目次
1. あんぱんのゴマには意味がある

あんぱんにゴマがまぶされているのは見慣れた光景であるが、いったいどんな意味があるのだろうか。あんぱんのゴマは、実はあんぱんの中身と関連しているのである。その内容を解説する。
中身によって色分け
あんぱんについているゴマは、一色とは限らない。その理由は、ゴマの種類によってあんぱんの中身がわかるようにしているためである。たとえばあんぱんを生み出した木村屋総本店では、白ゴマは白あん、粒あんはゴマなしとなっている。これは店員にあんぱんの種類がわかるように配慮されたものであるため、ゴマの色や餡の種類は店ごとに異なるのである。黒ゴマを使ったり、桜の塩漬けなど別の食材を使ったりするケースもある。
香ばしさをプラス
あんぱんにゴマを乗せるのは、まだパンになじみがなかった明治時代の日本人に親近感を抱かせるためだったという説もある。またゴマを乗せることで、パンに香ばしさが加わる点もメリットとなり、あんぱんとゴマというコンビネーションが定着したともいわれているのである。
2. あんぱんのゴマに使われるケシ

あんぱんにはゴマが乗っていると思い込みがちだが、じつはケシの実が乗っていることもある。あんぱんを考案した木村屋総本店でも、中身がこしあんの場合にはあんぱんにケシの実が乗せられているのである。ケシの実と聞くとぎょっとしてしまうが、安全性に問題はないのだろうか。
ケシの実
ケシはアヘンやモルヒネの原料として知られ、日本では一般の栽培が禁止されている植物である。そのケシの実は食しても問題ないのだろうか。農林水産省によれば、食用に生産されるケシの実は発芽しないよう特別な処理がされているという。そのため、健康には一切害はない。(※1)あんぱんにケシの実が乗っていても、安心して食べることができる。実際ケシの実は、あんぱん以外にも菓子や卵焼き、照り焼きなどに使用されており、美味しく安全に食べることができるのである。
3. あんぱんの歴史

西洋から渡来したパンに和の食材であるあんこを合わせたあんぱんは、いったいいつ頃登場したのだろうか。普段は気にすることもないあんぱんの歴史を振り返ってみよう。
酒種あんぱんの発明
あんぱんが誕生したのは、なんと1874年(明治7年)のことである。当時はイーストが存在しなかったため、銀座の木村屋ではホップを使ったパンを生産した。しかしこの風味は日本人に好まれず、探求の結果誕生したのが酒種を使ったあんぱんであった。日本人になじみがあるあんこと酒種によるしっとりとしたパン生地は人気を博し、明治天皇にも献上されたという。これをきっかけに、日本ではクリームパンやジャムパンが発明され、菓子パンの歴史が始まったといわれているのである。
結論
菓子パンの中でも不動の人気を誇るあんぱん。あんぱんに乗せられているゴマは、中身を区別するためのものだとわかった。店ごとにゴマの色と中身のルールは異なり、桜の塩漬けやケシの実が乗せられていることもある。19世紀半ばに生まれたあんぱんは、日本における菓子パンの先駆けとなった。あんぱんのそんな深い歴史も楽しみつつ、美味しく食べてほしい。
(参考文献)
※1.農林水産省「お菓子の原材料に「ケシの実」と記載がありましたが、食べることはできるのですか。」
監修管理栄養士:児玉智絢
経歴:女子栄養大学栄養学部を卒業後、管理栄養士免許を取得。食品メーカーの商品開発などを経験後、フリーランスとして栄養・健康分野の記事監修を中心に活動中。