目次
- 1歳未満:5.0μg(200IU)/日(男女ともに)
- 1歳~2歳:男 3.0μg(120IU)/日、女 3.5μg(140IU)/日
- 3歳~5歳:男 3.5μg(140IU)/日、女 4.0μg(160IU)/日
- 6歳~7歳:男 4.5μg(180IU)/日、女 5.0μg(200IU)/日
- 8歳~9歳:男 5.0μg(200IU)/日、女 6.0μg(240IU)/日
- 10~11歳:男 6.5μg(260IU)/日、女 8.0μg(320IU)/日
- 12歳~14歳:男 8.0μg(320IU)/日、女 9.5μg(380IU)/日
- 15歳~17歳:男 9.0μg(360IU)/日、女 8.5μg(340IU)/日
- 18歳以上:8.5μg(340IU)/日(男女・妊婦・授乳婦ともに)
- 焼きサケ(白鮭・紅鮭) 30~31μg/1食分80g(※5)(※6)
- 身欠きニシン 20μg/1食分40g(※7)
- ウナギの蒲焼 15.2μg/1食分80g(※8)
- 焼きサンマ 13.0μg/1食分100g(※9)
- サバ水煮缶 9.9μg/1食分90g(※10)
- 本マグロ刺身(脂身) 9.0μg/1食分50g(※11)
- あらげきくらげ(油炒め)11.4μg/1食分30g(※12)
- まいたけ(油炒め) 2.3μg/1食分30g(※13)
- エリンギ(油炒め) 0.4μg/1食分30g(※14)
- 生しいたけ(油炒め) 0.2μg/1食分30g(※15)
1. ビタミンDの摂りすぎによる影響

ビタミンDは、摂りすぎると過剰症を引き起こし、さまざまな症状が現れる。ただし通常の食事で中毒症状がでるほどのビタミンDを摂取することは考えづらいため、ほとんどのビタミンD過剰症の要因は薬やサプリメントの摂りすぎによる副作用だ。摂りすぎた場合、どのような影響がでるのだろうか。
過剰摂取について
ビタミンDは脂溶性ビタミンであり、摂りすぎた場合に尿から体外へ排出されにくく、脂肪組織や血液中に蓄積される。その結果、高カルシウム血症を招いて中毒症状が出現することがある。
兆候として、吐き気や嘔吐、食欲不振などの症状が現れ、進行すると喉の渇き、多尿、脱力感、神経過敏、けいれんなどが起こる。重症になると腎臓が機能不全になり、死亡する例もある。(※1)(※2)
とくに健康維持や妊娠初期などの理由でサプリメントを活用している場合、複数のサプリメントでビタミンDが重複していないか注意し、用量を守って摂りすぎないようにすることが大切だ。摂りすぎの目安となる具体的な摂取量については後述する。
2. ビタミンDという栄養素の基本

摂りすぎると悪影響がでるビタミンDだが、生命機能の維持のためには必要な栄養素だ。ビタミンDの働きについて解説する。
身体への働き
ビタミンDの主な働きは、腸内でのカルシウム吸収を促し、骨や歯の発育形成に関与することだ。また神経伝達に関わり筋肉の収縮を正常に行ったり、免疫機能を保ったりする働きもある。(※1)(※2)ほかにも、がんの抑制や治療へ活用できる可能性があるとして、研究が進められている。
不足による影響
ビタミンDが体内で不足すると、ビタミンD欠乏症となり、骨の変形や痛み、けいれん、歯の異常などが起こることがある。(※1)(※2)
骨の正常な形成ができず、子どもではくる病という関節が変形する病気を引き起こす。妊娠中の女性が重度のビタミンD欠乏症となると、生まれる新生児にくる病がみられることもある。大人や高齢者のビタミンD欠乏症では、骨軟化症や骨粗鬆症を引き起こし、骨折しやすくなる。
ビタミンDは、主に紫外線による皮膚での産生と、食事からの摂取で体内に取り込まれる。過剰に紫外線を浴びることはシミや皮膚がんなどのリスクを生むが、適度に日光浴をすることも重要だと心得よう。
夏であれば、札幌でも10分ほどの日光浴で5.5μgのビタミンD産生を見込めるとされているが、天候による影響は大きい。(※3)また室内で過ごすことが多かったり、日焼け止めなどで紫外線予防をしたりしていれば、皮膚でのビタミンD産生は少なくなる。そのため食事から摂ることが重要だ。
なお皮膚でのビタミンD産生量は体内で調整されるため、日光を浴びすぎたからといってビタミンDの摂りすぎになることはない。
3. ビタミンDの摂取基準量

厚生労働省「日本人の食事摂取基準2020年版」では、ビタミンDの摂取量の基準について指針が出されている。
1日の摂取量
ビタミンDの量の単位は、国際単位IU(アイユー)とμg(マイクログラム)で表示される。1μgは40IUである。
日本人における1日あたりのビタミンDの目安量(※3)は、
となっている。
目安量とは、良好な栄養状態を維持するのに十分な量のこと。目安量を確保できれば欠乏症のリスクは低い。
しかし2019年の国民健康・栄養調査(※4)によると、日本人の平均のビタミンD摂取量は基準量より少ない現状だ。食事だけでなく紫外線による皮膚産生量も考慮する必要があるが、日本人の多くはビタミンDが不足傾向にある。
なお、摂りすぎの目安となる耐用上限量(過剰摂取による健康障害を起こすことのない最大限量)も示されている。18歳以上の男女におけるビタミンDの耐用上限量は、100μg(4000IU)/日だ。
しかし米国の全米科学・工学・医学アカデミー食品栄養委員会は、耐用上限量以下のビタミンD摂取量でも、長期間になると身体に副作用を及ぼす可能性があると指摘している。(※1)そのため、耐用上限量とはいえ4000IUのビタミンDを毎日摂ることは、摂りすぎになる可能性がある。
不足しやすいビタミンDだが、長期間耐用上限量を超えて摂取するのは摂りすぎになるため注意が必要だ。
4. ビタミンDを多く含む食材

多くの日本人にとっては、ビタミンDの摂りすぎよりビタミンD不足の方が懸念される。ビタミンDを食品から摂取するためには、何を食べればよいだろうか。
種類と特徴
ビタミンDは、含まれる食品が限定的である。1食分に含まれる量を考えると、主要な食品は魚介類だ。ビタミンDの特徴は、脂溶性ビタミンという点。魚介のなかでもサケ、マグロ、サバといった脂肪の多い魚に含まれる。
魚のほかには、キノコ類もビタミンDが豊富だ。きくらげがとくに多く、次いでまいたけも比較的ビタミンDが多く含まれている。キノコなどの植物性食品から摂取する場合は、油で炒めるなど脂質と一緒に摂取するとビタミンDの吸収率が上がり効率的だ。
牛乳やたまごなどビタミンD強化食品があれば、取り入れるのも効果的だろう。
通常、食事だけでは、ビタミンDの摂りすぎになるほどの量は摂取できない。サプリメントを飲んでいない場合は、摂りすぎを恐れる必要はなさそうだ。
結論
ビタミンDは摂りすぎても不足しても健康に悪影響がでるため、適正な量を摂取することが大切だ。18歳以上の成人男女であれば、妊娠中や授乳中も含めて、8.5μgが1日の摂取量の目安となる。日光浴や食事によって上手にビタミンDを摂取したい。サプリメントを飲む際は、ビタミンDの摂りすぎに注意しよう。
(参考文献)
※1※2:厚生労働省
※3※4:厚生労働省
※5〜※15:文部科学省
https://fooddb.mext.go.jp/