納豆が一番美味しくなる混ぜ回数とは｜薬味やタレのタイミングも解説

糸引き納豆は、日本独自の食文化とされている。奈良時代から存在したといわれる納豆は、室町時代に入ると文献にその名が登場する頻度が高くなるという。いずれにしても日本の食卓と縁が深い納豆、いったいどのくらいかき混ぜれば美味しさを引き出せるのだろうか。20世紀の美食家であった北大路魯山人は、食通といえども美味しい納豆の食べ方を知っている人は少ないと断じている。彼によれば、納豆は箸でかき回せばかき回すほど粘りが出て美味しくなるので、その手間を惜しんではいけないそうだ。
しかし、納豆の食べ方について触れた魯山人の『納豆の茶漬け』には、かき混ぜ回数の具体的な数字はあげられていない。さまざまな研究機関や企業の検証によると、納豆をかき混ぜる回数には差がある。ある企業の研究では424回、全国納豆協同組合連合会の主張では110回である。いっぽう、味覚センサーという機械を使った結果、最も旨みが引き出せるのは400回だという。これは時間にすると1分半～2分に該当する。
いずれにしても、納豆は食べる前に手間をかけてよくかき回すことが大事、というのが共通した意見のようである。

納豆の粘り成分は、γｰポリグルタミン酸というものである。この成分には、血糖値の上昇を抑えるなどの働きがあることがわかっている。（※1）
納豆は混ぜれば混ぜるほど粘りが出て、旨みなどが増えるとされているが、それにも限度がある。味博士の研究所によれば、混ぜる回数が400回を超えると納豆は崩れるだけであり、1000回を超えると旨みはそれ以上増えないという。つまり、納豆は混ぜすぎても決して美味しさに貢献するわけではないのである。

納豆を美味しく食べるには、かき混ぜる手間を惜しんではいけないことがよくわかった。当然のことだが、納豆は100回、200回とかき混ぜるごとに粘りが出るだけではなく、空気を含むため味や食感も変化する。
さまざまな検証をまとめてみると、最低でも100回はかき混ぜるのが美味しく食べるための条件のようである。300回を超えるとねばりが本格的になり、箸も重く感じられるという。納豆を美味しく食べるためには、粘り具合や味わいの変化を見ながら個人の嗜好でかき混ぜる回数を決めるのがおすすめだ。

納豆を美味しくする薬味やタレであるが、これを入れるタイミングにもいろいろな説がある。北大路魯山人は、納豆を固練りした後に醤油を加え、さらにかき混ぜるという作業を繰り返すとしている。また、300回混ぜた後にタレを加えるのがよいとしている企業もある。
人間の舌ではなく機械で検証した結果によると、混ぜた後にタレを入れるほうがコクや旨みがよくなるそうだ。納豆をかき混ぜる回数と同様、薬味やタレを入れるタイミングも、自分の好みを把握するのが一番重要といえるかもしれない。

納豆を美味しく食べるには、手間を厭わずにしっかりとかき混ぜる必要がある。かき混ぜる回数についてはさまざまな説があるが、最低でも100回はかき混ぜることが美味しく食べる条件となる。300～400回かき混ぜると、納豆は粘りと重みを増して美味しくなるという説もある。薬味とタレを入れるタイミングや、納豆をかき混ぜる回数は、個々の好みを重視して決めるのがベストなのである。

経歴：大学で栄養学を学び、大学院卒業後、医学関連出版社に就職。管理栄養士としての知識と医学雑誌の編集経験をもとに、オリひと食料理記事の監修に至る。