目次
1. 玉ねぎの食べ過ぎによる影響

玉ねぎを食べ過ぎると、身体にどのような影響が出るのだろうか。代表的な症状について見ていこう。
胃腸の不快感
生の玉ねぎを食べると、ピリッとした辛みを感じる。この辛みは、アリインが酵素により分解されてできるアリシン(硫化アリル)という成分によるものだ(※1)。アリシンは玉ねぎのほかネギやにんにくにも含まれ、強い殺菌作用がある(※2、3)。
ただし、とくに空腹時に生の玉ねぎを食べ過ぎると、アリシンの刺激により胃の粘膜が荒れてしまう。胃腸の不快感や腹痛を招くことになるため、注意が必要だ。胃粘膜への刺激を防ぐには、加熱したものを少量ずつ食べるとよい。加熱により酵素が失活し、アリインをアリシンに変化させる働きをおさえることができる。(※4)
口臭が強くなる
にんにくを食べると口臭が気になるが、その原因もアリシンである。そのため、アリシンを含む玉ねぎを食べ過ぎると、にんにくほどではなくても口臭が強くなってしまう。口臭を予防するには、酵素を失活させるために玉ねぎを加熱して食べるとよい。また、食後に歯磨きやうがいをする、お茶やコーヒーを飲むなどの対策も効果的だ。(※4)
2. 玉ねぎの食べ過ぎにならない量

玉ねぎの食べ過ぎに気を付ける必要があるのは、生で食べる場合である。加熱すればアリシンの過剰摂取による影響は防げるため(※4)、極端な量を食べない限りは問題ないだろう。では、一日あたりどのくらいが生の玉ねぎの適切な摂取量なのだろうか。
一日の摂取量の目安
生の玉ねぎの一般的な目安量は、一日あたり50g程度といわれている。中サイズの玉ねぎ1/4ほどの量だ。とくに適量や上限が定められているわけではないため、あくまでも目安となる。
野菜全体では、一日あたり350g以上の摂取が推奨されている(※5)。生の玉ねぎは50g程度を目安にしつつ、緑黄色野菜などさまざまな野菜を積極的に食べよう。
3. 玉ねぎのおすすめの食べ方

玉ねぎの辛み成分であるアリシンは、摂取し過ぎると胃腸の不快感や口臭などにつながる。しかし適度に摂取すれば、抗菌作用のほか、ビタミンB1の吸収を高めるなど健康維持に効果的な成分でもある。(※4)
そのため、一日50gまでを目安にサラダなどの生食もぜひ取り入れよう。
調理法による違いについて
玉ねぎを加熱すると、前述の通りアリシンの生成が抑制される。玉ねぎを多めに食べたいときは、炒める、煮るなど加熱調理するのも一つの方法だ。また、生食の場合はスライスしたあと水にさらすとアリシンが流出し辛みがおさえられる。しかし、同時にほかの水溶性の栄養素も流出してしまう。そのため、栄養を損なわないためには、スライス後しばらく置いて空気にさらす方法がおすすめである。(※1)
加熱に強いケルセチン
玉ねぎには、ポリフェノール(フラボノイド)の一種であるケルセチンが含まれている。黄色く少し苦みのある成分で、抗酸化作用がある。また、肥満予防や認知機能改善に効果が示唆される研究も報告されている。(※6)
加熱した玉ねぎからもケルセチンは摂取できるため、生の玉ねぎと加熱した玉ねぎを上手に組み合わせて食べるとよいだろう。
結論
玉ねぎは、生の状態で大量に食べると胃腸の不快感や口臭などの不調を招くことがある。とくに適量や上限量は定められていないが、一日あたり50g程度が影響の出にくい目安量といわれる。一方、加熱した玉ねぎの場合は、多めに食べても問題のないケースがほとんどだ。アリシンやケルセチンは、健康維持に有効な成分でもある。生食の場合は食べ過ぎに注意しつつ、さまざまな調理法で美味しく食べながら栄養を上手に摂取しよう。
(参考文献)
※1出典:大阪教育大学附属天王寺中学校自由研究〈第41集 2016〉「玉ねぎの辛み成分」
※2出典:医療法人同愛会 博愛病院 糖尿病専門外来広報誌かえで通信Vol.64 p2
※3出典:日本薬学会 環境・衛生部会 環境・衛生薬学トピックス「ニンニクと健康」
※4出典:神戸 保(大阪市立環境科学研究所 食品栄養課)「ニンニク」
※5出典:厚生労働省e-ヘルスネット「野菜、食べていますか?」
※6出典:独立行政法人農畜産業振興機構 調査・報告(野菜情報 2018年3月号)野菜の機能性研究~たまねぎのケルセチンによる認知機能改善の可能性~