1. 柿と食べ合わせ悪い食材
柿は日本でも古くから愛されてきた果物である。生ではもちろん干し柿のように保存食として活用したり、柿酢など加工品としても活用されてきた。そんな柿と食べ合わせが悪い食材としてしばしばピックアップされてきたのが「カニ」である。ここではその真相を紐解きつつ、本当に食べ合わせの悪い食材について解説をしていこう。
組み合わせと理由
柿とカニ
柿とカニは食べ合わせが悪いと古くからいわれてきた。合食の禁のひとつにも数えられてきたが、実はこれは言い伝えであり、科学的に実証されているわけではない。古くは冷蔵技術、運搬技術ともに今のように発達していなかったこともあり、生物とりわけ油分の多い魚介類は腐りやすかった。そこに有機酸の多く、冷えやすい果物を合わせると体調を崩す可能性が上がるという意味合いで、カニと柿は食べ合わせが悪いとされてきたのである。(※1)
一方で薬膳的な視点で見ると柿とカニは食べ合わせが悪いらしい。これは双方が体を冷やす食べ物と捉えられているからで、胃腸の動きが悪くなり、体調不良になりやすいとされているのだ。
総合して考えても食べ合わせが悪いと言い切るには少々、説得力に欠ける。そもそも柿とカニをともに食べるシチュエーションもさほど多いとは思えないし、新鮮なものを健康な状態で食べるのであれば、問題はないといえそうだ。
柿と鉄分の多い食材
柿にはタンニンが多く含まれている。タンニンは大量に摂取すると鉄分の吸収を妨げることがある。(※2)このため、ひじきやレバー、ほうれん草などと合わせるのは得策とはいえない。
2. 柿と食べ合わせとデマ情報
溢れるほどの情報が毎日更新され続ける現代、中にはデマも多く混じっているので注意が必要である。中国であるとき「柿とヨーグルトを同時に食べると体に悪い」というような情報が拡散したことがある。ここではその真意について解説をしていこう。
ヨーグルトとの組み合わせ
柿とヨーグルトは同時に食べても有害ではない。ただし、柿はタンニンが多く、胃の中でうまく消化に至らず胃石になることがある。これは柿に含まれるタンニンがタンパク質や食物繊維と硬く結びつく習性によるものである。常識範囲内で食べる分には、問題はないが日常的に柿を食べ続けたり、胃の切除手術をしているなど、何らかの疾患がある人はとくに注意が必要である。(※3)
3. 柿と食べ合わせの良い食材
ここからは柿と食べ合わせの良い食材についてまとめていこう。
組み合わせと理由
柿はデザートとしてはもちろん、和食では料理に使われることも多い。古くから日本で愛されてきたことがうかがえる。ここでは食べ合わせの良い食材について解説をしていこう。
柿と日本酒
柿に含まれるタンニンには解毒作用がある。このため二日酔いを和らげる効果が期待できる。アルコールが肝臓で分解されることはよく知られている。このときに出るアセトアルデヒドが二日酔いの原因のひとつである。タンニンはこれと反応し、排出を促すとされているのだ。(※4)
柿と大豆食品
柿と大豆食品は相性が良いとされている。(※5)卯の花に柿を加えたり、白和にしたりするのがおすすめである。
結論
柿は日本で古くから愛されてきた食材だ。干し柿にするなど、保存食としても広く活用されてきた。相性が悪い食材としてカニが挙げられるが、現代の科学的視点から見ると一概に相性が悪いとは言い切れない。ただタンニンが多いため、鉄分を含む食品との食べ合わせや大量に摂取することは控えたい。
(参考文献)
※1:農林水産書『食慣行と「合食の禁」(その1)』
※2:熊本市教育センター「鉄・カルシウムを効率よくとる食事とは」
※3:国立研究開発法人科学振興機構「柿胃石の成分分析における標準物質としての柿渋の有用性」
※4:日本酒造組合中央会「日本酒-花こよみ 柿」
※5:農林水産省「柿の卯の花」