1. 丸ナスとはその名の通り丸いナスのこと

丸ナスという愛嬌ある名前のナスは、まさに読んで字のごとくである。コロンとした丸みを帯びた形状が特徴である。一般的に、われわれが見慣れている細長いなすと比較すると肉質がしまっているため、田楽や煮物に向いているとされている。日本国内では、一部の地域で栽培されている丸ナスの概要を見てみよう。
丸ナスの旬や産地
農林水産省によれば、日本全国で栽培されるナスの総生産量は327,400tとされている(※1
)。丸ナスのおもな産地は、京都府や新潟県が挙げられる。しかし生産量は決して多くなく、たとえば京都で栽培される丸ナスのひとつ加茂ナスは1年の総生産量が110tにとどまっている(※2)。丸ナスの旬は、通常のナスと同じく7~9月上旬である。東北、北陸、関西などの一部に伝わる丸ナスは、伝統的な野菜として近年再び注目を浴びているのである。
)。丸ナスのおもな産地は、京都府や新潟県が挙げられる。しかし生産量は決して多くなく、たとえば京都で栽培される丸ナスのひとつ加茂ナスは1年の総生産量が110tにとどまっている(※2)。丸ナスの旬は、通常のナスと同じく7~9月上旬である。東北、北陸、関西などの一部に伝わる丸ナスは、伝統的な野菜として近年再び注目を浴びているのである。
2. 丸ナスの種類と特徴

ふだんは丸ナスを目にすることが少ないという人が大半だろう。丸い形状のナスは、実は世界中に存在する。日本でも近年人気が高まっている丸ナスと、世界でよく知られた丸ナスについていくつか紹介する。
日本の丸ナスの品種
丸なすはかつて全国的に栽培されていたが、中長なすの人気におされ現在は京都府や山形県などの一部の地域でのみ伝統品種が受け継がれている。最もよく知られているのは、京都の伝統野菜のひとつとして珍重されている加茂ナスであろう。大きいものは500g以上にもなる立派なもので、肉質も密である。反対に小ぶりの丸ナスの代表が、山形県産の民田ナスである。漬け物に使用されることが多い。また、奈良県大和郡山には長い伝統をもつ大和丸ナスがある。皮に光沢があり、味だけではなく美観にも定評がある丸ナスである。さらにナスの消費量が多い新潟県には、越の丸ナスや巾着ナスなどの新種がある。
外国の丸ナスの品種
ナスはインド原産であり、数百年前からアジアだけではなくアラブ、アフリカ、ヨーロッパで栽培されている野菜である。丸ナスとしてよく知られているのは、ベビー・エッグプラントとも呼ばれるインディアン・エッグプラントであろうか。小ぶりの丸ナスは、スープやシチューに使用されることが多い。アラブからシチリア島に伝わり栽培が盛んになったイタリアには、サイズが大きめのヴィオレッタ・ディ・フィレンツェがある。日本の丸ナスと同じく肉質がしっかりしているため、パルメザンチーズを使ったオーブン料理によく登場する。シチリア島にも丸ナスが存在し、ローザ・ビアンカの名で知られている。紫と白色の皮が特徴のこのタイプ、まろやかな食感でトマトソースとの相性もバツグンである。
3. 丸ナスのおすすめの食べ方

丸ナスの特徴として、身がしっかりとしているために調理後も崩れにくいことが挙げられる。煮浸しやナスのステーキはもちろん、漬け物にしても歯ごたえのある食感を維持できるのである。また、チーズやひき肉、トマトソースとともオーブン料理にしてもよい味を出してくれる。丸ナスの美味しい食べ方、その例を見てみよう。
丸ナスの煮浸し
丸ナスは煮浸しにしても身が崩れないのがメリットである。味がしみやすくなるように、ヘタを切り落としたあと皮面から格子状に切り目を入れる。切り目を入れた丸ナスを半分に切り、水にさらす。水から取り出したあと水分をしっかりと取り除き、たっぷりの量の油で丸ナスを炒める。ナスによい色が付いたら、出汁、醤油、みりん、しょうがで作った調味液で煮ていけば丸ナスの煮浸しが完成する。
丸ナスの味噌田楽
丸ナスの美味しさは、豪快に味噌田楽で味わいたい。タレにする味噌は、出汁、味噌、酒、みりん、砂糖を使用して煮詰めておく。丸ナスはヘタを落とし、縦半分に切って中面から格子状に切り目を入れる。皮面を少し切り落とし、水にさらしておくと食べやすくなる。水分はしっかりとふき取り、フライパンで丸ナスの表面に焼き目を付けていく。厚めに切った場合は、火が通りやすいようにレンジで加熱しておくとよいだろう。焼き目が付いたらフライパンにふたをしてしばし蒸し焼きにし、しっかりと火を通す。火が通った丸ナスに味噌をトッピングして田楽となる。
4. 丸ナスの選び方と保存方法

丸ナスの栽培量はナスの総生産量に占める割合がまだまだ少なく、扱い慣れていないことが多い。そのため、購入時の基準や保存方法の知識がない人が大半だろう。美味しい丸ナスの選び方と上手な保存方法を紹介する。
新鮮な丸ナスの選び方
丸ナスを購入する際に注目すべき点は次の3点である。
- ヘタのトゲが鋭くとがっているもの
- 皮にツヤとハリがあるもの
- 重みがあるもの
ヘタやトゲがピンとしているものは、植物として勢いがあった証拠である。また、水分が不足していると皮の部分は色がくすんでしわが寄ってくる。同じく水分が不足している丸ナスは、重みも感じられないことが多い。切り口にまだみずみずしさがあり、手に取ったときにずっしりとくる丸ナスならばまずまちがいないだろう。
丸ナスの上手な保存方法
ナスは、高温や湿度の高さに強い野菜として知られている。一方で寒さや乾燥への耐性はあまりない。そのため、10℃前後での保管がベストである。冷蔵庫に入れるのならば、野菜室の温度には注意が必要である。よりよい状態で保存したい場合は、丸ナスの表面の水分をしっかりと除去して、1個ずつ食品用ラップにくるんで野菜室で保管する。冷凍保存するのならば、調理後に使いやすい大きさと形にカットして、冷凍保存用の袋に入れるのが基本である。冷蔵ならば10日前後、冷凍保存で1ヶ月が目安であるが、なるべく早い消費が好ましいのはいうまでもない。
結論
日本では長ナスに押されて存在感がイマイチの丸ナスであるが、伝統野菜の復活の潮流に乗って近年は直売所などでも目にすることが多くなった。世界には同じような丸ナスの種類が多く、そのしっかりとした食感はさまざまな料理に活用されている。和食でも煮浸しや田楽としてぜひその味わいを楽しみたい。新鮮な丸ナスを正しく保存し、美味しく料理して古来伝わる美味を堪能しよう。
(参考文献)
(※1)運営元:農林水産省
該当ページ名:なす生産量上位について
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(※2)運営元:JA京都
該当ページ名:加茂なす
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