目次
1. 食べ合わせが悪いスイカと油もの

食べ合わせとは、特定の食材を組み合わせて食べると身体に悪影響が出るという考え(「合食の禁」)に基づいた概念で、江戸時代以前より広く伝承されてきたものだ。口伝えだけでなく当時の教科書や教養書にも記載されてきた。科学的根拠がないといわれるようになった現在も、地域によっては根深く受け継がれている。また、実際に相性の悪い例もあるため、迷信ともいいきれない。
スイカと天ぷらの食べ合わせが悪いといわれてきたのには、下記のような理由がある。
脂質と水分
スイカは水分が多く、胃腸を冷やす食べ物である。一方、天ぷらのような揚げ物は油量が多く消化しにくい。胃腸に負担のかかる揚げ物と、胃腸を冷やし胃液を薄めるスイカの組み合わせは、消化能力を下げてしまう可能性があると考えられてきた。とくに、夏バテで胃腸の機能が低下しているときには、消化不良の影響が出やすいことから、注意喚起の意味で伝えられてきたのである。(※1)
スイカと天ぷらに限らず、アイスやかき氷と唐揚げやトンカツなどの組み合わせにも同様の理由で気をつけたほうがよいだろう。
2. 食べ合わせが悪いスイカと飲み物

水分が多く冷たいスイカと油量が多く消化しにくい天ぷらは、胃腸への負担が大きいことから食べ合わせが悪いといわれてきた(※1)。さらに、別の理由でスイカと食べ合わせが悪いと考えられる食品がある。それは、カフェインやカリウムを多く含む飲み物だ。
利尿作用が重なってしまう
スイカには利尿作用があり、腎臓病、高血圧、むくみなどの予防に効果が期待できる。スイカに含まれるカリウムに利尿作用があるが、トマトジュース、ビール、赤ワインもカリウムが多い。また、カフェインにも利用作用があり、コーヒーや紅茶、緑茶、烏龍茶、コーラなどに多く含まれる。スイカとこれらの飲み物を組み合わせて摂取すると、利尿作用が高まり頻尿になる可能性がある。(※2,3)
3. 食べ合わせで悪い影響がないようにする方法

食べ合わせの悪い食品を食べたからといって、必ずしも身体に悪い影響が出るわけではない。しかし、スイカと天ぷら、スイカとカフェインの多い飲料など、食品の性質や成分の組み合わせによる影響は考えられる。そこで、食べ合わせにも注意しつつ、悪い影響を出さないために最も重要なことをおさえておこう。
食べ過ぎに注意
食べ合わせに科学的根拠はないといわれるが、食べ過ぎれば悪い影響は出やすくなるだろう。スイカと天ぷらの場合、少量なら影響が出にくくても、大量に食べれば胃腸への負担は確実に大きくなってしまう(※1)。食品の組み合わせそのものよりも、食べ過ぎや暴飲暴食が悪影響の主原因と考えられるのだ(※4)。そのため、食べ合わせが悪いといわれる食品を食べる場合は、量に気をつけて様子を見ながら食べることが大切である。
体調を考慮することも大切
胃腸が弱っているときは、とくに食べ合わせによる悪い影響が出やすい(※1)。また、スイカとカフェインやカリウムを含む飲料の組み合わせによる利尿作用は、加齢や疾患が重なると頻尿につながりやすい(※2,3)。
健康なときには食べ過ぎに注意するとともに、体調の悪いときは食べ合わせの悪いものは避け、消化がよく胃腸に負担のかかりにくい食べ物を選ぶようにしたい。
結論
スイカと天ぷらの食べ合わせが悪いといわれるのには、水分が多く冷たいものと脂っこいものの組み合わせにより、胃腸に負担がかかり消化不良を招きやすいという理由がある。食べ合わせ(合食の禁)には科学的根拠がないものの、実際に相性の悪い組み合わせもあるため注意したい。とくに、食べ過ぎてしまった場合や身体が弱っているときには悪影響が出やすい。健康なときも、食べる量に気をつけて様子を見ながら食べるようにしよう。
(参考文献)
※1出典:独立行政法人労働者健康安全機構中国労災病院「食べあわせ~養生訓と生活の知恵~」
※2出典:独立行政法人農畜産業振興機構「今月の野菜 すいか」
※3出典:柏東口よしだクリニック 頻尿・夜間頻尿
※4出典:高分子56巻8月号(2007年)「国民の盛衰は食べ方にあり」p593(鈴木建夫)