目次
- ※1.公益社団法人東京生薬協会「新常用和漢薬集 木瓜(モッカ)」 https://www.tokyo-shoyaku.com/wakan.php?id=229
- ※2.平凡社「世界大百科事典(ボケ)」
- ※3.熊本大学薬学部薬草園植物データベース「ボケ
- Chaenomeles speciosa (Sweet) Nakai」 https://www.pharm.kumamoto-u.ac.jp/yakusodb/detail/003427.php
- ※4.熊本大学薬学部「ぼけ Chaenomeles speciosa NAKAI」 http://www.pharm.kumamoto-u.ac.jp/flower/H1203.html
- ※5.小学館「デジタル大辞泉(サポニン)」
- ※6.日本蒸留酒酒造組合「ボケ酒」 https://www.shochu.or.jp/kajitsushu/homemade/summer/boke.html
1. ボケの実とは

まずはボケという植物に注目し、ボケの実に迫ってみよう。ボケは観賞用として目にすることが多い植物であり、その実を食用として口にしたことがある人は少ないかもしれない。ボケとはいったいどのような植物なのだろうか。
ボケの実の特徴
ボケはバラ科の植物で、原産は中国南西部といわれている。高さは最大でも2mほどの落葉低木で、3~4月に赤色や白色の花を咲かせる。ボケの名は中国語の「木瓜(もっか)」がなまったという説、果実が爪の形状をしていることから「木瓜」という名がついたなど諸説ある。ボケの実は9~10月になる。ボケの実は楕円形で長さは8cm前後、黄緑から緑色へと熟していく過程で色を変える。漢方ではむくみの改善等に使われてきた歴史がある。(※1)
毒はない?
ボケの実は果肉が固く渋みや酸味が強い。生で食べたいと思わせる色と形、また芳香を有しているボケの実であるが、生食は無理である。その渋みから毒があると感じるかもしれない。ボケの実は熟す前のを食した場合に腹痛を起こす可能性もあるという。ボケの実にはリンゴ酸や酒石酸が含まれていて、これが酸味などの原因である。(※2)
収穫時期
春に花を咲かせるボケは、9~10月に実の収穫をする。ボケの実は上述したように生食には向いていない。砂糖煮にしたり果実酒にするものが大半である。
2. ボケの実に効能はある?

生薬の原料としても使用されるボケの実。生食が難しくジャムや酒に使用されるボケの実であるが、それを摂取することでどんな効能が期待できるのだろうか。ボケの実の成分や効能を説明する。
疲労回復
ボケの実の主な成分には有機酸やタンニンがあげられる。ボケの実の焼酎漬けなどにしたボケ酒は疲労回復に効能があるとされている。(※3)また、冷え性や不眠等にも効果が期待されるという。(※3)。果実酒は甘いうえボケの実の芳香でお酒が進んでしまうこともあるが、飲みすぎには気をつけよう。(※4)
咳止め
ボケの実にはサポニンが含まれている。(※1)配糖体の一種であるサポニンは去痰作用があるといわれ(※5)、ボケの実は咳止めなどに使用されることがある。
整腸効果
ボケの実は消化器系の病気の治療に使用されてきた歴史がある。(※2)ボケはクエン酸や蔗糖も含んでおり、ボケ酒は整腸作用があることでも知られている。(※6)
筋肉の痙攣
鎮痛鎮痙の効能を持つボケの実は、暑気当たりなどからくる筋肉の痙攣に効果があるとされている。(※3)そのほか利尿作用もあり、腎不全などに由来するむくみにも生薬として用いられている。(※1)
3. ボケの実の食べ方

鑑賞用として愛されてきたボケ。ひょっとすると身近にボケの実があるかもしれない。生では食べることができないが、ボケの実の芳香や効能はぜひ活用したいものである。それではボケの実はどのように食べたらよいのだろうか。いくつかの食べ方や作り方を見てみよう。
ボケ酒
ボケの実はリキュールにはもってこいの食材である。9~10月にかけて収穫したボケの実は、その時期に酒に漬け込むと美味しいボケ酒となる。作り方は簡単で、ボケの実を氷砂糖とリカーに入れて熟成させるだけである。ただし果肉が固いボケの実は熟成期間が長いというデメリットもある。半年~1年かけて熟成させたボケ酒、炭酸で割ったり氷で冷やして飲むと美味である。またお湯で割れば身体を温めてくれる。
ボケの実のジャム
ボケの実をジャムにすれば子どもでも食べることができる。洗ったボケの実を細かく切って煮込み、柔らかくなったころを見計らって砂糖を加える。色も美しく香りもよいボケの実のジャムは、パンに塗るだけではなくヨーグルトに混ぜたり、ケーキを焼くときに活用してもよいだろう。
はちみつ漬け
ボケの実をヘルシーにはちみつ漬けにしても応用範囲は広い。はちみつ漬けは、薄切りにしたボケの実の種を除いて、はちみつを加えるだけでできる。1週間ほどで浸かったあとは、はちみつにお湯を加えてドリンクにしたり、ボケの実を紅茶などに入れて風味を楽しんでも一興だ。
4. ボケの実の使い方

ボケが愛されてきた理由に、その美しい花とともに実の香りがあげられる。この香りは酒や砂糖漬けにしても楽しめるが、芳香剤としてぜひ活用したい。その使い方を見てみよう。
芳香剤
ボケの実の芳香剤はごく気軽に作ることができる。収穫したボケの実をネットなどに入れ、好きな場所に置くだけである。まさにナチュラルなこの芳香、ボケの実が茶色く変色する2か月ほど楽しむことが可能である。可憐なその形状は視覚も和ませてくれるだろう。またお風呂に入れれば、その香りがリラックス効果をもたらしてくれるかもしれない。
結論
ボケは中国原産の植物で、美しい花は観賞用として愛されてきた。ボケの実も鑑賞に堪えうる可憐さがあるが、食することも可能である。生食はできないボケの実は、果実酒や砂糖煮にして食べる方法がメジャーである。生薬にも使用されるその効能、さまざまな方法で摂取したいところだ。色や味だけではなく、その芳香も楽しんでボケの実を活用してほしい。
(参考文献)