目次
- 左手に懐紙を持ち魚の頭の部分を押さえ、箸で頭から尾に向かって上の半身を食べる
- 上の半身を食べ終わったら、下の半身も食べる
- 箸を頭部から尾に向かって滑らせて、骨を取り除く
- 除いた骨は皿の向こう側に置いておく。魚をひっくり返さずに下側の身を食べる
1. 魚の盛り付けで頭が左向きの理由とは

焼き魚や煮魚などの料理を皿に盛り付けるとき、日本人であればごく自然に頭を左側に向ける。この作法にはどのような理由があるのだろうか。
そもそも西洋の文化では、左は縁起がよくないという概念がある。インドや中国でも右を尊ぶ概念が古くから存在したのに対し、日本は反対であり左を重んじる独自の文化があった。もちろん「左前」や「左巻き」などのネガティブな言葉も存在するが、一般的に左により重点を置くことは否定できない。魚の頭部を左に向けるのも、こうした日本独特の概念が基底にあるといわれているのである。
2. 魚の盛り付けで頭が左向きの理由:左が上位だから

古典を勉強すると、右大臣よりも左大臣の方が位が上であることを不思議に思った方もいるかもしれない。日本における左重視の思想は、どこからきたのだろうか。理由は明確ではないものの、文学者の大野晋氏によれば「ひだり」という言葉の語源は「日の出の方 (ひだり) 」にあるという。つまり、南を前面にした場合太陽が昇る東側が左に当たるのがその理由、というわけである。
尾頭付きの魚を供する席は祝い事であることが多い。その場合には、「逆」を強く忌む風習があるため、ごく自然に左側に魚の頭を向けて盛り付けるようになったといわれているのである。
3. 魚の盛り付けで頭が左向きの理由:食べやすいから

魚の頭を左にして盛り付ける理由には、文化的な概念のほかに利便性もあるといわれている。右利きの人が箸を持って魚を食べる場合には、頭が左で腹の部分が手前にあった方が断然食べやすいからである。和食のマナーにおいても、魚は頭を左にして次のように食べることが雅やかとされている。
右利きの人がこの動作を行うには、やはり魚の頭は左側にあることが条件となってくる。魚の頭部を左にして盛り付けるのには、こうした実用的な理由があることも覚えておくと便利である。
結論
日本人ならばごく自然に魚の頭部を左に盛り付ける。これには日本独自の文化が関係している。古来、日本では左側を重んじる概念があったため、魚の頭部もこれに倣って左側に置かれるという説が有力である。また箸を使って魚を食べる場合に、頭部は左にあった方が食べやすいというのも理由であるようだ。食は文化のひとつである。魚を食べる場合にも、こうした文化を意識して、品よく食べるようにしよう。
監修管理栄養士:渡邉里英
経歴:大学で栄養学を学び、大学院卒業後、医学関連出版社に就職。管理栄養士としての知識と医学雑誌の編集経験をもとに、オリひと食料理記事の監修に至る。