ざるそばともりそばの違いとは？それぞれの特徴と歴史も解説

現在そばを提供している飲食店では、もりそばとざるそばの違いといえば刻み海苔がのっているかいないかだけ、という店がほとんどだという。なぜこのような違いが生まれたのか。2つの言葉が生まれた歴史について解説する。

そばの始まりは室町時代にまで遡る。当初は麺ではなく団子の形をしており、現在のそばがきのようなものだった。江戸時代になると、小麦粉をつなぎに使用した二八そばが登場し、そば屋では麺状に切ったものと一緒につゆが提供されるようになった。そばを器に盛って提供していたことから、もりそばと呼ばれるようになったようだ。

一方ざるそばは江戸時代中期に、伊勢屋という店で生まれた。竹ざるの器に盛られたざるそばは、ざるに盛ることでそばが水っぽくならず、最後まで美味しく食べられるとして人気を博した。その後、もりそばと差別化を図るために刻み海苔をのせたり麺の量を増やしたりする店が次々と現れ、ざるそばは高級そばとして定着していったようだ。

ちなみに、そばをつゆにつけて食べるもりそばとざるそばに対し、そばにつゆをかけて食べるぶっかけそばもある。さらに、温めたぶっかけそばをその区別のために、かけそばと呼んだとされている。

現在ざるそばともりそばの違いは海苔がのっているかどうか、という点だけで区別している場合が多いが、ざるそばのほうが50～100円以上も高い値段で売り出している店もある。これは一体どういうことだろうか。

ざるそばがもりそばと比べて高価なそば、という位置づけとなったのは明治時代頃といわれている。当時はざるそば用に高価なそば粉を使用し、反対にもりそばには安価なそば粉が使われていたそうだ。そばをつけるつゆも、もりそばには二番出汁や雑節出汁が使われていたのに対し、ざるそばには鰹本節出汁や、当時は高級品であったみりんを使ったコクがあり香り高いつゆが提供されていた。現在のざるそばのように、刻み海苔がのせられるようになったのもこの頃である。

また、海苔は当時生産量が少なく高価なものだった。海苔がのったざるそばはもの珍しく、香りがそばに合うとして評判になり、瞬く間に広く普及した。ざるそばには刻み海苔だけでなく薬味なども一緒に提供されていたようで、当時はもりそばとざるそばには大きな違いがあったといえる。現在一部の高級店などでは、そば粉や汁など素材にこだわったり、本わさびを使用したりなどして差別化を図っているようだ。

現在冷たいそばを指す料理には、もりそばとざるそばのほかに、せいろそばと呼ばれるものもある。せいろとは本来、おこわやまんじゅうなどを蒸すための道具だ。現在のせいろそばの起源は、江戸末期の天保時代だといわれている。当時、そば屋は江戸幕府に商品の値上げを要求したが、値上げの代わりに器を底上げして量を減らしたものを提供することが認められた。結果、すのこで底上げされたせいろにそばを盛って出すこととなったのだ。

これは盛りせいろと呼ばれ、その後せいろそばになったものであり、もりそばとせいろそばに素材やつゆの違いはない。つまり現在のもりそば、ざるそば、そしてせいろそばの違いとは、そばを盛る器と刻み海苔の有無だけとなっているというわけだ。せいろを器に使ったそばをざるそばと呼ぶ店もあるが、これは竹ざるの器では出前が困難であるため、呼び名はざるそばのままで、重ねて運ぶことができるせいろを使っているためだといわれている。