1. 飯盒ってどんなもの?
飯盒とは?
普段使うことのない「盒」という漢字は「さら」を意味し、「ふたのついた皿」を表している。つまり飯盒とは米を炊く調理器具であると同時に、ごはんを保存したり食べたりするための食器の役割も持つ「飯を炊くためのふたつき容器」という意味だ。
飯盒の歴史
元々は戦場で使われるものだった飯盒。20世紀以降に欧米の軍隊で食料を入れて携行したり、配給の食料をもらったりする際に使われていたようだ。明治維新後日本にも洋式の軍隊制度が導入され、飯盒も利用されるようになる。日本は米食であったため、飯盒は飯炊き用に特化されていった。現在でも陸上自衛隊では飯盒を携行品としており、一般にもアウトドア用の炊飯器具として浸透している。
飯盒のしくみ
飯盒は本体と外ふた、中ぶたの大きく3つのパーツに分けられる。日本の飯盒は米と水を正確に量る必要があったため、外ぶたと中ぶたは計量カップの役割をはたす。多くの飯盒は4合炊きで、中ぶたがすりきりいっぱいで米2合、外ぶたが3合を量れる。外ぶたで水を量れば2合分の水分量だ。欧米の飯盒は合数に合わせて米を炊く、という発想がないため日本の飯盒より小ぶりなものが多いようだ。中ぶたを取って炊飯すると説明される場合もあるが、中ぶたを活用してみそ汁や蒸し野菜などを炊飯と同時に調理することもできる。外ぶたに取っ手がついてフライパンにできるものもある。
2. 飯盒の種類による違い
「飯盒」といわれてイメージするそら豆型のものは「兵式飯盒」という。そのほかに円筒型の「丸形飯盒」、立方体の「角型飯盒」などの種類がある。それぞれどう違うのだろうか。
兵型飯盒
名前の通り、戦場で使われていたことに由来する飯盒だ。変わった形だがリュックサックや腰ベルトにくくりつけて携行するのに適した形になっている。形を合わせれば焚火上で無駄なく数多くの飯盒を並べることもできる。洗いにくい形であることが難点だ。
丸形飯盒
円筒型の飯盒は熱の周りがよく、むらなく炊けるという長所がある。置いたときにバランスがよく、通常の鍋と同様に使ったり洗ったりすることができるので、野外炊飯に慣れていない人でも使いやすいのが丸形飯盒だ。容量も大きく5合炊きのものもある。省スペースの収納には向かない。
角型飯盒
フランス軍が採用している角型飯盒。日本でも少ないながら取り扱いがある。収納しやすく小ぶりなものが多いのでソロキャンプなどに向いている。鍋としても使いやすいが、四隅に熱が伝わりにくい点は注意が必要だ。
自分のキャンプスタイルに合わせて飯盒の種類を選びたい。
自分のキャンプスタイルに合わせて飯盒の種類を選びたい。
3. 飯盒以外でもごはんは炊ける?
実は飯盒でなくても米は炊けるため、飯盒はキャンプの必需品ではなくなってきつつある。どんなものが飯盒の代わりとなるのだろうか?
ライスクッカー
各アウトドアメーカーから発売されているのが、炊飯に特化したライスクッカーだ。厚みがある金属部分で保温力を高め、重たいふたで圧力をかけることができるので美味しいごはんを炊くことができるという。羽釜の形をしたものなどもあり、ごはんにこだわりたい人におすすめだ。
鍋
普通の鍋でも簡単に炊ける。沸騰して火力を少し落としたら15分、火から下して15分で失敗知らずだ。もちろんダッチオーブンや厚みのある鋳物ホーロー鍋で炊けばより美味しくなる。
空き缶
いざとなれば空き缶でもごはんが炊けてしまう!上部を缶切りで開け、浸水させた米と水を入れてアルミホイルできっちりふたをする。火にかけて吹きこぼれたら弱火、グツグツいわなくなったら火から下して蒸らす。これでできあがりだ。350ml缶で1合。災害時でも覚えておきたいテクニックだ。
でもやっぱり飯盒も
それでも飯盒を持っておきたい理由がある。1つがごはんは洗米・浸水と1番最初に調理に取りかかるメニューであり、食卓に上る最後まで1つの調理器具を占領しがちになる。そのためごはん専用の飯盒が便利なのだ。そしてもう1つが見逃せない圧力効果である。飯盒は中ぶたを使って炊飯すれば圧力鍋としての機能も持つ。普通の鍋を使うより高地などでも炊飯の失敗が少ないのだ。
結論
日本の飯盒は100年余りの歴史の中でごはんを炊くことに特化して進化してきた。元々軍で使っていたものなので薄く軽く作られており、ごはんを炊くには焦げ付きやすいという特徴もあるが、やっぱりキャンプでは飯盒を使ってごはんを炊きたい。キャンプをしているというテンションも上がるはずだ。