1. カリブ海の美しい島

テーブルマナーの不思議に迫る前に、ジャマイカがどんな国なのかをご紹介しよう。さまざまな言い伝えやマナーは、その国独特の文化がベースになっている。
カリブ海に浮かぶ島国
ジャマイカは日本で言えば秋田県とほぼ同じ面積の島国だ。レゲエで有名なボブ・マーリーを輩出しているほか、コーヒー好きにはピンとくる「ブルーマウンテン」が島の中央にそびえている。人口の90%がアフリカ系黒人で、公用語は英語。27~32度と平均気温が高く、コーヒーやさとうきび産業と、美しい自然を生かした観光業が盛んな国である。
独自の歴史を歩んできた
先住民はほぼ途絶え、国民の90%を超えるアフリカ系黒人は奴隷として連れてこられた過去がある。現在は完全独立国家として発展途上国は脱出しているが、一歩踏み込めば貧富の差が非常に激しい国である。出生率が高く子どもが多いのだが、同時に飢餓や環境不備のために亡くなる子どもが後を絶たない。
2. テーブルマナーには「願い」が込められている

ジャマイカはこういった国家背景を持つため、「子どもが無事に成長できるように」といった願い事や言い伝えが多い国だ。テーブルマナーも一般的な食事作法を指すものとは少し異なり、子どもが健康に賢く育つよう願いが込められたものとなっている。
鶏肉は小さな赤ちゃんには与えない
言葉を話せるようになる前の小さな赤ちゃんには、鶏肉を与えてはいけない。その子は2度と言葉が離せなくなると信じられている。
実はジャマイカは鶏肉の消費量がとても多い国なのだが、肉は鶏・豚・牛の順に傷みやすいため、小さな子どもが口にするのは衛生上心配だという親心もあるのかもしれない。
実はジャマイカは鶏肉の消費量がとても多い国なのだが、肉は鶏・豚・牛の順に傷みやすいため、小さな子どもが口にするのは衛生上心配だという親心もあるのかもしれない。
2歳になるまで魚も禁止
2歳前の幼児には、鶏肉同様、魚も与えることが禁止されている。もし与えると、歯の成長が悪くなるという言い伝えがあるのだ。鶏も魚も食べられない幼児は何を食べるのかというと、「ダンプリン」という小麦粉を練って茹でたものを食べている。日本のすいとんのようなもので、特に茹でる前のダンプリンを子どもに食べさせると言葉を早く覚えるといわれている。
3. ジャマイカの代表料理は鶏肉

幼児も言葉を話し始めると、いよいよ鶏肉が食べられるようになる。ジャマイカの主たんぱく源は鶏肉で、名物料理にも使われている。
ジャークチキンが有名
子どもから大人まで、とにかくよく食べるのがジャークチキン。ジャークポークもあるが、ジャマイカではチキンの方がダントツの人気を誇る。「ジャーク」とは各種ハーブのスパイスミックスで、シナモンやコショウ、トウガラシなどを混ぜたジャークソースを肉につけて焼いたものである。
死の危険も?アキーの実
ジャマイカのもう1つの名物料理はソルトフィッシュで、塩漬けの魚を焼いて「アキー」の実を添えたものだ。この実は熟す前は猛毒を含んでおり、未熟果を食べると死の危険がある。熟したアキーの実は大変美味なのだが、危険なためジャマイカ近辺でしか食べる文化がないようだ。日本のフグのような扱いである。
結論
南国の開放的で美味しい食文化があるジャマイカでは、作法色の強いテーブルマナーよりも、健康や成長を願うマナーが発展した。幼児に与えてはいけない鶏と魚だが、どちらも食中毒の危険性がある点が興味深い。栄養失調の子どもが食べると重篤化する可能性があり、このこともジャマイカ独自のテーブルマナーのベースになったのかもしれない。