目次
- 1. 自転車の「傘差し運転」の危険性を再確認しよう
- 2. 自転車の傘差し運転は法律違反?
- 3. 自転車の傘差し運転は違反なのによく見かけるのはなぜ?
- 4. 自転車の傘差し運転にはどんな罰則がある?
- 5. 自転車専用の「傘ホルダー」であれば違反にならない?
- 6. 自転車の傘差し運転はNG!雨の日に乗るときの対策は?
- 第71条:車両等の運転者は、次に掲げる事項を守らなければならない。
- 第71条6号:前各号に掲げるもののほか、道路又は交通の状況により、公安委員会が道路における危険を防止し、その他交通の安全を図るため必要と認めて定めた事項
- 第13条:法第71条第6号の規定により車両等の運転者が遵守しなければならない事項は、次に掲げるとおりとする。
- 第13条2号:傘を差し、物を担ぎ、又は物を持つ等視野を妨げ、若しくは安定を失うおそれがある方法で自転車を運転しないこと。
- 積載物の長さ、幅又は高さは、それぞれ次に掲げる長さ、幅又は高さを超えないこと。
- ア 長さ 積載装置の長さに0.3メートルを加えたもの
- イ 幅 積載装置の幅に0.3メートルを加えたもの
- ウ 高さ 2メートルから積載をする場所の高さを減じたもの
1. 自転車の「傘差し運転」の危険性を再確認しよう

雨の日に自転車に乗ること自体は法律で禁止されていないし、本稿でも否定するものではない。たとえ雨でも自転車に乗らなければならない方が大勢いることも事実である。だが「自転車の傘差し運転」に関しては、詳しくは後述するが法律違反となるおそがある。まずは自転車の傘差し運転の危険性について再確認していこう。
ハンドルやブレーキなどの安全な操作に支障が出る
自転車で傘差し運転をしているということは、片手が傘でふさがっている状態を意味する。片手ではハンドルやブレーキ、ベルなどもろもろの安全な操作に支障をきたすおそれがある。他人を巻き込むような事故をおこしてしまえば、それこそ取り返しのつかないことになってしまうこともある。
視界が悪く状況認識や危険察知が遅れるおそれがある
傘差し運転では生地が視界を遮るため、人や車が横切ったり信号が変わったりしたときなど周囲の状況認識や危険察知が遅れるおそれがある。あるいは小雨だからと傘やレインコートなどを使用せずに自転車を運転した場合、下を向いて顔に雨が当たるのを避けるなどすればやはり危険である。
強風に煽られてバランスを崩すおそれがある
雨の日に傘差し運転をしている最中、突風にあおられるなどして傘の骨が逆に曲がってしまった、あるいは傘が吹き飛ばされたなどすれば、バランスを崩して転倒してしまうおそれがある。吹き飛んだ傘が第三者に当たってケガをしたり、車に当たって傷つけたりすればさらに大事になる。
段差やスリップなどでバランスを崩しやすくなる
雨の日は路面が濡れているため乾いているときよりもスリップしやすい。通い慣れた通勤・通学路でも、マンホールやタイル、横断歩道や段差など滑りやすい箇所が非常に多い。そんな路面状況の中、傘を差して片手運転していると、ふとした段差やちょっとしたスリップなどで一気にバランスを崩し、転倒するといった危険性がある。
心理的に余裕がなくなることがある
雨は傘では完全に防げない。顔に当たるのは防げたとしても、体には次々と雨粒が当たり濡れてしまうはずだ。「早く目的地に着きたい」という心理が働けば止まるべき交差点で止まらなかったり、無理な追い越しをしたりして事故などを招くリスクが大きくなるおそれがある。
2. 自転車の傘差し運転は法律違反?

冒頭でもお伝えしたように、自転車の傘差し運転は違反となるおそれがある。その理由について具体的に見ていこう。
道路交通法と都道府県条例
道路交通法に「自転車の傘差し運転を禁止する」という文言はない。だが道路交通法では以下のように定めており、各都道府県条例によって傘差し運転が禁止されている。すなわち条例を破れば道交法に背いたことと同じになるため「違反」ということだ。
道路交通法第70条(※1)
車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。
道路交通法第71条および71条6号(※1)
大阪府道路交通規則第13条および13条2号(※2)
まず道路交通法第70条で、安全運転の義務を説いている。傘差し運転とは明記されていないが、片手運転になることで安全にハンドルやブレーキなどを操作できないことは明らかであることから、違反となるおそれがある。
加えて道路交通法第71条で、各都道府県が定める条例を遵守するよう説いている。ここでは大阪府の例を挙げたが、このように都道府県条例では「傘差し運転」を明確に禁じている。すなわち条例を破れば道路交通法にも背いたことになるというわけだ。以上のことからも、自転車の傘差し運転は違反であると認識しておこう。
3. 自転車の傘差し運転は違反なのによく見かけるのはなぜ?

