1. ナイアシンの働きと1日の摂取量

ナイアシンはニコチン酸とニコチンアミドの総称である。アミノ酸のトリプトファンから体内で合成されるため、ナイアシンは「ナイアシン当量」として表されている。ナイアシンには体内のさまざまな反応をサポートする働きがある。必要な量はわずかでも、身体にとってはなくてはならない栄養素だ。具体的なナイアシンの主な働きは次のとおりだ。
ナイアシンの主な働き
- 3大栄養素の代謝をサポート
- エネルギー産生を助ける
- 脂肪酸、ステロイドホルモンの合成に関わる
- ATPの産生
- DNAの修復や合成
- 細胞分化
ナイアシンの吸収
生鮮食品のなかでは、ナイアシンは「ピリジンヌクレオチド」という形で存在している。調理の過程で分解されて、動物性食品の場合はニコチンアミド、植物性食品の場合はニコチン酸となる。 ニコチンアミドやニコチン酸は小腸で吸収されるが、食品によって吸収率は異なる。日本での一般的な食事でのナイアシンの利用効率は約60%だ。
ナイアシンの摂取量
ナイアシンの1日の摂取推奨量は、30〜40代の男性では15mg、女性では12mgだ。日本人の平均的な摂取量は、成人男女ともに15mgなので、男女ともに充足しているといえるだろう。ナイアシンは肉や魚、植物性食品からも摂れることから、不足しにくい栄養素だといえる。
2. ナイアシンを含む食べ物や飲み物

動物性食品
かつお、まぐろ、レバー、鶏胸肉、ささみ、焼き豚など
植物性食品
落花生、きのこ類、玄米、そば粉など
動物性食品から摂る場合には、手軽に準備できるかつおやまぐろの刺身や低糖質の鶏胸肉やささみがおすすめだ。植物性食品の場合は、きのこ類がおすすめで、中でもとくにひらたけに含有量が多くおすすめだ。きのこ類は、食物繊維が豊富でビタミンDも多く含むというメリットもある。炒め物やスープ、サラダなどいろいろな食べ方を試してみよう。
3. ナイアシン不足と感じたら?

成人男女ともに平均的にみれば、ナイアシンは充足しているが、トリプトファン含有量の低いとうもろこしを主食としていたり、ビタミンB6が欠乏していると不足しやすい。また、薬や病気の影響でもナイアシン不足は起こりうる。ナイアシンの代表的な欠乏症は「ペラグラ」である。日本ではペラグラ患者はまれであるが、アルコール依存者の場合はたんぱく質やほかのビタミン不足とともにナイアシン不足がみられることがある。治療しなければ死に至る危険な病気だ。ナイアシンの欠乏症の症状としては次のようなものが挙げられる。
ナイアシン欠乏症の主な症状
- 皮膚炎
- 下痢
- 神経障害
ナイアシンの過剰摂取
ナイアシンの過剰摂取による健康被害としては、ニコチン酸の過剰摂取によって顔の紅潮やかゆみを引き起こす「フラッシング症候群」が挙げられる。ニコチンアミドの過剰摂取では、胃腸障害、肝毒性、消化性潰瘍の悪化などがある。ナイアシンの過剰をふせぐため、日本人の食事摂取基準では上限値が設けられている。
ナイアシン不足を防ぐために
日本の一般的な食生活では、ナイアシンの不足は起こりにくい。しかし、偏った食生活をしている場合や、アルコール依存症の場合にはまれにナイアシン不足が起こる。基本的にはいろいろな食材を組み合わせてバランスのよい食事がとれていれば問題はない。
結論
ナイアシンはかつおやマグロなどに多く含まれ、エネルギーを作り出してホルモンや脂肪酸などの構成成分となる。成人男女の平均値を見るとナイアシンはほぼ充足しているともいえるが、偏った食生活をしていると不足する場合もある。ナイアシンの欠乏は深刻な症状を引き起こすこともあるので注意をしておきたい。
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