1. 山芋とは?
栄養豊富で滋味あふれる山芋。すりおろしたとろろや短冊、漬け物など、芋類の中で唯一、生で食べることができる点も手軽で魅力だ。とくに、麦飯に出汁のきいたとろろをトローリとかけると、喉ごしよく、つい何杯もおかわりをしてしまう。また、マグロのやまかけやとろろそばなども、山芋の美味しさを存分に堪能できるメニューといえる。
山芋の種類
山芋というと、一般的に細長い長芋を思い浮かべるが、ほかにもさまざまな形と種類がある。たとえば、銀杏芋。扁平な形をしていて、別名「手芋」。長芋よりも粘りがやや強い。また、自然薯は、長芋よりも細くて長いが、すりおろすと粘りがとても強い。大和芋はつくね芋の仲間で、人間の手のこぶしのようなゴツゴツした形をしている。こちらも粘りがとても強い。
2. 山芋のカロリーと糖質
多種類の山芋それぞれのカロリーと糖質量は一体どのくらいだろうか。どの種類を選ぶか参考にしてみてほしい。
種類別にみる山芋のカロリーと糖質
では、これらの種類別に100g当たりのカロリーと糖質量を見てみよう。また、1本の可食部が600gの場合のカロリーと糖質もあわせて確認しよう。
(以下はカロリー、糖質量の順。以下同じ)
(以下はカロリー、糖質量の順。以下同じ)
- 長芋(生)64kcal、14.1g(1本:384kcal、84.6g)(※1)
- 銀杏芋(生)108kcal、23.6g(1本:648kcal、141.6g)(※2)
- 自然薯(生)118kcal、25.7g(1本:708kcal、154.2g)(※3)
- 大和芋(生)119kcal、26.9g(1本:714kcal、161.4g)(※4)
長芋が最も低カロリー!
数字を見ると、長芋以外はカロリーも糖質量も高く、それぞれ長芋の約2倍になっている。いずれも水分量が少なく粘りも強いので、栄養がみっちり詰まっているイメージだろうか。まさに天然の滋養強壮剤だ。
芋類なので全体的に糖質量が高いが、50gも食べれば十分に栄養を摂ることができる。胃の粘膜を保護し、でんぷんを分解する酵素が含まれるため、疲れた時などには積極的に食べて、体力を取り戻したい。
芋類なので全体的に糖質量が高いが、50gも食べれば十分に栄養を摂ることができる。胃の粘膜を保護し、でんぷんを分解する酵素が含まれるため、疲れた時などには積極的に食べて、体力を取り戻したい。
3. 長芋の栄養成分
次は栄養成分を見ていこう。山芋の中でも定番の長芋に着目して紹介していく。
長芋の栄養
長芋には多くの栄養分が含まれている。カリウム、ビタミンB群、食物繊維、たんぱく質など種類が豊富だ。それぞれ100gの長芋の含有量と、どのような働きをするのかを知って、長芋の栄養がどれだけ高く健康に効果的なのかを知ろう。
カリウム(※5)
含有量は430mgだ。ミネラルの一種であるカリウムは、塩分の摂りすぎを調節してくれる作用がある。不足すると脱力感や不整脈に繋がることもあるため、健康を維持するために必要な栄養素だ。
ビタミンB群(※6)
ビタミンB群は、ビタミンB1が0.1mg、ビタミンB2が0.02mg、ビタミンB6が0.09mg含まれている。さらにナイアシン0.4mg、葉酸8ug、ビオチン2.2ugも含まれる。水溶性のビタミンで、体内の代謝に必要な酵素の働きを補う。体液や血液中にあるもので、摂りすぎの場合は尿として排泄される。しかし、体内で作り出すことはできないので食事から摂取しなければならない栄養素だ。
食物繊維(※7)
水溶性、不溶性合わせて1g含まれている。食物繊維は便通を整える働きがある。脂質や糖質などの摂りすぎを防ぐ作用もあり、高血圧や肥満の抑制にも効果的とされている。
たんぱく質(※8)
含有量は2.2gである。筋肉や皮膚、髪の毛などをつくる栄養素である。ホルモンや抗体などの体調節機能にも関係してくる。欠乏症になると体力や免疫機能が低下してしまうので注意が必要だ。
ぬめり成分
胃の粘膜を守ってくれる作用があり、消化にも優れている。
4. 山芋が生でも食べられる理由とは?
なぜ芋類である山芋が生で食べることができるのか知っているだろうか。山芋に含まれるアミラーゼ(ジアスターゼともいう)(※9)はでんぷんの分解酵素である。その成分がでんぷんを分解してくれることによって、胃にもたれずに生で食べることができるのだ。このアミラーゼはすりおろすとより活発に働き、加熱すると壊れてしまうため、山芋はとろろで食べることがおすすめだ。
5. 長芋の栄養やカロリーは調理で変化する?
山芋類は生で食べることができるのが魅力の一つだが、もちろん、加熱しても旨い。生で食べるとシャキシャキした歯ごたえだが、熱を通すとサクサクとホクホクのちょうど中間くらいの食感になる。
調理による長芋のカロリーの変化
- 長芋(生)[65kcal、14.1g](※1)
- 長芋(水煮)[58kcal、12.9g](※10)
生の場合と、火を通した場合のカロリーと糖質量を比較してみよう。生のほうがカロリーも糖質量も若干高くなるが、それほど違いはないようだ。
加熱によって栄養成分は変化する?
