーブオイルをひとまわし編集部

監修者:管理栄養士 岩切千晃(いわきりちあき)

鉛筆アイコン 2021年7月30日

四季のある日本では、季節によって流通する食材が変わる。それに関係して伝わってきた食文化が、「初物」だ。初物を好んで食べる人も多いだろう。しかし、その一方で初物がどのような意味なのか、明確に説明できないという人も少なくないようだ。そこで本記事では、初物の意味や言い伝えなどについて解説していく。

  

1. 初物ってどんな意味?食べると寿命が延びる?

初物という言葉を聞いたことはあるが、正確な意味はよくわからないという人は少なくない。旬との違いや、初物にまつわることわざなどを含め、初物の意味をまずは確認していこう。

初物の意味と旬との違い

四季折々の食材を大切にしてきた日本人。初物とは、その季節に初めて収穫や漁獲された食材のことだ。食材が新鮮で美味しい時期を指す「旬」のはしりに出始める食材ともいえる。
この初物と呼ばれる、食材の出始めにあたるものは昔から希少性が高いため、高値で取引されてきた。これだけ食材の流通が整備された現代でも、スーパーや市場で初物というキーワードを使って販売しているのを見かけることができる。
初物より少し時期が進んだもののほうが収穫量も増えて値段も落ち着き、さらに味も優れているため「最旬」などといわれることも多い。しかし、初物にはその年最初に口にするという意味でのありがたみもあり、惹かれる人も少なくないのではないだろうか。

初物で長生き?ことわざ「初物七十五日」の意味

初物は縁起がよく、食べると寿命が75日増えるなどという言い伝えもあり、「初物七十五日」ということわざになっているほどだ。この言い伝えの由来は、江戸時代のあるエピソードだという。死刑囚が刑を執行される前に食べたいものを聞かれ、少しでも長生きするためにその時期になかった食べ物を望んだという話だ。初物が出るまで通常よりも75日多く生きたという一説があるのだ。75日という日数の由来に関しては、ほかの説もある。有名なのは、中国から伝わった「五行思想」だ。一年を5つの季節で割るため、75日ごとに季節が巡るのである。また、植物の種まきから収穫までの日数が約75日であることも一説として挙げられる。

英語で初物は何という?

初物を英訳すると、「first products」や「first-fruits」などと表現されることが多い。初物は日本特有の文化というイメージがもたれやすい。たとえば、イタリアの初物オリーブオイルや、フランスのボジョレーヌーボーなども、同様の慣習といえるだろう。

2. 初物を食べて笑う時の方角

初物を食べるときは、笑いながら食べると福がやってくるという言い伝えもある。さらに、地域によって異なる方角を向いて食べるそうだ。西を向く地域、東を向く地域に大きく分かれるが、どの地域がどの方角なのか理由とともに見ていこう。

西を向いて笑って食べる

西を向いて食べるのは、江戸(東京)やそれよりも東の地域で暮らす人々だ。福を呼ぶための縁起担ぎのほかに、二つの理由があったという。西方の極楽浄土のほうを向くことで、阿弥陀様に感謝を表すという理由が一つだ。そしてもう一つは、関西の人々より先に初物を食べたという自慢である。

東を向いて笑って食べる

東を向くのは、大阪や京都など関西の人々だ。縁起担ぎとともに、日の出の方角である東を向くことで日々の恵みへの感謝が込められていたそうだ。そして、西を向く江戸の人々と同様に、自分たちが先に初物を食べたという自慢も東を向く理由の一つだという。東と西とで、互いに自慢し合いながら初物を食べるというのは、何ともユニークな風習ではないだろうか。

3. 初物四天王に注目しよう

いまでこそ冷凍技術の発達などでありがたみを失いつつある初物だが、昔から初物四天王としてとくに重宝されていた4つの食材をご存知だろうか?

