1. 七夕の行事食がそうめんになった由来
七夕の行事食としてそうめんが定着した理由は何だろうか。ちょうど気温も上がる季節、そうめんを食べるのは理に適っているものの、七夕との関連はよく知られていない。まずは、七夕の行事食としてそうめんが普及した由来を説明する。
中国がルーツという説
そうめんが七夕の行事食となった由来には諸説ある。まず、そうめんの形状を天の川に見立てたという説がよく知られている。また、中国にルーツがあるという言い伝えもある。古来宮中の七夕の節句には索餅(さくべい)という唐菓子が供えられてきた伝統があり、この菓子のよじれた形がそうめんと似ているというものである。本来の索餅は、米粉と小麦粉を主原料に作られており、その形から「むぎなわ」の別称もある。熱病を防ぐまじないでもあったこの唐菓子が、七夕の行事食そうめんの起源ではないかという説が濃厚なのである。
2. そもそも七夕とは?
7月に入ると各地で短冊が吊るされた竹を目にすることが多くなる。七夕は日本に根づいている行事のひとつといっても過言ではない。幼児期に読んだ本や教科書から、七夕の由来を漠然と覚えている人も多いだろう。そもそも七夕とはどんな意味がある行事なのだろうか。
七夕の由来
7月7日に祝う七夕は、中国の伝説が由来となっている。天の川の両岸にいる牽牛星(恒星アルタイル)と織女星(恒星ベガ)がカササギの翼を橋として相まみえる、という言い伝えである。いずれの星も夏の夜空では見つけやすい星であり、擬人化した伝説が七夕の起源となったのだろう。日本では五節句のひとつである。七夕の夜には供え物をし、竹の葉に五色の短冊を飾り、子女の技芸や学問の向上を祈念する風習が広まった。五色の短冊は、中国の陰陽五行説にちなんでいる。星まつりともいわれる七夕は、日本では奈良時代にすでに行われていたという記録もある。
3. 七夕の行事食は地域によって特徴がある
七夕は五節句のひとつである。しかし、ちらし寿司や雛あられを食べるひな祭り、柏餅を食べる端午の節句など、ほかの節句と比べるとそうめんを七夕に食べる割合は低い。また、そうめん以外にも七夕の行事食として知られたメニューもあり、地域ごとにさまざまな伝統があるようだ。そのいくつかの例を紹介する。
行事食として食べられる料理
夏の節句である七夕にそうめんはぴったりであるが、ひな祭りのようにちらし寿司を食べる家庭も多いようだ。日本は伝統的に、冠婚葬祭やさまざまな行事に寿司を食べる伝統がある。五節句のひとつである七夕にも、その伝統を踏襲するケースは多い。さらに、ほうとうを郷土色とする長野県には、七夕ほうとうという七夕に特化した料理がある。月遅れの8月7日に食することが多いという七夕ほうとうは、小麦粉で作ったほうとうに餡やきな粉をまぶしたものである。七夕が小麦粉の収穫時期でもあることから生まれたといわれ、長野県では江戸時代からの伝統を誇っている。だんごや餅を食べる地域や家庭もあり、近年では星をかたどった菓子も七夕の時期にはよく目にする。
結論
夏の行事のひとつである七夕は、中国の伝説から生まれた風習である。天の川を渡って牽牛星と織女星が年に1回だけ相まみえるロマンチックな言い伝えもまた、中国から渡来したものである。七夕の行事食として知られるそうめんは、天の川に見立てたという説や宮中で食べていた唐菓子に由来するという説がある。七夕にはそのほかにも寿司や郷土料理を食べることもあり、日本に根づいた行事であることがよくわかるのである。