1. にぼしとは?

■にぼしの作り方
煮干し(にぼし)とは呼んで字のごとく、魚を煮てから干したものだ。カタクチイワシなどの魚を海水、または真水を用いて煮、自然に冷ました後で、乾燥させるという過程を経て作られている。日本のにぼしの生産量第1位は長崎県となっており、周囲を海に囲まれた環境でカタクチイワシもよく採れることから、全国の約1/4のにぼしが作られているのだ。また、生産量だけでなくその品質も全国的に高い評価を得ている。
■にぼしの美味しさの理由
にぼしは、カタクチイワシを煮てから干したものであるため、魚独特のうま味と香りの引き立つ出汁をとることができる。にぼしのうまみ成分は、肉や魚と同じ「イノシン酸」によるものだ。また、原料がイワシそのものということもあり、たんぱく質やカルシウムなどの栄養にもすぐれている。しかし、出汁として使うとそれほどの栄養素を出汁そのものからとるのは難しいため、出汁をとった後のにぼしは、佃煮などにして食べるのがおすすめだ。
■にぼしの種類
にぼしというと、「カタクチイワシ」のことを指すのが一般的だが、煮てから干したものということで、イワシを使ったにぼし以外にもさまざまな種類のにぼしが存在する。有名なもので言えば、特に九州で好んで使用されているトビウオを使った「あご出汁」。独特なうま味をもちながら、上品でさっぱりとしているのが特徴だ。博多の雑煮などではこのあご出汁が使われている。その他にもマアジのにぼしやタイのにぼし、サクラエビや貝柱のにぼしなどその種類は多岐にわたっている。
2. にぼし出汁の取り方

■下準備をおこなう
にぼしで出汁をとる際のコツは、全身そのまま煮込むのではなく、まずはにぼしの頭を取り、内臓を取り除くことだ。この作業によって、魚独特の生臭さを軽減することができる。生臭さがあると、どんなににぼしから旨みが出ようとも台無しになってしまう恐れがある。このひと手間が、にぼし出汁をワンランクアップさせるコツだ。また、フライパンで3分ほど乾煎りすることによって、さらににぼしの臭みをなくすことができるのでおすすめだ。時間を短縮するには、ラップをせずにレンジで1分間チンするという手もある。
■水だしをおこなう
にぼしで出汁をとる時の最適な量は、水1リットルに対して、にぼしは30gほど。まずはにぼしを入れて火にかける前に、水の状態でにぼしを入れ、出来れば一晩から半日は浸けておこう。その際ににぼしの身を半分に割っておくとさらに出汁が出やすくなる。いきなり火にかけてはいけないのかという人もいるかもしれないが、水だしをおこなうことで、にぼしの雑味や苦みのないすっきりとした出汁になるのだ。
■煮だしをおこなう
しっかりと水だしをおこなったら、水とにぼしを鍋に入れて弱火にかけ、アクが出てきたら、こまめにすくうという作業を繰り返す。5分ほど火にかけるとアクがあまりでなくなるので火を止める。最後にふきんなどを敷いたザルでしっかりとこせば、美味しいにぼし出汁の完成だ。即席出汁に比べると手間と時間がかかるのは事実だが、シンプルな料理ほど風味と香り、美味しさの違いがわかるものだ。
3. にぼし出汁に合う料理

■動物性の出汁は野菜と合わせる
にぼしは昆布やしいたけなどとは違い、動物性の出汁であるため、魚料理や肉料理ではなく、野菜をメインに使った料理に合わせるのがおすすめだ。特に煮魚でにぼし出汁を使うと、違う魚の味が重なってしまうため避けた方が良いだろう。そのため、野菜や芋の煮物、肉じゃがなどに活用するのがおすすめだ。
■香り、風味が強いものはスープとして活用
にぼし出汁は香りが強く、風味も濃厚なため、スープそのものを味わうようなものにもよく合う。うどんやそばのつゆ、みそ汁などに使うとにぼしの香りや風味、旨みを存分に楽しむことができる。スープが命の料理と言えば、鍋料理もそのひとつだ。そのため、鍋をつくる際の出汁としてもにぼし出汁は活用できる。
■合わせ出汁で幅広い料理に対応
にぼし出汁は動物性のだしのため、そのうまみ成分はイノシン酸によるものだ。鰹節などのうまみ成分も同じようにイノシン酸だが、昆布のうまみ成分はグルタミン酸によるもののため、鰹節と昆布、にぼしと昆布などを合わせることでより味わい深い出汁をとることもできる。にぼしと昆布で合わせ出汁を取る場合は、にぼしと一緒に15cmほどの昆布を一晩水につけ、煮だしの際に煮立つ直前に昆布を取り出せば、簡単に合わせ出汁をとることができる。
結論
最近は即席出汁の便利さと美味しさから、にぼしや昆布、鰹節などからだしを取るという人が少なくなってきている。現代人は化学調味料の味になれているため、中には即席出汁のほうが美味しく感じるという人もいる。しかし、実際に素材そのものから出汁を取って味わってみると、そのすっきりとした美味しさに驚く人も多いだろう。これまでだしを取るということから料理をはじめたことのない人は、ぜひ一度チャレンジしてみてはいかがだろうか。