1. 年越しそばの基礎知識

年越しそばの起源には、諸説あるというのが一般的。多くの食品が一般に広まった江戸時代に定着した食習慣だという見解が多い。そばは日本だけでなく、フランスなどでも飢饉に際したときの救世主として登場する存在。これはそばが米や小麦のように肥沃な土地でなくても育つことに由来している。古人たちにとって一種のお守りのような存在であったそばは、幸福を象徴するものであったのかもしれない。
大晦日にそばを食べる意味
前述の通り、幸福をもたらすという意味合いのほかにも切れやすい麺であることから、1年の厄を断ち切るという意味や細く長い形状から長寿を願うなど、さまざまな説があるがいずれにしてもどこか願掛けめいたものが多い。
いつ食べるのが正解?
夕飯として食べるべきか、夜中に食べるべきなのか?年越しそばを食べるタイミングを見計らうのは、なかなか難しい。厳密な決まりはないが、前述のように厄を落とすという意味合いがあるので、年をまたいで食べるのはよくないとされることが多い。
2. 具材が面白い!地方の年越しそば

珍しい魚×そばの組み合わせ
北海道では、ポピュラーなにしんそば。年越しそばに用いられることも多いようだ。北海道はそばの産地でもあるが、あまり注目されることはない。にしんは骨まで食べられるようにしっかりと煮てあり、そば汁は関東風の甘めが主流。
辛い大根おろしが必須!
福井県では年越しそばに、越前そばが用いられることが多い。これは辛い大根おろしを乗せた冷たいそばのこと。福井で食べられているそばは県内産のそば粉を昔ながらの石臼で挽いたものを使用していることから、風味が強く、辛い大根おろしと合わせても負けない旨さがある。薬味はネギやかつおぶし。かつおぶしは削りたてを用意するとより本格的な味わいになる。
年の数だけ食べる!?
わんこそばは、岩手を代表する食文化のひとつ。現在では大食いや名物のように捉えられているが、本来はおもてなしの料理だったらしい。古くは、年越しにも用いられ、年の数だけで食べるような風習もあったようだ。
3. そもそもそばじゃない!年越しそば

そばはそばでも...
新潟県では、ふのりそばが普及している。へぎと呼ばれるせいろのような器に数人分盛られたそばが、広く食べられている。へぎそばも越前そば同様、冷たいものが基本。ふのりをつなぎに使うことで、ほかにはないツルツル感やシコシコ感が生まれる。また、薬味としてからしが供されるところも特徴的。
うどん県はうどんが主流!?
香川県は、通称うどん県と呼ばれるほど、うどんが暮らしに浸透している地域。基本的には年越しにはそばが用いられているようだが、なにやら近頃、年明けうどんなるものの推進を測っているらしい。これは純白で清楚なうどんにもみじおろしや梅干しなど、紅のトッピングを添えて、年初めに食べることで幸せを願うというもの。元旦から15日までの間に食べることがすすめられている。
独自のそば文化
沖縄県では、そばといえば沖縄そばのことを指す。当然、大晦日に食べる年越しそばも沖縄そばが基本。ちなみにおきなわそばとは、そばといえど、そば粉は使われていいない。小麦粉、塩、かん水からできており、どちらかといえばラーメンに近い。出汁は鰹節や豚骨が一般的。よく煮た豚の三枚肉やネギ、かまぼこ、紅生姜などの具材がトッピングされている。
結論
多くの日本人が食べている年越しそば。ひとくちにいっても、地域性を反映したさまざまな種類が存在するようだ。何はともあれ、翌年の幸福を願って食べる縁起物。ぜひ、継承し続けたい食文化である。