1. 塩害対策になる機能性植物

アイスプラントはそのまま食べてもほんのり塩味がする。初めて食べた人はびっくりするが、これはアイスプラントの持つ大地の浄化能力に由来している。
有明海沿岸のために
アイスプラントは南アフリカ原産の多肉植物だ。地中のミネラルを吸い上げる性質があり、なんと塩分を吸っても大丈夫という、植物としては大変珍しい耐塩能力を持っている。このため別名「吸塩植物」とも呼ばれている。日本には有明海沿岸の塩害を緩和させる目的で、1985年に佐賀大学農学部が持ち込んだ。
もともと高級食材
食感や味がいいので、もともとフランス料理などではよく使われる高級食材だ。素材の希少性、塩味がする不思議さ、水耕栽培できてどんな環境でも生育することから、日本でも「食材」として注目されてきた。害虫に強いため無農薬栽培できるのも魅力だ。全国各地で「バラフ」「プッチーナ」「シオーナ」「ソルトリーフ」「クリスタルリーフ」「雫菜」などの商品名でブランド化されている。
2. アイスプラントの能力

葉の表面がキラキラと輝き、まるで凍っているような涼しげで美しい外見。この外見からアイスプラントという名前がついた。透明な雫状の部分が生命力の秘密である。
環境ストレスに非常に強い
アイスプラントは、南アフリカの過酷な環境をたくましく生き抜くために進化した多肉植物だ。学術名を「メセンブリアンテムム・クリスタリヌム」というが、これは「正午に咲く花の蕾」という意味である。アフリカの正午という一番暑い時に花が咲くほどたくましい。強烈な日差しと暑さに強く、高い耐塩能力で土質に関わらず成長できる。生命力が非常に強い丈夫な植物だ。
秘密は光合成とミネラル貯蔵
植物は光合成でエネルギーを得ているが、日中の光合成は「蒸散」といって水分を消費してしまう。このため、アイスプラントは通常の光合成の他、日中ため込んだ二酸化炭素を夜に代謝する「CAM型光合成」という夜間光合成回路を持っている。また、葉の表面のキラキラした袋状のものは「ブラッター細胞」という。塩分その他のミネラルをここに貯蔵し、厳しい暑さに耐えているのだ。
3. 美味しい!アイスプラントの食べ方

日本でも人気急上昇だが、フランスやベルギーでは前菜としてよく登場する。食べ方はとても簡単だ。
生食がおすすめ
軽く水洗いしてそのまま食べてみよう。アイスプラントだけでもほのかな塩味がして美味しい。食感はサクッとした歯触りの後、プチプチとみずみずしい食感が広がる。サラダならカッテージチーズやハムを合わせると色もきれいだ。トマトやレモンなどの酸味との相性もいい。細かく刻んで納豆と混ぜるのもおすすめである。
加熱はサッと
炒め物の具としても美味しいが、せっかくの歯ざわりを活かすため、炒める時はサッと行う。しっかり衣をつけて天ぷらにしても美味である。意外と和食にも合う食材なので、おひたしにむいている。茹でるのは10秒ほどでよく、氷水で冷やす。飲む直前に味噌汁に入れるのも美味しい。
結論
日本国内で販売されているアイスプラントは品種改良が行われ、苦みが抑えられた。さらに原種より甘く、柔らかくなっている。複雑な塩味を出すため、塩水の散布を行っているところもあるそうだ。丈夫な植物なので無農薬栽培できるため、軽い水洗いだけですぐ食べられる。美味しくて不思議なアイスプラントを、気軽に食卓に取り入れてみよう。