豆腐は腐の意味が大切だった！漢字がつけられた理由と歴史を解説

1. 豆腐の腐の意味

豆腐は、大豆の加工食品である。水を浸透させた大豆を潰して、できた豆乳ににがり（凝固剤）を加えて固めたものだ。納豆のように発酵させる製造過程は一切ないにもかかわらず、なぜ豆腐には「豆が腐る」と書く漢字がついたのだろうか。豆腐の意味について漢字の成り立ちから詳しく見ていこう。

漢字の意味

豆腐の「豆」は、もちろん原材料である大豆を指す。豆腐の「腐」の意味は、実は、字の冠である「府」が関係しているのだ。

「府」とは、貯蔵する場所である「くら（庫）」を表しており、「腐」の本来の意味は、狩猟で得た肉などを保存のために「くら（庫）」に入れておく状態のことである。庫で寝かせた肉は死後硬直が終わってやわらかく熟成していることから、いつからか、肉以外のやわらかい食材も指すようになったといわれている。

したがって、豆腐の腐の意味は「やわらかい」であり、豆という字と合わせて、「やわらかい豆」を表しているのだ。

2. 豆腐の起源

日本で豆腐が浸透するようになったきっかけは、鎌倉時代に精進料理が普及するようになったことにある。庶民の食卓に登場するのは、江戸時代からであり、豆腐のレシピ本である「豆腐百珍」が出版されたことはその人気に拍車をかけた。もとを辿ると、豆腐の発祥は中国である。

ルーツは中国

豆腐は、中国でも「豆腐」と漢字で書き、ジャワ島や朝鮮半島では、「トーフ」、「トブ」などと呼ばれ親しまれている。いまでこそ、中国、日本、東南アジアをはじめ、広く流通している豆腐であるが、その明確なルーツは不明だ。

有名な説としては、「豆腐淮南王説」がある。中国、明の時代に著された「本草綱目」という本の中に「豆腐は、およそ2000年前に淮南を治めていた劉安という王から始まった」と記載されているのだ。しかし、当時の中国には、まだ大豆が存在しなかったことや、劉安の著書の中にも「豆腐」という文字は発見されていないので、この仮説も定かではない。

3. 豆腐の種類と名前

豆腐には、製法や食べ方によって日本独自の名前がついている。ここでは、代表的な「絹ごし」「木綿」「やっこ」の名前の由来についてご紹介しよう。

名前の由来

「絹ごし」は、きめ細やかな組織と、なめらかで絹のような口当たりが名前の由来である。濃い成分の豆乳全体をにがり（凝固剤）で固めた製法で、重石などで水分を切ることはしない。

「木綿」は、もっとも古くから食べられている豆腐といわれ、型崩れしにくい硬く粗めな感触がある。豆乳をにがり（凝固剤）で固めて、木綿の布を敷いた箱に流し入れ、重石を加えて水切りする製法のため、表面に布目が写る。これが、「木綿」の名前の由来だ。

「やっこ」は、江戸時代の大名行列で、槍を振っていた奴さんの衣服に書かれていた紋から名前がつけられた。豆腐を四角に切ることを「奴に切る」などと表現するのは、形が奴さんの紋と似ているからである。または、「冷や奴」の語源である「冷ややか豆腐」の冷ややかがなまったという説もあるようだ。冷ややかを「ひやっこい」と発音するようになり、最後に「やっこ」となまった言葉がのちのち豆腐を指すようになったのである。

結論

豆腐の「腐」の意味は、「やわらかい」ということがわかった。一見すると豆腐の「腐」の意味は「くさる」と受け取りがちだが、その背景には漢字の深い意味と成り立ちが関係している。豆腐のルーツが実は中国にあることや、日本独自の豆腐の呼び名の由来など、食卓に豆腐料理が出たときは、これらの情報を共有しながら会話に花を咲かせてみてはどうだろうか。

監修管理栄養士：渡邉里英

経歴：大学で栄養学を学び、大学院卒業後、医学関連出版社に就職。管理栄養士としての知識と医学雑誌の編集経験をもとに、オリひと食料理記事の監修に至る。