目次
- エラも含め表面が鮮やかな紅色をしている
- 青い斑紋がはっきりと見える
1. マダイは魚の王

マダイは、スズキ目タイ科に属する海水魚である。一般的に「タイ」と呼ばれる魚はマダイのことを指す。古くから親しまれてきたマダイの特徴や歴史、生態、分布について見ていこう。
特徴と歴史
マダイの体形は左右に扁平した楕円形で、体高が高い。最大の特徴は美しい体色で、全体的に淡紅色、腹部にかけて白っぽいグラデーションとなる。マダイの紅色は、エサであるエビやカニの殻に含まれる色素によるものだ。側面上半部に鮮やかな青色の斑紋が散らばっているのも特徴的である。上品な味わいの白身魚で、さまざまな料理に使われる。
魚の王
マダイは、美しい色や形、上品な味を持ち合わせていることから、魚の王と呼ばれてきた。また、「花は桜、魚は鯛」といわれるほど日本の代表的な魚として扱われてきた。とくに、華やかな紅色と「めでたい」という語呂合わせにより、縁起物としての歴史がある。現在も、赤ちゃんのお食い初めなどの祝い事や祭事では、尾頭付きのマダイの姿焼きが食べられている。
生態と分布
マダイの成魚は、水深30~200mの岩礁域(周辺の砂泥底)に生息し、小魚や甲殻類をエサとする。成魚は50cm以下の個体が多いが、大きいものでは1m以上に育つ場合もある。メスは産卵期になると沿岸の浅海域に移動し、一産卵期に約1000万粒もの卵を産むという。孵化後のマダイ(稚魚)は、浮遊しながら動物プランクトンをエサとする。孵化後約1ヵ月にはエサの種類が増えていき、底生生活へと移行する。
明石のタイ
マダイの分布は朝鮮半島から東南アジアにかけて広域に及び、日本では北海道の一部と琉球列島を除いて全域に生息する。とくに、九州近海や瀬戸内海はマダイの多い海域として知られる。
なかでも明石海峡周辺はマダイの好漁場とされ、岩礁やエサとなる生物が豊富だ。さらに、海峡特有の複雑で激しい潮流により、身の締まったマダイが獲れる。良質なマダイが育つ環境に加え、鮮度を保ちながら漁獲・処置する技術、消費量の多い関西圏であることから、この地で漁獲されるマダイは「明石のタイ(明石鯛)」として有名だ。
2. マダイの天然と養殖の違い

市場に流通するマダイには、天然と養殖の2種類がある。農林水産省の資料(※)によると、平成30年の国内での天然マダイ漁獲量は16,100t、養殖マダイ収穫量は59,900tだった。このように、養殖マダイが多くを占めるが、天然マダイと養殖マダイにはどのような違いがあるのだろうか。
見分け方
一般的には、鼻孔の形をチェックするとよい。天然マダイは前後に2つ開いているが、養殖マダイは鼻孔が繋がり1つになっている。ただし、養殖でも鼻孔を2つもつ個体も存在するため、確実に見分けられる方法とはいえない。
また、養殖マダイは身体が黒ずみやすい環境で育つ。海の底で育つ天然マダイと異なり、養殖マダイは水深の浅い場所で育てられるため日焼けするからだ。しかし、遮光幕の使用や生け簀を沈めるなどの日焼け防止対策がされるようになり、体色の違いで見分けることは難しくなった。天然マダイのほうがより鮮やかな紅色をしている傾向はあるが、確実に見分けるのは難しいため、店頭で表示を確認するとよいだろう。
3. マダイの旬と選び方

天然マダイの旬は一般的に春から秋にかけての時期とされる。春は産卵を迎える時期で、秋は越冬に備える時期である。いずれも栄養を蓄えるため、脂のりがよく美味しいのだ。この時期のマダイは、桜鯛(春)、紅葉鯛(秋)と呼ばれる。ただし、マダイの旬は漁獲地によっても異なるため、養殖のものも含め一年中食べることができる。
選び方のポイント
マダイの産卵期は南の地域が早く、北にかけて遅くなる。早春には九州産のマダイを選ぶなど、旬の時期に合わせて産地で選ぶのも一つの方法だ。見た目から美味しいマダイを選ぶには、下記のポイントをチェックしよう。
4. マダイ料理

マダイは淡泊でクセのない上品な味わいを楽しめる白身魚だ。そのため、和食だけでなく洋食などさまざまな料理に使用され、幅広い食べ方で親しまれている。マダイを美味しく食べるには、下記のような食べ方がおすすめだ。
主な食べ方
生食
刺身にしてわさび醤油で食べるほか、漬けや酢締め、寿司のネタにも向く。また、ドレッシングとも合うため、サラダの具材やカルパッチョにしても美味しい。
加熱調理(和食)
塩焼きや煮魚などのシンプルな料理をはじめ、天ぷらや鯛めし、酒蒸しにすると美味しい。お吸い物の具材にするのもおすすめだ。半生で食べても美味しいため、しゃぶしゃぶも代表的な料理として知られる。
加熱調理(洋食)
バターで焼くムニエルや、スープごと味わうブイヤベース、姿を楽しむアクアパッツァなどがおすすめだ。また、パエリアの具材にも向く。ほかの魚介類や野菜、ハーブとも合わせやすい。
真子や白子
マダイの卵巣(真子)は炊き合わせ、精巣(白子)は酢の物、煮付け、鍋の具材にすると美味しく食べられる。
結論
マダイは美しい紅色と整った魚形から、魚の王と呼ばれている。縁起物としてお祝い事で食べられてきた歴史は現在も引き継がれており、高級な魚として扱われる。天然ものは貴重だが、養殖のマダイも技術の進歩により高品質のものが増えてきた。淡泊で上品な味わいから、さまざまな料理に活用して美味しくいただこう。
(参考文献)
※出典:農林水産省「マダイの漁獲量は天然と養殖それぞれどのくらいですか。」
監修管理栄養士:児玉智絢
経歴:女子栄養大学栄養学部を卒業後、管理栄養士免許を取得。食品メーカーの商品開発などを経験後、フリーランスとして栄養・健康分野の記事監修を中心に活動中。