上述のように自転車の傘差し運転は違反行為である。だが未だに雨の日に傘差し運転の自転車を見かけることが多いのはなぜだろうか?
改正道路交通法を知らない方もいる?
これは2015年に道路交通法が改正されたことが大きく影響している。だがそれ以前、自転車の傘差し運転に関しては各都道府県に一任されておりルールが曖昧であった。そのため以前から自転車に乗っている方の中には「傘差し運転は当然のこと(違反であるとは思いもよらない)」という方もいる。知っていてルールを犯すのはもちろんNGだが、周知が行き届かず知らないままルールを犯してしまっている方もいる可能性がある。
「少しくらいなら...」という油断もある?
あるいは「近所だから」「慣れている道だから」「人や車の交通量が少ないエリアだから」「今まで危険な目に遭ったことはないから」などちょっとした油断から、傘差し運転をしてしまっている方もいるかもしれない。そうした方は改めて違反であることを認識しておこう。
4. 自転車の傘差し運転にはどんな罰則がある?

自転車で傘差し運転をした場合、どういった罰則が待っているのだろうか?道路交通法第70条に抵触し「安全運転義務違反」を犯したケースで見てみよう。
「安全講習会の受講」「5万円以下の罰金」など
3年間に2回以上自転車で傘差し運転などをおこなった場合、安全講習会を受けなければならない。安全講習会を無視すると5万円以下の罰金が科せられることがある。このように、自転車に対するルールは非常に厳しいものとなっていることを改めて認識しておこう。
5. 自転車専用の「傘ホルダー」であれば違反にならない?

道路交通法や都道府県条例を「両手が使えるなら違反にならない」と解釈した場合、自転車専用の傘ホルダーを使えばよいのでは?と考える方もいるだろう。この場合はどうなるのだろうか?
道路交通法や都道府県条例に抵触することがある
たしかに自転車専用の傘ホルダーを使えば両手は使えるかもしれない。だがこのケースでも違反になる場合がある。
道路交通法第55条2号(※1)
車両の運転者は、運転者の視野若しくはハンドルその他の装置の操作を妨げ、後写鏡の効用を失わせ、車両の安定を害し、又は外部から当該車両の方向指示器、車両の番号標、制動灯、尾灯若しくは後部反射器を確認することができないこととなるような乗車をさせ、又は積載をして車両を運転してはならない。
大阪府道路交通規則第11条4号(※2)
明記されてはいないものの違反となる場合がある
道路交通法や大阪府道路交通規則などには「自転車用の傘ホルダーを使って運転してはいけない」とは明記されていない。だが安全運転の妨げになる、あるいは積載物のサイズが規則で定めるサイズを超えるといった場合、やはり違反になるおそれがある。
6. 自転車の傘差し運転はNG!雨の日に乗るときの対策は?

自転車の傘差し運転がNG、傘ホルダーも違反となる場合があるとすれば、ほかにどういった対策があるのだろうか?
レインウェアを着用する
雨の日に自転車に乗るなら、傘ではなく両手が使えるレインウェアを着用しよう。レインウェアにもいろいろあるが、より安全に走行できそうなもの、かつ自分に合ったものを選ぶことが大切だ。
レインウェアの選び方
上下セパレートタイプは自転車に乗るときに風の影響を受けにくく防水性も高い。ただし通気性がよくないと蒸れるため、梅雨どきなどは汗だくになるおそれがある。着脱も面倒なうえ、携帯するにもかさばるといった欠点がある。
その点、ポンチョタイプはかさばらず携帯にも便利なうえ、風通しもよく蒸れにくい。バックパックを背負ったままでも着られるなどメリットが多い。ただし完全防水とはいかず、とりわけ足は濡れやすい。また風が強いとあまり役に立たないといった欠点もある。
各タイプで一長一短があるため、自分が着用するシーンを想定しつつより適したタイプを選ぶようにしよう。迷ったときは両方購入するのも手だ。
結論
雨の日は自転車運転はただでさえ危険なのに、傘を差しながらとなればさらに危険度が増す。自分自身のケガはもちろん、第三者に危害を与えるリスクも高まる。取り返しのつかないことになってからでは遅い。「大丈夫だろう」という油断は捨て、ぜひとも安全運転に注力していただきたい。万が一に備えて自転車保険に加入しておくことも検討してはいかがだろうか。
(参考文献)
※1:道路交通法 _ e-Gov法令検索
※2:大阪府道路交通規則