目次
- 夏バテ防止:うなぎの豊富な栄養素と、梅干しのクエン酸による疲労回復効果が役立つ
- 消化の促進:梅干しの酸味が唾液や胃酸の分泌を促し、うなぎの消化に役立つ
- ※1出典:農林水産省 aff(あふ) 2016年7月号 特集2 鰻(1) https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/1607/spe2_01.html
- ※2出典:公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット 第2回 梅干しの効果 https://www.tyojyu.or.jp/net/essay/nihonjinnochojushoku/umeboshi.html
- ※3、4出典:独立行政法人農畜産業振興機構 https://vegetable.alic.go.jp/
- ※5、6出典:文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」 https://fooddb.mext.go.jp/
1. うなぎと食べ合わせが悪いといわれる食材

うなぎと食べ合わせが悪いと昔からいわれてきたのが、梅干しである。うなぎと梅干しを一緒に食べると、実際に身体に悪い影響が出るのだろうか。
梅干しとの組み合わせ
うなぎと梅干しは、食べ合わせが悪いと伝えられてきた。その背景には諸説あり、下記のようなものが代表的だ。(※1)
・贅沢や過食の戒めとする説
梅干しには胃酸を分泌させる作用があり食欲を促すことから、うなぎの食べ過ぎを避けようとした。
・銀杏と取り違えられたという説
「養生訓」(貝原益軒著)にうなぎと銀杏の食べ合わせが悪いと記載されていたが、銀杏が梅干しと取り違えられてしまった。
また、うなぎが傷んでいても酸っぱい梅干しを食べるとわかりづらくなるため、食中毒防止という観点もあったようだ。しかし、いずれもいい伝えであり、医学的根拠に基づいたものではない(※1)。そのため、うなぎと梅干しを一緒に食べたからといって、身体に悪影響が出るわけではないのだ。
脂っこいうなぎと酸味の強い梅干しを同時に食べることは胃腸に刺激を与え過ぎるとも考えられてきたが、実際は下記のようなメリットもあるようだ。
うなぎと梅干しの効果(※1、2)
2. 食べ合わせが悪い食材が生まれた背景

食べ合わせが悪いという考え方は、古くから伝わる「合食の禁(合食禁)」という教えに基づく。どのような背景から生まれたのだろうか。
合食の禁
合食の禁とは、特定の食材を2種以上組み合わせて同時に食べると身体に悪い影響が出るため避けるべきという教えである。江戸時代以前より口伝えにより広く伝承されてきたほか、当時の教科書や教養書などにも記載されていた。科学的思考や医療が未発達だった時代において、中国をはじめとする諸外国より移入された知識と、それまでに培われた生活経験により生まれたものと考えられている。
健康への関心の高さから生まれたもの
合食の禁のほか、特定の食品の多食や食べ続けることへの戒めである「過食の禁」や「久食の禁」などもあった。合食の禁(食べ合わせ)は科学的根拠のないものとされているが、同じ食品を食べ続けることを戒める久食の禁に関しては、食物アレルギーにつながる内容という解釈もある。
食べ合わせは科学的な考え方が発展する前段階において、人々の食と健康への関心が高いゆえに生まれたものだったといえるだろう。現在は非科学的とされるものの、慣習化されてきたことにより意識が根深いがゆえ、なお伝承され続けているのだ。
3. うなぎと食べ合わせがよい食材

うなぎと梅干しは、食べ合わせが悪いといわれてきたが、実際は相性のよい組み合わせだった。ほかにも、うなぎと食べ合わせがよい食材がある。代表的なものを紹介しよう。
おすすめの組み合わせ
きゅうりとうなぎ
「うざく」という料理でも知られる組み合わせだ。うなぎの蒲焼きときゅうりの酢の物を合わせたものである。脂っこいうなぎをさっぱりとさせる食べ合わせで、きゅうりからビタミンCやカリウムなどの栄養素を補うこともできる。きゅうりに含まれるククルビタシンには唾液や胃液の分泌を促す作用があることから、うなぎを消化しやすくする効果も期待できる。(※3)
ねぎとうなぎ
ねぎも脂っこい食べ物との相性がよい食材である。ねぎと組み合わせることでうなぎが食べやすくなる。また、独特の香り成分である硫化アリルの働きにより体温が上がり、脂肪の燃焼にも効果が期待できる。とくに、青ねぎを選ぶと多くのビタミンCを補えるというメリットもある。(※4)
豆腐とうなぎ
島根県の郷土料理には、「うなぎ豆腐」というものがある。うなぎのかば焼きと焼き豆腐を合わせ出汁で煮込み、京ねぎやきのこ、春菊など好みの野菜を入れて炊く料理だ。淡泊な味わいの豆腐に濃厚なうなぎの旨みが染み込み美味しい。また、低カロリーだがたんぱく質を多く含むため、うなぎと組み合わせると優れたたんぱく質源にもなる。(※5)
卵とうなぎ
卵焼きでうなぎを巻いた「う巻き」が有名な組み合わせだ。卵は栄養が豊富な食材のため、うなぎと合わせることで栄養面でもバランスが整いやすい。とくに、ビタミンKやビタミンB群などが豊富である。ただし脂質も多いため、食べ過ぎには気を付けよう。(※6)
結論
うなぎと梅干しの食べ合わせは悪いと伝えられてきたが、栄養面では消化を促し夏バテ予防にも役立つため、逆におすすめの組み合わせといえる。また、うなぎと食べ合わせのよい食材には、きゅうりやねぎ、豆腐、卵などがある。食べ合わせに関しては科学的根拠のないものがほとんどだ。あまりとらわれすぎず、栄養バランスを考えて組み合わせるとよいだろう。
(参考文献)