1. 生落花生とは?

落花生はマメ亜科ラッカセイ属の植物で、ナンキンマメ(南京豆)やピーナッツと呼ばれることもある。一般的に殻の付いた状態のものを「落花生」と呼び、殻を取り除いて中の実だけになったものを「ピーナッツ」と呼ぶことが多い。日本では千葉県の特産品として知られており、主な品種である千葉半立・ナカテユタカ・郷の香・おおまさりなどは全て千葉県の落花生研究室から誕生した(※1)。
落花生の旬
落花生の収穫期は9〜11月頃であり、10月頃にピークを迎える。とれたての落花生は水分が多く傷みやすいので、通常は収穫後すぐに天日干しされてしまう。これがスーパーなどでよく見る「乾燥落花生」である。しかし、中には天日干しする前のものも売られており、これが「生落花生」である。
落花生の今
現在、ピーナッツとして販売されているものの多くは輸入品である。近年、国内の落花生の生産量は減少傾向にあり(※2)、2019年の生産量は1万2400トンであった。また、国内の主な生産地は千葉県と茨城県の二県だけであり、千葉県は1万100トン、茨城県は1390トンとなっている(※3)。
2. 落花生の栄養価と特徴的な栄養素

マメ科の生落花生はほかの豆類と同様でたんぱく質が多いが、ほかの豆類と異なり脂質(オレイン酸など)を多く含んでいることも特徴である(※4)。また、カロリーが高いため、食べ過ぎると肥満などの原因になる可能性もある。そんな特徴のある落花生の栄養価について確認しておこう。
生落花生の栄養価
文部科学省の「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」には、乾燥させたり煎ったりした落花生と「生の落花生(未熟豆)」の栄養価が収録されている。このうち以下に紹介する栄養価は100gあたりの「落花生(生/未熟豆)」のものである(※5)。
- エネルギー:295kcal
- たんぱく質:12.0g
- 脂質:24.2g
- 炭水化物:12.4g
- 脂肪酸
・飽和脂肪酸4.24:g
・一価不飽和脂肪酸:11.60g
・多価不飽和脂肪酸:7.00g - ビタミン
・βカロテン:5μg
・ビタミンD:0μg
・ビタミンE:7.2mg
・ビタミンK:0μg
・ビタミンB1:0.54mg
・ビタミンB2:0.09mg
・ナイアシン:10.0mg
・ビタミンB6:0.21mg
・ビタミンB12:0μg
・葉酸:150μg
・パントテン酸:1.40mg
・ビオチン:43.5μg
・ビタミンC:20mg - ミネラル
・ナトリウム:1mg
・カリウム:450mg
・カルシウム:15mg
・マグネシウム:100mg
・リン:200mg
・鉄:0.9mg
・亜鉛:1.2mg
・銅:0.50mg - 食物繊維:4.0g
(・水溶性食物繊維:0.1g)
(・不溶性食物繊維:3.9g)
不飽和脂肪酸が多く含まれる
落花生は豆類の中では「脂質を多く含むグループ」に分類されている。特に一価不飽和脂肪酸である「オレイン酸」や多価不飽和脂肪酸である「リノール酸」が多いことが特徴だ(※5)。これらの栄養素には血液中のLDL(悪玉)コレステロールを下げる働きなどがあるといわれている(※6)。体内で合成することができないため、食べ物から補う必要がある。
抗酸化作用のあるビタミンEが多い
落花生はほかの豆類に比べて、100gあたり7.2mgとビタミンEを多く含んでいる。成人男性(18~64歳)の1日あたりのビタミン摂取目安量は6.0~7.0mgであるため(※7)、生落花生を100g食べるだけで1日分の栄養価を補うことが可能である。なお、ビタミンEには体内の活性酸素を取り除く抗酸化作用があることがよく知られている。
植物性のたんぱく質が豊富
生落花生はほかの豆類同様、100gあたり12.0gと植物性たんぱく質を多く含んでいる。 たんぱく質は身体の中で筋肉・皮膚・髪の毛などになる重要な栄養素で、成人男性(18~64歳)の場合は1日あたり50~65g程度の摂取が必要になる(※7)。ただし、生落花生はアミノ酸スコアが58とやや低め(※6)。リジン・スレオニン・トリプトファンなどが足りないため、食事の際には注意しよう。
高カロリーなので食べ過ぎに注意!
生落花生は水分が約50%で、体内でエネルギーとなる脂質・炭水化物・たんぱく質が約48%を占める。そのため、非常に高カロリーの食品となっている。100gあたり295kcalであり、ほかの豆類よりもかなり多い。食べ過ぎるとエネルギー過多になってしまうため、食事の際には注意が必要となる。
3. 生落花生の基本的な食べ方

