1. ピータンはどうやって作られるのか

■ピータンの作り方
アヒルの卵に石灰や木炭などを混ぜた粘土を卵殻に塗り、さらにもみ殻をまぶして土の中やカメの中に入れて長期間貯蔵する、という変わった造られ方をしているピータン。一説によると、中国の明の時代にアヒルの卵を灰の中に埋めていることを忘れてしまい、2ケ月後に発見された時に、卵が熟成していたということがピータンのはじまりだと言われている。納豆などもそうだが、それを食べようとする先人の勇気と好奇心には恐れ入る。
2. ピータンの特徴を作る原因

■ピータンが黒い理由
ピータンの色と聞かれると、恐らくほとんどの人が「黒」と答えるかと思うが、実際の色はよく見てみると「茶褐色」だ。このような色になってしまう原因は、「メイラード反応」と呼ばれるものにある。メイラード反応とは、食べ物に含まれるタンパク質とアミノ酸、糖が化学反応をおこして褐色の物質を作ることをいう。身近な食材で言えば、肉は焼くことで茶色く変化し、香ばしい風味がでてくる。また、クッキーを焼いた場合も、卵や牛乳に含まれるアミノ酸と砂糖が化学反応を起こし、茶褐色の美味しそうな焼き色をつける。コーヒーやチョコレートの色もこの反応によるものだ。ピータンの場合は、卵白の成分が変化することで硫化水素が発生し、それが卵黄に含まれる鉄分と反応して黒っぽい色をした硫化鉄になる。それが卵黄から卵白に染み込むことで、全体があの黒っぽい茶褐色の色になっているのだ。
■ピータンが透明な理由
ピータンは加熱しなくても、殻を剥くと生卵のようにドロっとした半液体状ではなく、固形物の黒っぽい卵がでてくる。卵を加熱することで作るゆで卵が固まるのは、卵の中にあるタンパク質が変性することが原因だ。それと同じように石灰に含まれるアルカリ成分が少しずつ卵の内部に浸透していくことで、卵の中のタンパク質の変性が進行し、固形化する。ただし、ゆで卵のように熱による変性ではなく、ある意味生の状態で卵が固まるため、ピータンはまるで生卵のような透明な外見になっている。
■ピータンの臭いの理由
ピータンの殻を剥くと強烈なアンモニア臭と卵の腐ったような臭いがする。この臭いが原因で苦手だという人も多いかと思うがあの強烈な臭いの原因はなんだろうか。熟成過程においてタンパク質の変性と同時に、加水分解と呼ばれる化学反応が進行しており、タンパク質がペプチドに、ペプチドがアミノ酸へと分解されていく。さらにアミノ酸が分解されることで、アンモニアが発生する。また、アンモニアだけでなく硫化水素も発生させるため、あの卵が腐ったような独特の臭いまで発生させているのだ。ただし、アンモニアも硫化水素も空気中に拡散していく性質をもった物質のため、殻を剥いて置いておくことで臭いは徐々になくなっていく。
結論
ピータンのあの独特の外見は、製造過程でおこる化学反応によるものだ。メイラード反応による茶褐色も、タンパク質の変性による固形化も、あの鼻をつくような独特の臭いも、すべてピータンを作るうえで重要な役割を果たしている要素だと言えるだろう。