目次
1. 刺身に菊の花が添えられている理由1:殺菌効果

お刺身に菊の花が添えられている理由のひとつが、殺菌効果である。菊の花にはグルタチオンと呼ばれる成分が含まれており、殺菌効果があることで知られている。刺身は生ものであるから、冷蔵技術が未熟であった時代は食中毒の危険もあった。そうしたリスクを考慮して、菊の花が添えられているというわけである。
ちなみに、寿司にも刺身が使用されているが、シャリに使う酢が殺菌作用を果たすため菊の花は添えられない。また古来日本では、重陽の節句や菊花の宴などを催す風習があり、これは邪気を払うという意味もあったという。こうした風習も、生ものである刺身に菊の花を添える理由となっている可能性はある。
2. 刺身に菊の花が添えられている理由2:香り

刺身は生ものであるから、臭いが気になる場合もある。菊は香り高い花として有名であり、梅や竹、蘭とともに四君子のひとつとなっているのである。この菊のよい香りを刺身に添えることは、刺身の臭い対策として役立つのだ。
中国から渡来し日本に普及した菊は、香りがよいといえどもそれほど強くはなく、刺身の皿に乗せても違和感がない。香りのある薬味として菊は重宝され、刺身に添えられているわけである。
3. 刺身に菊の花が添えられている理由3:彩り

菊は弔意用に使われる花であるため地味なイメージがある。しかし日本では昔から、菊の花を愛でる習慣があった。歴史的に見ると8世紀頃には観菊の宴が開催されていた記録が残る。つまり菊はとてもポジティブなイメージも持つ花なのである。
実際、刺身に鮮やかな黄色の菊の花を添えれば、刺身の鮮度を示す色をより鮮やかに見せる効果がある。また、ツマの大根や大葉とも色合いがよく、刺身をより洗練された一品に見せてくれる。和食の刺身ともマッチする菊のビジュアルは、刺身をより美味しく見せる花といえるだろう。
4. 刺身に添えられている食用菊の食べ方

刺身に添えられている菊は、じつは鑑賞するだけではない。食用菊として食べることもできるのである。菊は種類によっては苦味が強いものもあるが、食用に栽培されているものは苦味が少なく、その香りは刺身と食べると非常に合うといわれている。
刺身に添えられた菊を食べる場合は、花びらだけをむしって刺身醤油に添えて食べるのが一般的で、和食らしい床しさがある。
結論
刺身に菊の花が添えられている理由は、いくつかある。菊の花に含まれる成分に殺菌作用があるほか、香りや見た目などがその理由である。生ものである刺身のリスクを下げたり臭み対策となってたりしている菊の花は、古くから日本で愛されてきた花でもある。和食の代表でもある刺身とは、そうした精神面でもよく合うコンビといえるかもしれない。
監修管理栄養士:渡邉里英
経歴:大学で栄養学を学び、大学院卒業後、医学関連出版社に就職。管理栄養士としての知識と医学雑誌の編集経験をもとに、オリひと食料理記事の監修に至る。