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飛鳥の蘇

後醍醐天皇とヨーグルトやチーズなどの乳製品との関係と歴史

投稿者:ライター 秋山理代(あきやまりよ)

監修者:管理栄養士 渡邉里英(わたなべりえ)

鉛筆アイコン 2023年4月25日

私たちの生活で当たり前にある、ヨーグルトやバターなどの乳製品。皆さんはこの乳製品の歴史をご存知だろうか。テストで書くのが大変な天皇という印象が強い「後醍醐天皇」と乳製品には関係があるのだ。今回は乳製品の歴史をさかのぼって、知られざる後醍醐天皇の歴史や、日本の乳製品の歴史について紹介しよう。

  

1. 後醍醐天皇とは

日本の国旗
後醍醐天皇と乳製品の関係を知る前に、鎌倉時代後期から南北朝時代の代表的な天皇として活躍した後醍醐天皇が、どのような人物だったのか歴史を辿ってみよう。ちなみに追号の「後醍醐」は、第60代天皇である醍醐天皇の治世に感銘を受け、死後の呼び名を後醍醐天皇にしてほしいと自ら遺言を残したことから名づけられたそうだ。

歴史をおさらい

後醍醐天皇は後宇多天皇の第2皇子として誕生し、生前の実名は尊治(たかはる)と名づけられた。31歳で即位し、理想政治を追い求め次々に新たな政策に取り組んだ。しかし、鎌倉幕府の介入により、後醍醐天皇の子孫への皇位継承は許されず、自らが上皇として携わることもできなくなっていたのだ。後醍醐天皇は近臣とともに討幕計画を企てるも、幕府に捕らえられ隠岐島に流されてしまうのであった。
討幕計画は失敗に終わったと思った方も多いだろう。だが、後醍醐天皇の息子や楠木正成の活躍により、再び討幕のチャンスが訪れる。このチャンスを逃すまいと後醍醐天皇は、隠岐島から釣り船で脱出し、戦のカリスマである足利尊氏などと手を組み、鎌倉幕府を崩壊させることに成功したのだ。その後政権を取り戻した後醍醐天皇は摂政関白を置かず、自らすべての採決を担い政治を行う。だが、その独裁的な新政に対する批判や不満も多く、反乱がおきてしまう。足利尊氏に裏切られ、敗れてしまった後醍醐天皇は抵抗を続けるが、生涯政権を握る上皇にはなれなかった。このような戦乱時代に生きた後醍醐天皇と乳製品にどのような関係があるのだろうか。

2. 後醍醐天皇と乳製品

ヨーグルト
乳製品に欠かせないのが牛の存在だが、戦乱時代は、牛より軍馬の生産がメインになっていた。それに伴い、醍醐天皇の時代にルール化された乳製品を献上する「貢酥(こうそ)の儀」はすたれていってしまう。後醍醐天皇は貢酥の儀の復興を図ったが、失敗に終わっている。

乳製品の醍醐

旅館でゆっくり温泉に浸かって「これぞ旅の醍醐味だ」というときに出てくる「醍醐味」という言葉も、実は乳製品からきている。仏教の大般涅槃経という書物には「牛より乳を出し、乳より酪を出し、酪より生酥を出し、生酥より熟酥を出し、熟酥より醍醐を出す。(※1)」と記載がある。牛乳から作られるヨーグルトにあたる酪やバターにあたる酥(蘇)、さらに蘇を精製した発酵ヨーグルトやチーズのようなものが醍醐と呼ばれ重宝されていた。貴重な食材で優れた味の醍醐に由来して、醍醐味という言葉が誕生したとされている。

3. 後醍醐天皇までの乳製品の歴史

新鮮な乳製品
後醍醐天皇が在位する1318年から1339年には、乳製品の使用があったという文献も残っている。後醍醐天皇は、乳製品を献上するための儀式である「貢酥の儀」の復興には失敗したものの、日常生活で乳製品を嗜むことはあったのだろうか。

日本においての乳製品

日本では645年に、百済国にいた智聡(ちそう)の子である善那(ぜんな)が、牛乳と乳製品を天皇家に献上したとされている。このとき献上した乳製品は酪や酥で、いまと製法は違うもののヨーグルトやチーズにあたるものだ。718年には、酥を作り天皇に貢進させる「貢酥の儀」が行われたとされている。しかし、次第に天皇家は権力を失ってしまい、貢酥の儀は行われなくなってしまう。さらに拍車をかけるように、戦乱で軍馬の需要が増え、牛の数が減ってしまい牛乳飲用はすたれていった。こうして乳製品は、貴族や高貴な家庭にのみ出回るようになってしまった。
それから500年ほどの時を超え、8代将軍徳川吉宗がオランダ人に牛乳の必要性を教えられる。それを受けて1727年にインドから白牛3頭を購入して飼育を始め、ここから近代酪農がはじまったとされている。そして、時は過ぎ1875年に北海道で初めて近代ヨーロッパ型チーズが試作され、徐々にチーズが国内で作られるようになったが、出回っているのはほとんどが輸入品だった。1933年に北海道にチーズ専門工場ができてから本格的にチーズの製造がはじまったのだ。このように飛鳥時代から存在していた乳製品だが、日本の食卓に広まった歴史は意外と浅い。

結論

後醍醐天皇と乳製品の関連性をめぐる歴史の旅はいかがだっただろうか。飛鳥時代に孝徳天皇へ牛乳が献上されるなど、日本でも古くから牛乳は存在した。生涯政権を司る上皇を目指し、戦乱に生きた後醍醐天皇もチーズやヨーグルトなどの乳製品に舌鼓を打ったであろうことが伺えるだろう。我々の生活に深くなじみのある乳製品が、1,000年以上前の天皇にも愛されていたと思うと、牛乳にロマンを感じる。
(参考文献)

監修管理栄養士:渡邉里英

経歴:大学で栄養学を学び、大学院卒業後、医学関連出版社に就職。管理栄養士としての知識と医学雑誌の編集経験をもとに、オリひと食料理記事の監修に至る。
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  • 更新日:

    2023年4月25日

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