1. "ひなまつりにちらし寿司"は伝統?

平安時代の"なれずし"に由来
3月3日のひなまつりは、女の子の健やかな成長を祈る、年に一度の女の子のための行事だ。"桃の節句"とも呼ばれる。対して男の子の成長を祈る行事は5月5日であり、"端午の節句"と呼ばれる。5月5日は日本の祝日"こどもの日"にあたり、「(男の子だけでなく)子供の人格を重んじ、子供の幸福をはかるとともに、母に感謝する」ことを趣旨としている。ひなまつりは端午の節句のように休日ではないが、それでも女の子にとっては楽しいイベント。大々的なことをするわけではないが、美しい雛人形を飾り、ご馳走を食べる。ひなまつりの定番メニューと言えばちらし寿司だが、なぜだろう?これは、平安時代の"なれずし"に由来している。
地味な"なれずし"が華やかな"ちらし寿司"に
なれずしは魚をご飯に漬けて発酵させたもので、平安時代に保存食として食べられていた。発酵による酸味を持ち、寿司のルーツと言われている。腐ることを避けるために、夏ではなく寒い冬に魚を漬けると、3月のひなまつり頃にちょうど食べ頃を迎えるため、この時期によく食べられていたのだ。ちなみに、室町時代に入ると酢が出回ったため、発酵させることなく寿司が作られるようになった。魚をご飯に漬けて発酵させただけのなれずしの見た目は非常に地味だったが、発酵ではなく酢で寿司が作られるようになると、具も加えられるようになって華やかさを増していった。
2. ちらし寿司には意味がある?

華やかさがひなまつりにぴったり!
ひなまつりのちらし寿司は平安時代のなれずしに由来すると解説した。諸説あるが、敢えてひなまつになれずしを食べていたのではなく、この時期によく食べられていたものがなれずしだったという説が有力だ。しかし、時代の流れとともにちらし寿司は見た目にも華やかな料理となり、祝いの際に食べられることが多くなった。女の子のお祝いであるひなまつりに華やかなちらし寿司がマッチし、定番メニューとなっていったのだ。
縁起の良さがひなまつりにぴったり!
ちらし寿司がひなまつりの行事食として相応しい理由は、その華やかさだけではない。ちらし寿司を華やかに見せる色彩豊かな様々な具材には、祝いの席に相応しい意味合いがある。代表的な具材の持つ意味を説明する。
- えび
えびは背中を丸めた形をしているため、「背中が丸くなるまで長く生きられるように」という願いが込められている。ちなみに、同じ理由でおせち料理にもえびが使われる。 - れんこん
れんこんの特徴は穴。この穴によって「見通しがきく」と昔から言われており、「将来を見通すことができる」という意味を持つ。また、レンコンは種が多く、「多産(子供がたくさん生まれる)」という良い意味も持っている。 - 豆
「健康でマメに働くことができる」という願いをこめて。
このように様々な具材を使うことによって、色鮮やかで華やかな料理となるだけでなく、摂り入れられる栄養素も多くなる。ちらし寿司は、女の子の成長を願うひなまつりにぴったりな一品である。
3. 場所によって違う!?ちらし寿司の地域性

ちらし寿司の地域性
日本は小さな島国だが、伝統行事の祝い方や料理の味付けなどは、地域によって異なることが多い。例えば、鰹節で出汁をとって濃口醤油で味付けする関東のめんつゆに対し、関西では昆布出汁と薄口醤油を使う。また、正月飾りを飾る期間にも違いがあり、関東では一般的に1月7日までだが、関西では1月15日までが通常だ。このような地域による違いはちらし寿司にもある。ちらし寿司と聞いて酢飯にマグロや鮭などの刺身が乗せられたものを想像する人は、きっと関東人だろう。では、ちらし寿司の地域性を見てみよう。
いろいろなちらし寿司
- 江戸前ちらし
酢飯の上に刺身(寿司ネタ)を並べたもの。見た目は海鮮丼と同じだが、海鮮丼は普通の白いご飯だが江戸前ちらしは酢飯である。関東でちらし寿司と言えばこの江戸前ちらしを指す。生ちらし、吹き寄せちらしとも呼ばれる - ばらちらし
刺身を小さく切ったものを酢飯に乗せるちらし寿司。刺身を切らずに乗せる江戸前ちらしに対し、様々なネタを細かく切ってランダムに乗せるとばらちらしと呼ばれる。 - ばら寿司
関東以外では一般的にちらし寿司と言えばばら寿司を指す。干し椎茸、レンコン、人参などの具材を酢飯と混ぜ、えびや錦糸卵などを乗せる。盛り付け時に刺身やいくらなどを乗せることもある。五目寿司、五目ちらし、混ぜ寿司とも呼ばれる。
結論
ひなまつりに欠かせないちらし寿司について解説した。華やかで美味しく、まさに女の子の成長と幸せを祈る日の料理にぴったりのちらし寿司。雛人形を持たない家庭も増えているが、美味しいちらしずしで盛大にお祝いしよう!