生落花生は加熱をしないと食べることはできない。加熱方法はフライパンで炒る(煎る)方法もあるが、基本的には塩茹でがおすすめ。塩をしっかりときかせると豆の甘みが引き立ち美味しく仕上がる。
- 泥がついているものはしっかりと洗う
- 塩を入れた湯で20〜40分ほど茹でる
- ザルにあげてよく水気を切ったら完成
なお、茹でているときに浮き上がってくるようであれば、落し蓋をするとよい。また、茹で加減は食べてみて確認するのがおすすめ。塩が足りない場合はザルにあげてから少し塩水につけてもよい。
圧力鍋を使うのもおすすめ
生落花生を塩茹でする際に圧力鍋を使うのもおすすめだ。このとき使う水の量は、生落花生がしっかりと浸かるくらいの量でよい。圧力がかかってから、弱火にして3~5分程度茹でる。その後、火を消してゆっくりと圧を抜くようにしよう。普通の鍋で茹でるよりも、柔らかく仕上げることができる。
4. 生落花生を使ったアレンジ料理!

生落花生は塩茹でが非常に美味しいが、炒ったり炊き込みご飯にしたりしても美味しい。そこで最後に生落花生を使ったアレンジ料理を紹介しておこう。
食べ方1.自家製炒り豆
生落花生を自宅で炒る(煎る)と驚くほどに美味しくなる。やり方は殻から外した落花生を150℃に温めたオーブンで20〜30分焼くだけ。焼き上がりに塩を振れば、ちょっとしたおやつやおつまみにぴったりな味わいになる。フードプロセッサーなどで砕いてからバターや砂糖を加えれば、自家製のピーナッツバターにすることも可能だ。
食べ方2.生落花生の炊き込みごはん
生落花生は、ご飯と一緒に炊き込みごはんにしても美味しい。また、もち米を入れておこわにしても美味しく食べられる。軽く茹でた落花生を一緒に炊き込むだけだが、落花生のうま味がご飯に移って美味しい仕上がりになる。少し酒を入れて炊き上げると風味がよくなるのでおすすめだ。
食べ方3.生落花生のサラダ
生落花生は甘みが非常に強い。塩茹でしたものにオリーブオイルとレモンを掛けて、シンプルなサラダにするのもおすすめだ。レッドオニオン・トマト・キュウリなどを合わせても美味しく仕上がる。肉や魚料理の付け合せにもぴったりだ。
5. 生落花生の保存法

生落花生は生の状態でも、火を通した状態でもあまり日持ちしない。そのため、購入したらすぐに茹でて、茹でたての一番美味しい状態で食べるのがよい。もし残ってしまったら、冷蔵庫か冷凍庫で保存しよう。冷蔵庫の場合は2~3日ほど、冷凍庫の場合は1か月程度保存することができる。
結論
秋のシーズン限定で流通する生落花生。スーパーや八百屋などで見つけたらぜひ購入して、茹でてみよう。塩茹でにした生落花生を一粒頬張れば、ホクホクで甘みが強い美味しさに驚くこと間違いない。また、料理に使っても美味しいので、炊き込みご飯などにしてみてもいいだろう。
【参考文献】
- ※1:千葉県庁「落花生研究室」
https://www.pref.chiba.lg.jp/lab-nourin/nourin/honjou/rakkasei.html - ※2:全国落花生協会「日本の落花生生産」
http://www.jpf.or.jp/industrials/figures.html - ※3:農林水産省「作物統計調査」
https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/tokutei_sakumotu/index.html#r - ※4:日本豆類協会「豆の栄養成分表」
https://www.mame.or.jp/eiyou/seibun.html - ※5:文部科学省「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」
https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=6_06303_7 - ※6:厚生労働省「e-ヘルスネット 不飽和脂肪酸」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-031.html - ※7:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年)」
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf