目次
1. うなぎとスイカの食べ合わせが悪い理由

土用の丑の日にうなぎを食べる習慣があるが、この季節はちょうどスイカの旬でもある。うなぎを食べたあとのデザートに、スイカを食べるという状況は生まれやすいのである。なにも知らずにそのような食べ方をした場合、どんな影響が出るのだろうか。
脂と水分
日本には古来、食い合わせの悪さを厭う慣習があったようである。(※1)うなぎとスイカの食い合わせの悪さを提唱したのは、江戸時代の儒学者であった貝原益軒とされている。彼の代表的な著作『養生訓』において「同食の禁忌」という項目があり、うなぎとスイカはその中に記されている組み合わせなのである。理由としては、熱いものと冷たいもの、あるいは脂と水分をそれぞれに多く含む食材をともに摂取することで、消化を鈍らせる可能性が挙げられている。(※2)昭和初期に活躍した料理研究家であった井村政喜は、貝原益軒が「食い合わせの悪いもの」とした食材の摂取を実践している。その多くは中毒症状などは起こす可能性が低いことを指摘している。(※2)
2. うなぎとスイカに注意すべき人

前述したように、うなぎとスイカの組み合わせは中毒症状を誘発するような要素は認められていない。(※2)しかし、2つの食材を摂取する場合の注意点はある。
胃腸が弱い
うなぎには、ビタミンやミネラルが豊富に含まれているうえ、DHAなどの良質な脂も存在する。(※3)いっぽうスイカは、100g中の水分が89.6gにもなる。(※4)脂と水分をともに摂取すると、胃への負担が増し消化不良になる可能性もある。胃腸の弱い人は、この組み合わせを食べるときには注意する必要がある。(※5)また、スイカは冷やして食べることが多いが、冷たいものの過剰摂取はこれまた胃腸不良の原因となり得る。(※6)うなぎとスイカを食べる場合には、健康な人でも節度を持って摂取してほしい。
3. うなぎとスイカと同様の食材

食い合わせの悪さの代表としてうなぎとスイカはよく知られているが、そのほかにも相性がよくないとされている食材のコンビはいくつかある。うなぎとスイカと同様の理由で、一緒に食べる際に気をつけるべき料理を見てみよう。
天ぷら
貝原益軒によれば、スイカと相性の悪い調理が天ぷらなのである。(※1)現代の研究では、スイカと天ぷらもまた、水分と油をそれぞれに多く含む食材であることから、消化不良を起す可能性が高くなるということになる。(※5)いずれの場合も、胃腸が弱い人はより注意し、健康な人も常識的な量に抑えることが健康を保つ秘訣と覚えておくとよいだろう。
結論
うなぎとスイカの食い合わせが悪いという格言は、江戸時代の儒学者によって世に普及したものである。現代科学によれば、うなぎとスイカによって中毒症状を起こす可能性は低いとされている。しかし、脂っこさを持つうなぎと水分が多いスイカは、胃に負担をかけることは多くなる。体調を考慮して、うなぎとスイカを食べる場合には重々注意する必要があるだろう。
(参考文献)
※出典1:平凡社世界大百科事典(食合わせ)
https://kotobank.jp/dictionary/sekaidaihyakka/
※出典2:株式会社小学館「日本大百科全書(食い合わせ)」
https://japanknowledge.com/contents/nipponica/
※出典3:農林水産省「特集2鰻(1)」
※出典4:文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)果実類/すいか/赤肉種/生」
※出典5:株式会社シルバーライフ「身体に悪い食べ合わせは発がん性物質を産生する!?」
※出典6:厚生労働省「楽食だより」P.1