目次
- ※1.農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センター「有毒な山野草」 https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2030810900.pdf
1. タラの芽もどき1:ウルシ

タラの芽はタラノキの新芽である。タラノキはウコギ科の落葉低木で、若芽は4月ごろに採取して天ぷらや和え物として楽しむ。このタラの芽に似た山菜のひとつが、ウルシである。ウルシの芽はどのような特徴があり、タラの芽とはなにを基準に見分ければよいのだろうか。
ウルシの特徴と見分け方
タラノキとウルシの見分け方を見てみよう。
・樹木
タラノキ 落葉低木(4mほど)
ウルシ 落葉高木(10mほど)
つまり、ウルシの木のほうが高い傾向がある。
・幹
タラノキ 分枝が少なく鋭いトゲを有している
ウルシ まばらに分枝し、トゲはない
・葉の形
タラノキ 5~10cm 無毛の2回羽状複葉
ウルシ 20~40cm 先がとがり艶があり奇数羽状複葉
タラの芽とウルシの芽は形状が似ているが、ウルシの芽は赤色を呈していることが多い。またタラノキは、幹や枝だけではなく葉の付け根にも細かいトゲがあることを覚えておこう。
食べるとどうなる?
ウルシの芽もタラの芽と同様、食べることができる。タラの芽の香りは、加熱しても消えることがない。ウルシの芽も似たような食感であるが、かつては強壮剤として使用されていた歴史もある。ウルシのなかでもヤマウルシは、触れると皮膚炎を発症する可能性があるため注意が必要である。(※1)
2. タラの芽もどき2:コシアブラ

タラの芽のまちがえやすい山菜2つ目はコシアブラである。コシアブラはタラノキと同じくウコギ科に属することからも、まちがえるケースが多いといわれている。タラの芽とコシアブラの新芽をまちがえないために、それぞれの特徴を紹介する。
コシアブラの特徴と見分け方
タラノキとコシアブラの見分け方はこちらを参考にしてほしい。
・樹木
タラノキ 落葉低木(4mほど)
コシアブラ 落葉高木(15mほど)
つまり、コシアブラのほうが高い可能性がある。
・幹
タラノキ 分枝が少なく鋭いトゲを有している
コシアブラ 幹にタラノキのようなトゲはない
・葉の形
タラノキ 5~10cm 無毛の2回羽状複葉
コシアブラ 5小葉をもった掌状複葉で7~30cm
タラの芽もコシアブラの芽も、収穫できる時期は同じである。4~5月にかけて美味しくなる新芽は、いずれの山菜のなかでも人気を誇る美味である。どちらも新芽であるが、コシアブラのほうが茎の部分が長い。
食べるとどうなる?
タラの芽ほど知名度は高くないが、コシアブラの美味しさもタラの芽もどきの名に恥じないといわれている。揚げ物にしたり茹でたり、また混ぜご飯の具とすることも多い。タラの芽とともに農林水産省によって有毒な山野草とされているが、とくに中毒症状や事故の既述や報告はない。(※1)
3. タラの芽もどき3:ハリギリ

家具や下駄の材料となるハリギリという木も、新芽を食べることができる、ハリギリもタラノキと同様、ウコギ科の植物である。タラの芽ともどきであるハリギリの見分け方を見てみよう。
ハリギリの特徴と見分け方
タラの芽のもどきであるハリギリを見分ける際の注目点をまとめる。
・樹木
タラノキ 落葉低木(4mほど)
ハリギリ 落葉高木(25mほど)
ハリギリはタラノキの数倍の高さになる大木である。
・幹
タラノキ 分枝が少なく鋭く細かいトゲを有している
ハリギリ 樹皮は暗褐色、幹部分にトゲはないが枝に鋭く太めのトゲがある
・葉の形
タラノキ 5~10cm 無毛の2回羽状複葉
ハリギリ もみじのように5~9裂、10~30cm
ハリギリとタラノキの見分けは、樹木の高さでするとよい。また、枝部分のトゲの大きさも基準にできる。タラノキのトゲは細く、ハリギリのそれは太めである。
食べるとどうなる?
タラの芽と同じように、ハリギリの新芽も山菜の美味として有名である。天ぷらやおひたしにしたり、混ぜご飯の具にするなど調理法も相似している。タラの芽とともに農林水産省によって有毒な山野草とされているが、とくに中毒症状や事故の既述や報告はない。(※1)
4. タラの芽もどき4:ふきのとう

タラの芽と並んで春の山菜代表ともいえるふきのとう。山菜に疎い人ならばタラの芽と間違えることも少なくない。2つの山菜の違いを紹介する。
ふきのとうの特徴と見分け方
タラの芽のもどきといわれるふきのとうであるが、形状や植物の種類を異にする。
・形状
タラの芽 新芽であるため小さな葉と茎で構成されている
ふきのとう キク科の植物ふきの蕾である
つまり形状は明確な相違があるため見分けやすい。
・収穫時期
タラの芽 4月以降
ふきのとう 2月以降
タラの芽もふきのとうも収穫時期は場所によって異なるが、一般的にふきのとうは春の山菜のトップを飾るという認識である。
食べるとどうなる?
タラの芽もふきのとうも山菜の人気を2分するほどメジャーである。いずれもほろ苦さを含む春の風味を有している。また、どちらも育ちすぎると苦味やえぐみが強くなる傾向がある。新芽と蕾という部位を異にする食材であるため、食感はわずかに異なる。ふきのとうは、天ぷらにするほかふきみそなどの料理法もある。
結論
春の山菜といえば名前があがるタラの芽。タラの芽のもどきといわれるよく似た山菜は、いくつか存在する。採取時に樹木の特徴を観察すれば、見分けはそれほど難しくない。タラの芽をつけるタラノキやもどきのハリギリにはとげがあるため、手袋などを用意するといいだろう。山菜採取に際しては安全を確保し、収穫した自然の恵みを美味しく食べてほしい。
(参考文献)