1. 栄西禅師ゆかりの地で栽培される日本茶「静7132」

鎌倉時代に、宋から茶を持ち帰ったという言い伝えのある栄西禅師。栄西禅師と茶の普及にゆかりがあると伝えられる静岡清水区、ここで栽培されるのが「静7132」である。
■東海道筋、そして港を擁する要衝「清水」に茶の種到来
古来、人々の往来が激しかった東海道。その東海道筋にあり、なおかつ港を持つ清水は経済面における要衝とされてきた。鎌倉時代に中国から茶を持ち帰ったといわれる栄西禅師は、茶の種を日本の6ヶ所に広めたとされている。そのひとつが、静岡県の清水なのである。明治時代以降は、清水港から静岡産の日本茶が次々に輸出されるという幸運にも恵まれる。
■日本で最も飲まれている日本茶「やぶきた」から誕生
静7132は、日本で最も普及している日本茶「やぶきた」の実生から選ばれ、1960年代に静岡茶業試験場で完成した。煎茶の名産地として知られる清水は、栽培地が南北に広がるため、茶畑によって茶の味や香りが異なる特徴がある。静7132は病気や霜にも強い品種であり、日当たりの悪い畑でもじゅうぶんに育つことがわかり、2003年から清水で本格的な栽培が開始された。それを推進したのは、茶の栽培農家たちをもうならせた静7132が持つ美味と香味であったとされている。現在は煎茶として生産されているが、静7132の香りは将来的に紅茶にも適用可能と評価が高い。
2. 静7132が人気の理由、それは桜葉の香り!

静岡市清水区をあげて生産と品質向上がすすめられる「静7132」。茶のプロフェッショナル達をうならせる要因が、静7132には秘められていたのである。静7132がここまで需要を伸ばした理由、それは香りにある。「幸せのお茶」のキャッチコピーが生きてくるわけである。
■ほかの茶と一線を画す香り
茶どころ清水であるから、通り一遍の茶を推すはずもない。静7132は、栽培におけるメリットがあるだけではなく、桜の葉やヨモギと同じ香りの成分「クマリン」が多く含まれている。このクマリン、その香りのよさから化粧品や香料としても使用されるものである。静7132を口に含むと、クマリン由来のほんのりとした桜の葉のような香りが鼻腔に届くのである。
■新たなる茶産地づくりの指標として
清水区では農家、小売業者などが一体となって構成される「清水みんなのお茶を創る会」がある。茶の手練れたちが集結するこの会が、静7132にほれ込んだ。新たな産地資源開発の主役として、静7132をブランド化したのである。
■静7132、色や味わいは?
桜の葉のような香りが目立つ静7132、実際の色や味はどのようなものであろうか。静7132は、黄色に近い若々しい緑である。味わいも、甘み渋みともにメリハリがある。余韻はさわやかで、嫌味がない。キャッチコピーに嘘はなく、一杯の茶に幸せを感じることができるのである。静岡清水区産では「まちこ」の名前が最も知られているが、わずかながら「小瀬戸桜」「さくらかほり」といった商品も存在する。
3. きらびやかな肩書をもつ日本茶、静7132

2003年から清水で本格的にブランド化された静7132。清水の農家や小売業者に加え、行政もその支援を怠らなかった結果、さまざまな賞や栄誉を享受している。まず、2009年には世界緑茶コンテストにおいて最高金賞を受賞。2011年には、しずおか食セレクションの認定を獲得。また、ふじのくに山のお茶100選の不発酵茶部門にも選出されている。2014年には、日本茶AWARDにおいて審査員奨励賞を受賞。茶どころ清水の新たな顔として、今後もますます活躍の場を広げそうな勢いである。
結論
日本茶の普及ともゆかりの深い清水で推進されてきた静7132。特有の桜の葉のような香りには、茶のプロを含めてファンが多い。病気や霜にも強いというメリットを持つ静7132は、将来的にも有望株の日本茶であることはまちがいない。