山芋は生で食べるほうが栄養を逃さず食べられるというが、その一方で火を通すと何が問題なのかというと、山芋に含まれている消化酵素が熱を加えることで弱くなってしまうからだ。山芋は輪切りにしてステーキにして味わったり、揚げ物にしたり、火を使った調理法も多くあるが、加熱すると山芋のもつ消化酵素による効果が弱くなることを覚えておこう。
6. 山芋には減量効果もある?
山芋は多くの栄養を含んでいるため体重減少効果が期待できる食材でもあるようだ。とくに身体の健康を意識している人が気になる、食物繊維やビタミンも豊富に含んでいるので、カロリーを抑えながら栄養を摂取できる優れた食材なのだ。また、山芋は腹持ちもいいので体重制限中の食事に取り入れれば、少ない量でも満腹感を得られやすい。さらに山芋のネバネバの成分は余分なコレステロールを体外に排出する効果もあるといわれており、健康的に体重減少を叶えたい人の食生活をサポートしてくれることだろう。また、山芋は生のままで食べることができるので、手軽に取り入れられる食材なのだ。
結論
山芋の歴史は古く、米が栽培されるよりも前の縄文時代から食べられていたそうだ。滋養強壮の薬代わりに用いられてきた歴史もある。生のままで食べることができて、手軽に取り入れやすい食品である。糖質量はやや高めだが、疲れがたまった時や仕事でここ一番の踏ん張り時などに、ぜひ食べておきたい食材だ。
(参考文献)
※1
運営元:文部科学省
該当ページ名:いも及びでん粉類/<いも類>/(やまのいも類)/ながいも/ながいも/塊根/生 - 一般成分-無機質-ビタミン類-アミノ酸-脂肪酸-炭水化物-有機酸等
URL:https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=2_02023_7
※2
運営元:文部科学省
該当ページ名:いも及びでん粉類/<いも類>/(やまのいも類)/ながいも/いちょういも/塊根/生 - 一般成分-無機質-ビタミン類-アミノ酸-脂肪酸-炭水化物-有機酸等
URL:https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=2_02022_7
※3
運営元:文部科学省
該当ページ名:いも及びでん粉類/<いも類>/(やまのいも類)/じねんじょ/塊根/生 - 一般成分-無機質-ビタミン類-アミノ酸-脂肪酸-炭水化物-有機酸等
URL:https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=2_02026_7
※4
運営元:文部科学省
該当ページ名:いも及びでん粉類/<いも類>/(やまのいも類)/ながいも/やまといも/塊根/生 - 一般成分-無機質-ビタミン類-アミノ酸-脂肪酸-炭水化物-有機酸等
URL:https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=2_02025_7
※5
運営元:厚生労働省
該当ページ名:カリウム | e-ヘルスネット(厚生労働省)
URL:https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-005.html
※6
運営元:厚生労働省
該当ページ名:ビタミン | e-ヘルスネット(厚生労働省)
URL:https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-027.html
※7
運営元:厚生労働省
該当ページ名:食物繊維 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
URL:https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-016.html
※8
運営元:厚生労働省
該当ページ名:たんぱく質 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
URL:https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-044.html
※9
運営元:北陸農政局
該当ページ名:今月の園芸特産作物:12月 山芋(ながいも・加賀丸いも等):北陸農政局
URL:https://www.maff.go.jp/hokuriku/seisan/engei/tokusan201912.html
※10
運営元:文部科学省
該当ページ名:いも及びでん粉類/<いも類>/(やまのいも類)/ながいも/ながいも/塊根/水煮 - 一般成分-無機質-ビタミン類-アミノ酸-脂肪酸-炭水化物-有機酸等
URL:https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=2_02024_7
※1
運営元:文部科学省
該当ページ名:いも及びでん粉類/<いも類>/(やまのいも類)/ながいも/ながいも/塊根/生 - 一般成分-無機質-ビタミン類-アミノ酸-脂肪酸-炭水化物-有機酸等
URL:https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=2_02023_7
※2
運営元:文部科学省
該当ページ名:いも及びでん粉類/<いも類>/(やまのいも類)/ながいも/いちょういも/塊根/生 - 一般成分-無機質-ビタミン類-アミノ酸-脂肪酸-炭水化物-有機酸等
URL:https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=2_02022_7
※3
運営元:文部科学省
該当ページ名:いも及びでん粉類/<いも類>/(やまのいも類)/じねんじょ/塊根/生 - 一般成分-無機質-ビタミン類-アミノ酸-脂肪酸-炭水化物-有機酸等
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運営元:文部科学省
該当ページ名:いも及びでん粉類/<いも類>/(やまのいも類)/ながいも/やまといも/塊根/生 - 一般成分-無機質-ビタミン類-アミノ酸-脂肪酸-炭水化物-有機酸等
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該当ページ名:カリウム | e-ヘルスネット(厚生労働省)
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運営元:厚生労働省
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運営元:厚生労働省
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運営元:北陸農政局
該当ページ名:今月の園芸特産作物:12月 山芋(ながいも・加賀丸いも等):北陸農政局
URL:https://www.maff.go.jp/hokuriku/seisan/engei/tokusan201912.html
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運営元:文部科学省
該当ページ名:いも及びでん粉類/<いも類>/(やまのいも類)/ながいも/ながいも/塊根/水煮 - 一般成分-無機質-ビタミン類-アミノ酸-脂肪酸-炭水化物-有機酸等
URL:https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=2_02024_7