初物四天王その1:鰹

まず1つめは鰹。鰹の旬は年に二度、春と秋にあるが、なかでも初鰹と呼ばれる春先のものは昔から希少価値が高く、大枚をはたいて購入していた人もいたようだ。魚はとくに、旬によって味が左右されるため、いまでも旬を意識する人が少なくないのではないだろうか。

初物四天王その2:鮭

同じく魚で四天王に君臨していたのが鮭。秋の味覚として人気があった鮭は秋口になると初物が出回り楽しまれていた。鮭はとくに、最近では冷凍ものや海外産が年中安定して供給されるため、旬を意識しなくなっている食材の代表といえる。

初物四天王その3:松茸

現代でも初物に価値が付くものとして挙げられる松茸も四天王の一角。こちらは秋の味覚としても納得の存在感で、初きのことして秋口に楽しまれていた。高級食材として知られるが、初物はまた特別である。料理人などを中心に、毎年初物の松茸を待ち望んでいる人は多く、市場でも競りにかけられるなど需要が高まる。

初物四天王その4:なす

逆に現代の感覚からするとあまりありがたみのない四天王がなす。初なすと聞いてもピンとこないところだが、「一富士 二鷹 三なすび」のことわざに表れているように、なすは昔の人にとっては非常に縁起のよい食べ物として扱われていた。そのため、なす農家は栽培技術を研究することでより早く市場へ流通させ、付加価値を高めようと躍起になっていたそうだ。

4. 現代人が好む初物の種類

初物四天王のほかにも、日本では季節ごとにさまざまな食品が初物として取り扱われている。とくに、現代において人気を集めている初物を紹介しよう。

さんまやたけのこ・スイカの初物も人気

魚の初物といえば四天王でもある鰹や鮭が有名だが、さんまも負けていない。初物のさんまは高価だが、刺し網漁で獲られるためはがれたうろこを飲み込まないことから、はらわたまで美味しく食べられるのだ。また、たけのこも旬のはしりには高値で取引される。果物ではメロンやスイカの初物の人気が高く、お中元などの贈答品の定番にもなっている。新そば、新茶なども初物として重宝されている食品だ。

ワインの初物も人気が高い

ワインの初物といえば、フランスのボジョレーヌーボーが有名だ。毎年11月の第3木曜日に解禁され、日本にも輸入される。解禁日を待つ必要があるという特別感が、初物好きの日本人からも人気を集める理由にもなっているのだ。また、その年に穫れたブドウでつくられるボジョレーヌーボーは、ほかのワインと比べて短時間で発酵させる必要がある。そのため炭酸ガスを入れる特殊な製法を用いられる点も、人気の理由だろう。

5. 初物の人気は江戸時代がピーク

さきほど紹介した初物四天王をはじめ、初物という文化はとくに江戸時代においてもてはやされていた。縁起のよいものを食べることや、粋なお金の使い方を重んじた江戸時代の人らしい感性といえなくもないが、初物四天王以外にも、お茶、わらび、たけのこ、かぼちゃ、びわ、みかん、酒など、初物が意識されていた食品はたくさんあったようだ。そんななかで競争はしだいに過熱していき、しまいには行き過ぎた価格高騰に対して規制がかかる事態にまで発展したのだとか。
その後、初物ブームは落ち着き、時代が変わって現代に近づくにつれ、生産技術や冷凍技術といったものの進化や食生活の多様化によって初物のありがたみが薄れていったというわけだ。

6. 終わり初物も初物と同じく珍重される

初物は出始め(はしり)の時期のものを指すが、旬のピーク(盛り)が過ぎるころのものは、「終わり初物」と呼ばれる。同じ旬の食べ物でも、フレッシュな初物とは異なり、成熟し甘みや深みが増すことから、違った美味しさを楽しめる。また、旬が終わり手に入りにくくなる直前の時期でもあるため、食べ納めという意味を込めて重宝されるのだ。このように、味の変化と特別感を楽しめる終わり初物は名残(なごり)ともいわれ、初物好きと同様に人気を集めているのである。

結論

初物はその時期ならではの美味しさを楽しめるという魅力はもちろんあるが、特別感を味わいたい思いや、言い伝えを守りたいという日本人ならではの心情も重宝される理由といえるだろう。初物だけでなく、終わり初物を含む旬の食べ物を楽しみながら、季節の移り変わりを感じる文化をぜひ大切にしたいものである。
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  • 公開日:

    2018年8月23日

  • 更新日:

    2021年7月30日

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